- C 483話 陽炎の帝国 2 -
青島城塞は、軍港だった。
が、東洋王国が要する海軍力、前ド級戦艦6、巡洋戦艦4を筆頭とした重巡、軽巡の対地打撃群と、沖合に展開してた、ウイッチキャリア6隻を主力とする航空打撃群からの一方的な爆撃には、さすがの城塞でもひとたまりもなかった。
シーズン4から実装されたウイッチキャリアは、当初、水上器母艦という非常に貧弱な軍艦だった。
ビルドシップでは未実装だった為プレイヤーからは、ウザイNPCオブジェクトとして認知されてたが、シーズン6で初めて課金船体にのみ解放されると...その様相は一変した。
特定の配信者からは『プレイヤー艦としての実装』を叫ぶ声が大きかった。
ゲーム上の航空兵力は“魔法少女”である。
まあ、見た目としてのグラフィック完成度も...
平甲板から箒片手に全力疾走する少女たちの...ひらひらを眺め視ることが出来る艦長の、そう! 役得感が背徳さもマシマシで、愉しまれたのだ。操艦も忘れて平甲板にて横になって、彼女たちの怯えた顔を楽しむという、変態も、ごくまれなるたしなみの一つ。
これを、変態道という。
◇
さて、シーズン7から実装されたのは航空母艦だった。
小型飛行ゴーレムを20機あまり搭載できる、水上器母艦よりかは大型になる軍艦だったけど。
航空爆撃というが過らなかったプレイヤーはいない。
硝煙と鉄の咆哮を楽しむ、お舟ゲーに対する挑戦のような存在。
運営のかじ取りに、やや懐疑的になった瞬間でもあった。
ウイッチキャリアで枷が外れたので、今更感はある。
東洋王国に参加した、プレイヤーの頭上を飛ぶ飛行ゴーレム。
なんかちょっと複雑。
青島要塞に張り付く揚陸艦の数、数、数...
ぱっと見、D-Dayそのものにも見えた。
「これが、海戦ゲームか?! まるでストラテジーじゃねえか」
ってのは、ディスコード中にながれたプレイヤーたちの生声だった。
海岸線から上がってくる黒山の兵士たち。
ああ、この世の終わりにも見える。
んー、これどうなの?
◆
台州の都より、南シナ海をまたいで約2千キロメートル。
その海域には“台湾島”にも匹敵する人工島がある。
人工島以外の上陸可能な島は、残念ながら見当たらないのが現実だった。
まあ、こうなったのは数千年もまえのことだし。
やや寂しい感じはしないわけでもない。
沈没しちゃってんだし。
このモデルは、こうなんだと思えば少しは...
さて、この人工島が――東洋王国とは、言えない。
これはねえ。
水上艦艇の為の軍港であるという認識。
王国本国は、海中に没してる方。
南洋とはまた違った形の人魚族の国家であるということ。
「“倭島”からの侵攻は順調なようです、陛下」
暗転している部屋の中に、光を足元から浴びている女性がある。
彼女こそ、東洋王国の女王“モルガーナ”といい...南洋のモル女王と双子とされてる。
血統の維持のために、モル女王がモルガーナ帝の血肉で作り出されたというのが、魔法の残る世界の定説のように語られてるんだけど。性格も、気性という面でもボク個人の見解としては、他人の空似のような気がする。
女王は、頷くだけ。
だって、この光の柱は長距離通信の名残だもの。
遠見の鏡で虚像を映し出すのと同じで...
海底にある王国から、彼女の姿のみを投影しているだけ。
御言葉は壁に備え付けた“電話”から指示される。
「よきに計らえ」
って一言だったらしい。




