- C 809話 鬼将 河州王の野望 9 -
元帥府はかつて、泉州府があったとこに今も併設されたまま。
分離して、ちゃんと屋敷も何もかも、用意すればよかった。
掌握した側、つまりは“白服”側が怠慢だったという意味。
軍隊の平時における仕事は、基本、有事に向けての整備でしかない。
兵隊の訓練は当たり前だし。
訓練内容を大中小の具合に企画・運用・展開する。
射撃訓練から、戦争ごっこの演習まで。
年間行事で、予算の掛け具合――ここは役所も同じで、あまり使わないと...次の年度にはカットされた予算で回せと言われる。故に、百パーセント奇麗に使って見せるのが、出来る将校の腕という事になる。
民間だと...。
如何に予算枠よりも小さく収めたかが問われるようだが。
軍隊は使い切ってこそ、だ。
反れた...(反省。
元帥府にある将校たちも、出来ない人たちではない。
むしろ、デスクワークの出来なかった泉州王に代わって、切り盛りしてた具合だから、都度、暴走気味の艦隊司令部とは反りが合わないだけである。
さて、白服を通じて、顔の見えないヴォーティガンという者の下についた将校たち。
抵抗らしい抵抗は無かった記憶だ。
それはもう、淡白なほどに“座”を明け渡したような。
「で、このザマか?!!!」
王都に残ってた“白服”幹部の憤り。
指揮所の中で吠え散らかしてた。
この指揮官の短所はまあ、癇癪持ちといったところか。
伝令として走り回ってる連中の各所から噴出した、出来事に憤慨してる。
彼からすれば『なぜ怠った、なぜ事前に把握していなかった』といった過去情報に対する不満。
状況報告には自らが関わろうとしない、でだ。
◇
憤慨してる将校の前に、総司令官として那岐少将が通された。
「総司令官さまの着任です!!」
指揮所にピリッとした空気が張り詰める。
激高の中の空気も、生きた心地はしないものだけど。
緊張が走る空気も、別の意味で肌がひりつくような。
灼けた戦場に立っているような、来さえする。
喉が、痛い。
「楽にしていい」
声が掛かるまで、意識が飛んでた将校が多かった。
胸を押さえて――。
上目遣い。
「な、那岐公?!」
「ああ、俺だ。王城の包囲はどうなっている?!」
少将が引き連れた兵士も、本陣に入ってた。
精悍な顔つきだし、目が違う。
こう、正義の炎を灯した、正直者たちの顔である。
指揮所に入れなかった“白服”や、或いは元帥府の札付きの不良兵士から見ても、面白さの欠片もない学徒兵だって分かる。
志の高いやつらの顔といったら...
よくある兵士たちの妬みだ。
学徒の前で唾を吐く。
微動にもしない一行。
場を乱して、慄いてくれた方が揶揄いがあるという。
《ああ、糞が! 面白くねえなあ》




