- C 500話 カラクム塹壕戦 4 -
「怒られてしまいましたね、先輩」
後輩ともども、作戦部から追い出された。
まあ、追い詰められてる側からすれば勘にも触る。
東洋王国陸軍は、内情、火の車だった。
各地に送った戦車は、前世代のに比べて燃費が悪く足回りが致命的だった。
かつての傑作戦車は軽戦車とカテゴライズされた軽いものだ。
ただ、北天側の対応も早く、緒戦の動揺から立ち直って以降の戦果が芳しくない。
37ミリ対戦車砲を回転式砲塔内に収めたものとしては、だ。
ナーロッパのそれぞれの陸軍とも、たぶん互角。
「と、まあカタログ上では東洋の軽戦車は、火砲だけでなら重戦車かも...しれない。が、装甲がなあ、紙も紙、ペラペラなんだよなあ」
最高時速28km/h。
どんな悪路も走り回れるよう、広い履帯を履かせてた。
砂漠は、ちと無理らしいけど。
攻城砲で利用されてた火砲が戦線に置かれる前までは、確かに東洋の軽戦車は“鬼”だったようだ。
今は、チワワ?
「チワワ? いや、ウサギかもなあ。使い勝手がいいとは言うけども、所詮37ミリだ。ナーロッパ基準の標準戦車...いや、中戦車って言ったかな? あれには及ばんだろうなあ」
冒険者ギルドから得た情報だ。
バルカシュ鉄道で、これらの中戦車が運び込まれたかは未だに不明。
相手方の情報封鎖もなかなかって話。
「まあ、冒険者ギルドの連中は不可侵、いや中立とか言ってたけども。情報の出し渋りはあるんだろう...彼らの本拠地もナーロッパにあるんだから、てめえんとこの大国に睨まれたくないって考慮すれば、だ。東洋の情報部さまとしちゃあ、最悪を想定しなくちゃならねえ」
「じぶんとこの事になると、とたんに口悪くなりますね? 先輩」
阿武隈の横に後輩。
追い出された部屋の壁にもたれかかりながら、煙草をふかしてた。
敷設工作分隊が設営したプレハブ小屋。
方面軍の小さな司令部である。
「だとして、ナーロッパのとこの戦車。持ってきてると思いますか?」
「さあな? 新装備に50ミリ砲を搭載したってのも聞いたが...」
後輩からごこで?!なんて声が上がるんだけど。
阿武隈大佐は、微笑しつつ『内緒』なんて茶目っ気をみせる。
まあ、彼個人ならナーロッパにそれなりのパイプがある。
駐在武官だった頃のものだけど。
「この場合は、兵器のテストを兼ねている場合じゃないってとこかな。北天の連中は、世界の端っこにある大国に打診して、協力を取り付けた。今までは局地的な狭い戦いだったが、文字通り世界を敵に回した大国同士の戦いになる」
「それって...」
「世界大戦だ!! 方面軍の司令が恐れてたことでもある。あの人も普段こそ、ちゃらついたとこはあるんだがな、蜀や超を追い詰めなかったのも、これらの危惧につながってたんだが...これで即時撤退が出来にくくなった」
小首を傾げる後輩。
阿武隈は、背中を向けると『殴りやすいだろ?』って後輩に呟いてた。
「膠着状態の内に兵を退いてれば、な」
隠者たちがカラクムに上陸した時点で、撤収の好機を逃した。
背中を見せて逃走すれば、尋常ではない速度で追撃してくるだろう。
北天がではなく、隠者の率いる選抜部隊がだ。
「じゃ、じゃあ、先輩ならどう...受けますか?」
「総力をもって叩き伏せる!!」
その日の夜、方面軍司令は総力戦を指示してた――。




