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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1626/2524

- C 501話 カラクム塹壕戦 5 -

 9月23日――零時を過ぎた頃、制空権を賭けた緒戦が切られた。

 ナーロッパから派遣された混成航空旅団の複葉機が、月光を浴びて飛ぶ。

 さながらイナゴの群れのよう雰囲気だった、わけだけど。


 東洋王国・空戦魔法士大隊が採った作戦は、黒っぽいローブを着込んだ少年・少女たちに高高空で待機させ、複葉機の編隊に奇襲するという古式のようなものだった。が、対空索敵が未だに()()であるという弱点を突いたもので――結果、この奇襲は成功する。



「先ずは1勝。世界初の本格的な空戦だ!!」

 阿武隈は装甲車の上で胡坐をかいてた。

 彼が率いるのは、不評の多い戦車たちである。

 その尻の下には...

「悪評の多い虎の子ですけど?」


「主砲口径は76ミリ対戦車砲の搭載。アホみたいな重量オーバーで、足回りの貧弱さが露呈したいわくつき...ま、ピーキーで面白いじゃないか」

 天邪鬼な鬼人ひとだ。

 ただ、考えなしって訳でもなかった。


 ナーロッパ連合軍は反転攻勢に転じる。

 制空権の確保には未だ難儀しているようだけど、地上戦では東洋の歩兵を徐々に圧迫し始めてた。

「司令部からまた、催促の伝令が来ましたよ?」

 戦車大隊の本部中隊は、わりと後方におかれてて。

 いや、やることもないから30両前後の戦車群と、司令部の板挟みに奔走してた。

 飯の時間になると、その本部中隊からミリメシが届けられるとか、そんな仕事だけが残ってた。

「言わせておけ」


「え?!」


「だから、好きに言わせておくんだよ。どうせ、あれだろ? 司令おやじの目を盗んで小言が言いたい准将ら幕僚の小物じじいだろ。ほっとけ、ほっとけ......相手にするだけ損だしな」

 機動力に難がある。

 これは軽戦車からグレードアップさせた試験車台に増加させたタイル型装甲と、主砲の重量計算が間に合わせだったことに端を発する。軽戦車の時は1馬力当たりの機動性、運搬力は破格だったらしい。

 が、再設計された車台は試作時で4度の物言いがついたらしい。

 でも、陸軍としては大陸戦争の継続こそが、海軍への反発につながるため。

 大人の事情もあって、これで出荷されたという。

「30~40トンもある」


「正確には36トンですが」


「......っ、ま、その36トンの全備重量を支えるには、載せてるハイブリッド・エンジンでは効率が悪いんだって話だ。増加装甲だと用意された“タイル型”ってのも実際に張ると、370馬力のソレでは時速20kmを維持できるかも怪しいと来る」

 自転車に追い抜かされそうな、予感。

 鬼人の脚力は異常だから、自転車に二人乗りして鬼人の背に魔法士載せた方が...

 あるいは近代戦車よりも強いかもしれない。

「なんか先祖帰りしてません?」


「別に戦車乗りじゃないが、俺もそれはちと嫌なんだわ」

 阿武隈の愚痴。

 おっと、そろそろ最前線が後退する頃合いのようだ。



 一方の隠者は、戦場のど真ん中で突っ立てた。

 彼女曰く、道に迷ったらしい。

 随行してた歩兵中隊と一斉に雄叫び挙げて“学生運動”ばりのノリのまま飛び出したら...

 塹壕に落ちたというのだ。


 なんて不運。


 日頃の行いが悪いからですよ。

 と、ボクは言いたい。

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