- C 473話 いざ、外洋へ 7 -
聖櫃の通った航路は利用できない。
四領から三領へ入った後は、竜族の住処みたいな高地を飛んで南極海へ出た。
この航路の危険性は、その竜族があるからだ。
魔族の生物学者は口をそろえて言う。
五色のカラフルな、ドラゴンにであったならば覚悟せよと。
この五色ドラゴンというのが、だ。
銀色のニーズヘッグ。
(エサちゃんの保護者を自負する竜王だ。
黒色のヨルムンガンド。
(魔人や亜人に扮して旅をしている。今のところ、魔界を留守にしたまま迷子になった。
灼熱のスルト。
(黒色のヨルムンガンドのように体皮が“黒い”のだけど、炎を操るので“赤色”と呼ばれてる。
金色のファフニール。
(金目のもの目が無い、強欲な御仁。金貨一枚でも持ち出し厳禁。
深海のリヴァイアサン。
(ウナちゃんの第2席として、内政で能力を発揮中。見た目は人魚、怒るとタダのウミヘビ。
...確認されている竜王たちは、この五頭だ。
で、このうち。
例の山脈を根城にしているのが...。
「灼熱のスルトっていう気難しい爺さんだ。400か500歳はとうに過ぎ、孫の数まで含めると、ちょっとした国の軍隊かって見まごう感じの数で、な。まあ、手が付けられないっていうレベルでもないんだけども、縄張りにはうるさいんだ」
舷窓にへばりついてた、エサちゃんが滑り落ちると――ひらひらする布をアロガンスはめくり、
おいおい...
「なんでえ、スパッツじゃねえか!!」
「みせないよ~ん」
な、なになに...このふたり。
仲良しじゃんよ。
ちょっと妬けるぞ、ボク。
「竜族の縄張り意識ってそんなに高いもの?!」
ウナちゃんは、振り向きながら滑ってエサちゃんみたいに、床に這いつくばってた。
いや、なんつうか、さ。
この床、良く滑るんだよ。
ボクは、ショートパンツだから捲れることを気にしなくていいんだけど。
思いのほか、前と後ろの谷間に食い込むんだよね。
「ああ、うちの次席が欲深い方じゃねえから、まったく自分の領地に帰ろうとしないんで、陛下も実感わかないんだろうけども...まあ、それなりに異常な部類だと思うぜ」
ウナちゃんのスカートを、正面から堂々とめくって殴られるアロガンス。
うん。
昔、女子のスカート捲り損ねて、クレパスを触る子も居たなあって感じ。
「竜族の感知能力は高い方だから、超高空であろうとも、だ。上を飛ばれていい気はしない」
腫れた頬。
口の中を斬ったのだろうか、口端から滲む血が。
「認知能力の高い彼らを出し抜いたってこと?」
の回答がボクに向けられたもの。
えっと、これはどう答えるべきか。
魔族でも忌避する竜族の感知能力は、非常に高い。
ドラゴンの幼生体に目隠しをさせて、マナ鉱石で振り子に仕上げたところ。
幼生体皆が皆で、揺れる石を追って見せたという研究成果がある。
まあ、もっとも...この実験では100メートルも離れてなかったというオチもあった。
けれども、飛行ゴーレムは飛竜などから威嚇されることが多い。
第二魔王軍・第2席アンセディリティ曰く、
「マナの結晶体を使ってるから、電灯に向かって体当たりをする“虫”みたいな感覚なんですよ」
...だ。
◇
つまり。
その電灯みたいな漏れを何とかすれば、聖櫃の連中のように危険地帯を飛ぶことが出来る、と。
ウナちゃんから安易な反応をされた。
「いや、ダメだろうなあ。飛行ゴーレムのマナ漏れを何とかしても。俺たち自身も、大気中のマナから魔力を自然回復させている。漏れの対策ではなく根本的に別の技術を使っていると、見るべきだろう」
「さて城壁を越えて...いよいよ、今度こそ本当に未踏の地へ入るぞ!!」




