- C 482話 陽炎の帝国 1 -
かつて北天五公という大国があった。
何人からの侵攻も受けず、また、他の巨大帝国とも正面から相対した陸軍国家だ。
その北天に危機が訪れる。
シーズン7も工程上、3分の1が進んだ当たりの話だ。
唐突だったけど“斉”国の水軍が、黄海上で撃沈されるという事件が起こる。
まあ、これが事件とか事故だと思ったのは、北天五公のほうだけで――なんていうかなあ、張本人たちはきっかけにしたんだわ。大義名分なんてどうにでもなるよというか...そうそう、本当になんの前触れもなく陥れられてしまった。
その相手というのが...“南遼”として最近勃興した王国からだ。
後ろ盾いや、或いは後見人というのが“東洋王国”。
みえみえすぎる。
あざといとでもいえばいいのか。
◇
“南遼”王国は、旧世界の朝鮮半島の一部(全羅南道・慶尚南道・慶尚北道付近の陸地)で構成された島が国土である。人口は約58万人で、陸軍兵1万2千人、海軍は1万人ほど組織されていたという。
主力艦は、軽巡洋艦と駆逐艦数隻からなる戦隊が、1ないし2部隊しかないとか。
ま、こんな兵力でよく、喧嘩をふっかけたなあってのが、国際社会の冷めた見方だった。
これは東洋王国を背景としない、“南遼”だけの分析だ。
「国土が天変地異によって、物理的に分断された“遼”国だが。南北の融和というのは忘れていないと、南遼王は申されている。故に、だ...此度の事故についてなのだが」
東洋王国の大使の弁を遮って、斉国大使が立つ。
南遼のひざ元であるのに、東洋の大使とは不自然極まりなかったんだけど、それはあえて横に置いてた。
「まずは、何があったかの事実確認を!!」
そりゃ、そうだ。
斉にもたらされた一報は、まさに一方通行であった。
黄海で漁をしていた漁師たちの目により、斉の旗を掲げる自国船が沈んだという話のみ。
「ふむ...事実を知らないと?」
やや癪に障る話し方だが。
「デキれば」
顎にたくわえた髭を指ですく。
「南遼王室が運営している交易船に対して、あろう事か妨害行動を働き体当たりを行ったため、護衛している船による“自衛”を行使してこれを沈めたものである!!」
ま、いわゆる私たちは悪くないよアピールだ。
うーん。
公海上は、大型船に道を譲るのが道理である。
難癖をつけられたくないなら、王室旗がある船は大小に関係なく道を譲ればいい。
死人に口なしって...誰か言いそうだけど。
「そういう事でしたか」
「南遼王陛下は、同胞の処遇に憂慮されておられる」
やや、間が抜けたような声が出てしまう。
雲行きの怪しさというか。
強引なとも...
「い、今、なんと?!」
「“遼”の民は国も持てずに“燕”ならびに“斉”、“超”にも散り散りに送られ、奴婢のような扱いを受けていると、沈めた船に乗っていた者たちから言質を取っている。故に、陛下は心を痛められ...ここに北天に対し、遼国の解放を宣言する!!!!!」
見えなかった意図が顔を出す。
宣戦布告したのは“南遼”王国であるんだけど...。
斉の“青島”城塞に上陸した兵は、紛れもなく東洋王国軍だったというオチである。




