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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1599/2525

- C 474話 いざ、外洋へ 8 -

 聖櫃騎士団テンプルナイツの技術は、オーパーツレベルだ。

 今、この時の人々では考えもしないような、技術で――いや、そんなに難しいことじゃなかった。

 彼らがやらかしたのは、下劣な方法。


 ドラゴンの幼生体をあらかじめ捕縛して、四方に飛ばしただけ。

 鳴く子に親が助けに行かないわけがない。

 知性があろうと無かろうとも、だ。


 灼熱のスルトの目を盗み、掠め取った幼生体で航路を確保した。

「あれは少々勿体ないことをされたのでは?」

 安全海域へ出た聖櫃たち。

 掲げる組織名が“騎士団”だけであって、中の人々すべてが騎士ではない。

 ま、守備隊の20名前後くらいだろう。


 腕を組み、光が指し示す先へじっと見つめる長髪の男は...

「いや、ドラゴンの解析は終わってる。地を這うトカゲからでも再現は可能だし、ペットとして飼ってる間も、煩く親を求めて泣かれるのは困るのでな。考えてみろ、徘徊竜のヨルムンガンドが我らの先で待っていたら、一戦も止む無しになる...ま、ニアミスはたびたび起きては、いるようだがな」

 ため息が出た。

 大きく一つだけ。

「さい、ですか...」

 こっちの男は、生物学者のよう。

 ドラゴンの幼生体の研究をしてた――ひとつくらいはと、進言したのも改造とか模倣とか、そういうのに使いたかった()()だったに過ぎない。ペット気分じゃないし、エサをやるのは面倒だと考えてた。

《試験管の中で飼えれば十分なんですがね》


「ま、そのサディスティックな思考、嫌いではない」

 そういうやり取りが、その時には遭った。


 灼熱のスルトの山には今、近づかない方がいい。

 巨長カイザー・ヴィルトでさえ付近を飛ぶことはないほど、空気が灼けるほどに乾いているという。

 ま、要するに...

 四方へ散った子を救出にいった親族たちからは、幼生体の無残な姿が報告された。

 全身に刺し貫かれた杭と、四肢を捥ぎ取られて()()()()にされてたという。

 高い治癒能力がある竜種は、これでも時間さえ賭ければ元の姿に戻ることが出来る。

 しかし、それを妨げるアンチマジックの魔紋が刻み込まれてたという。

 竜王の知識をもってしても解除法が分からないのであるから、怒り心頭であることは容易だ。



 まあ、そういう事情も知らないボクらは、危険と言われる航路は最初から選ばなかった。

 いや、もしも選んで飛んでたら...

 どんな災難に見舞われてたことか。

「マルの考えは現実にはならない」

 アロガンスの指摘。

 ん?

 ボクの考えを読んだの??

「ポップアップしている窓が出ているわけじゃないけど、分かりやすい顔をしてるからな...ま、それはいい。聖櫃ヤツらの航路は、四領を出発点にしているからだ。四領は、三方をぐるりと三領に封じられているのが特徴で、この魔界で屈指の版図というと...第三魔王領だろう」

 第一魔王領と第二魔王領は、天領の盾としての機能が優先されて大して広くはない。

 穀倉地帯として開発された第三魔王領が、異常にデカイのだそうな。


 ふ~ん。


「気の乗らねえ受け答えしやがって」

 頬をつねられた。

 その際、

「マル、おまえ...なんか、いい匂いしやがるな」

 って囁かれた。

 ん? 新手のナンパ???

「ほう、これが()()()()の正体ってこともねえか、ぶっちゃけると...旨そうとか。いや、違うな...香ばしい、か? まるで...フライドポテ...」

 ああああああああああ!!!

 奇声を上げながら、エサちゃんが飛び込んできてボクの上に覆いかぶさった。

 ついで跳ね仰け反った折、エサちゃんの踵がアロガンスへクリーンヒットしてた。

 うん、すげえはエサちゃん。

 でも、重い。


 ボク、死ぬ...

「...っ、どこまで話したか?」

 復活のアロガンス、ダメージは引きずってる模様。

「ウナちゃんのパンツが、三十路とは思えない水色の縞で、子供っぽいという...ところまででデス!!」

 エサちゃんはニヤリと微笑む。

「ああ、そうか。頭の中はちと判然とはしないが、い、あ、まあ...陛下ウナのパンツの趣味は()()()縞柄が多いな。プリント付きを履いた時もあるけど、ま、あのミニマムなサイズだろ? あれがコンプレックスでなあ、いろいろと紐だのティーの字のバックだの、フロントだのと試行錯誤はしたみたいだけど...幼児体系に犯罪のようにしか見えん。で、縞に行きついたというより出戻った」

 ってところで、前歯が折れるくらいの勢いで殴られた。

 いや、膝蹴りも入ってる。

 下手人は、ウナちゃん本人だ。

 涙目ではなく、赤面である。


 うん、それマジで止めてあげて...それ以上は死んじゃうから。

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