- C 808話 鬼将 河州王の野望 8 -
王城に迫る城州王の兵は、後宮府内にある白服と共に呼応してた。
最初の内はそれこそ大成功かと匂わせるような、電撃作戦だった。
が、突如として攻勢に陰りが生じてしまった。
城州王や、彼の叛意を知って尚も同志なんて仰いだ、陸軍少将・那岐など。
彼らは自分たちが企図して、圧政に苦しむ民の代わりとして、立ち上がったものだと信じて。
いや心酔してたところがあった。
城州王本人に至ってはようやく。
そう、ようやく自身の願望が叶うと、夢を見たところだ。
マーカスから指揮をして。
まるでフィクサーか、影の黒幕のように振舞っていると錯覚してた。
那岐らが王都に入城するまで。
全く誰かの意図に泳がされているとは、考えなかったのだ。
◇
――で、白服たちによって駆り出された後宮軍。
将校身分で元帥府の傘下にあった彼らは、宦官たちを率いて王城に迫る。
数はこの際、兵力にも戦力にも成らないんだけど。
ざっと1万人近く連れ出されてた。
いや、最初は激しい抵抗があったんだ。
だって徴兵されるために...まあ、痛い思いまでして後宮府に出仕したわけではない。
男でも女でもない身体にされて。
でも、その僅かなばかりの反抗も、職業軍人あがりの白服たちに鎮圧された。
カビの生えてるかもしれない武器庫から。
年代物の重火器を引っ張り出した宦官ら。
内またの、もたついたへっぴり腰で銃を構える。
う~ん。
同じ戦場に立つなら、こういう兵士の横にも後ろにも立ちたくはないな。
だっていつ引き金に指を掛けるか。
鈍い音が渇いた空に響く。
ほら、ヤっちゃった。
銃声――見れば、躓いた宦官が鳥銃をうっかり落としたらしい。
マジで、何のために銃本体にベルトがあるのか理解して欲しい。
で、銃床から落ちたライフルは衝撃で暴発したという。
「ぎゃあああああ」
誰かの尻に当たったらしい。
銃口が明後日を向いてたのも不幸。
当たった宦官も不幸。
訛りの弾丸に掘られたのも、不幸。
「や、あ、ご、ごめん!!」
「衛生へ~い!!」
「何なんだ、これは」
呆れてるのは、いわずもがな。
通信兵が背負うランドセル型無線機からは、各所に到着した“白服”らの『CP、ブラボー11、所定位置に現着。次の指示まで待機する...送れ!』それぞれに送信してたりする。
また、そうしたやり取りは、こう、プレッシャーめいた焦りを生じさせて。
行軍中の細かい指示と声掛けを行っていれば。
少なくとも、事故は最小限にとどまってたかも知れない。
「チャーリー10、こちらCP。報告が遅れてるようだが?」
ほら、催促みたいに聞こえるもんが飛んできた。
王城を包囲するために必要な戦力は、数合わせで1万必要だったから後宮から引っ張り出した宦官は、最終的に戦えなくても問題はない。兵糧なんかの類は都度、後宮から運び出してしまえばいいと考えてた。
そんな乱暴な補給計画だから。
元帥府の不良将兵たちに、兵糧米を横取りされてしまうんだよ。




