- C 472話 いざ、外洋へ 6 -
「辺境公だあ?! 兄貴、マジで言ってるんか!!!!!」
現当主から、半ば強制的に幽閉されてた青年がようやく解放された。
いや、すでに決まった事柄の事後報告である。
で、烈火のごとくお怒りというわけだ。
「まあ、落ち着け」
「落ち着く? どこにだ。どこで落ち着かせようって話なんだあ?!」
兄に掴み掛りに行って、
いなされ、投げられた。
「もう、喧嘩っ早いなあ...誰に似たんだよ?」
親戚中を見渡してた。
武闘派の弟、農奴のような兄と比較対照されてた関係。
その兄の株は急上昇中だ。
武闘派の弟が腕っぷしでも叶わないのだから。
「ちくしょー」
あとはもう、ふてくされるだけだ。
「そこ、そこでもっと食いついてくれば、お前の株は暴落しないっての。俺は兄とか弟とかそういうのはどうでもいい。土いじりが出来れば当主の座なんて、お前にくれてやると何度も言ってるだろ」
「いいや、その押しつけがましいトコが嫌いなんだ!! 兄貴はデキる奴じゃんよ?!」
ま、最後は兄弟喧嘩にすげ変わってるんだけど。
領主になる気が無いのに、取り付けてきたソレは大それたものだ。
いわゆる、あやふやだった自治権を勝ち取ったのだ、この人は。
それで株が上がらない筈は無い。
親戚連中も、認めざる得ない。
「デキる、か...その評価は余計なんだよなあ。だって、これ続きがあるんだよ」
◇
ローンホール家は失態を招いた。
愚弟のしでかしは見逃されなかったという話。
ま、間接的にだけど魔王城を襲撃したのだから、謀反者だと思われても何も言えない。
辺境公に封じられる代わりに...目に見える形で誠意を示さなくてはならない...とか。
「って事は、」
床に寝てた弟が上体を起こし、
「あ、いや。それじゃあ、俺が納得しないだろ? 土いじりの大好きな俺が、天領へ出向して...」
弟の目の色が変わる。
ああ、きっと兄の話をちゃんと聞いてないんだろう。
「兄貴を差し出せってのか!!!」
「いや、だから...俺は天領の農業大学に行って、だな。農地改革の神髄を学んで来ようと。ま、確かに...出向期間は10年、体のいい人質政策なんだろうけどもだ。ただ、これはこれでいい条件だと思ったのさ」
拍子抜けな弟がそこにある。
この選択肢にはいくつかの提案があった。
身内の誰かを差し出す他に、人質となる預け先の候補地だ。
五領は言わずもがな、六領に七領、三領と一領も含まれてた――「行先は、決められますか? 出向者からでも...」と、質問して“天領”も加えられたという流れ。
実に彼らしい。
いや、生活費などの方は仕送りで工面する必要があるけども。
大学への費用などは天領が持つ形となる。
「...ったく、兄貴らしいよ」
「分かってくれたか」




