- C 463話 勇者の備忘録 3 -
ヤウ公爵夫人の素の名は、キャベ・テンという。
キャベ族での女子は扱いに困るというのが本音だったらしく、それ以前の女子たちも“さんざんな”名を与えられたようだ。とりま、テンは五領内では最後という意味なので...男子が生まれますようにと願掛けされた。
ヤウはこの名が嫌いだった。
公爵領を拝領したのちは、土地名を自身の名のように口に出す。
ま、それもベックが来るまでの話。
◇
幼女になった彼女は、散歩が日課になった。
えっとボクが降ってきたと時も、その日課の消化をしてたらしい。
ボクの自己防衛本能により、水属性魔法の攻撃が行われた直下にいたのだ。
もしも、火属性であれば彼女は奇跡の復活を遂げてただろう。
彼女は運が悪い。
彼女は間も悪い。
彼女は再起できなかった。
蘇生魔法によるデスペナは、レベルの喪失だった。
まあ、幼女の姿でも彼女の蓄積された経験値は姿相応では無いってことなんだね。
で、だ...
素っ裸の幼女を抱えるように、音と光に誘われるようにベックと対峙しることになったんだ。
じゃ、元の時間に戻そう。
「なあ、マル...」
ボクは無言。
てか、ハナ姉がいないからボクを吸うって。
「お前の蘇生は何度か見てきたが、本当に後遺症とか残らないよな?!」
「心配?」
ボクの首筋の匂いを嗅いでる。
鼻息が当たるからわかるし、なんかくすぐったい。
「ああ、あいつに何かあったらと思うと、こう俺の何かが締め付けられる」
うん、凶器みたいのが背中に当たってますが。
まあ、これはいいか...
たぶん生理現象、生理現象。
「マル。お前...」
「うん?」
「こんなに細かったか?!」
そ、それは...
ボクが太ってたとか?!!
「あ、いや...前に腕を回した時よりも、こう...スカスカな感じが、な」
前に?
アバターのそれと、現実世界のボディ採寸はわりと正確だ、という話。
五感の触覚が敏感に再現されるよう、今回の調査チームは全員がナノゼリータンクに入ってる。
ベックは大学が用意した、そのタンクに入ってたボクを...
司馬丸恵の身体を抱えたんだという。
ちょ、ちょっと待てぃ!
「ゼリータンクから抱えあげたんだが、こう...お腹周りのふくよかさは、俺好みだったんだが。もう少し肉を食え肉を! そうだなあこの下腹あたりはご本尊も、だ...あの幼児体系に戻さなきゃあいかん!!!」
持論を展開するのは勝手だけど。
「ベック...さんは、変態だと思ってたけど!! どうやってタンクに...いや、その前に」
「俺はマルのしか見てないよ。まあ、エサちゃんも好みの身体ではある、が...JKらしい体つきにもなりつつあるから、マルに合わせようとしたこっちの世界の方が好みだねえ。ああ、心配しているようだが、見たのは俺一人! スタッフの目を盗んでこっそりな」
24時間のモニタリングされた研究棟に、忍び込むだけでも神業。
多くの監視の目から姿を隠すのも...
「この取り調べって、何か意図がある?」
ヤウさんに言いつけるよ、とかいうつもりだった。
彼女が部屋の隅にいると気が付く前までは。
「これは、さ。あいつが言い出したんだ。...っ自分を吹き飛ばした子に罰を、と」




