- C 462話 勇者の備忘録 2 -
ハナ姉のは完全に贔屓目からきている。
ボクは死なない。
たとえ殺されそうな状況になっても――必ず黄泉から、私が連れ戻す――と。
どんな化け物だって話だけど。
ここまで愛されてるのは、嬉しいんだけど。
ボクだって、死ぬときはコロッと行くもんだからね。
で、蘇生魔法は成功した。
血だまりの中から再構成された生物は......
◆
勇者の称号がステータスの欄から消えていた。
代わりに“魔人”と“大将軍”の称号が輝いてたという――ベック・パパのステータスである。
「勇者でステータスが底上げされてた分、久しぶりに自分の素の数値を見ると、なんか懐かしさがあるなあって...ちょっと不思議な気分」
なんて、しんみりしてるけど。
余計な称号のせいで、実は“素”でもない。
二つ名に近い“魔人”の方は、魔界に長く居過ぎたせいであるのと同時に、ベックに向けられた人々の畏敬めいたものが具現化されたもの。勇者の時のように、全パラメータ値の5倍までは行かなくとも、2~3倍のボーナスは受け取ってた。
あと“大将軍”は、あれだ。
魔王軍や公爵軍を率いてた時に目覚めたっぽい。
ステータスの鬼でもないから、ちょいちょい見ている感じじゃないし。
ただ、日課のようにステータスを確認し終えた彼の耳に、砲撃のような爆発音が飛び込んできた。
実際に音がした方向へ首を向けたら、もうもうと煙が上がってた。
ボクが意識を失うと、アバターに内蔵されている自己防衛機能が作動する。
つまるところ「いのち、だいじに」作戦と同じもので。
生命維持活動を優先するリモートアクション――
これがハナ姉のいうところのマルは絶対に、死なないにつながってるらしい。
いや、どうでもいいけど。
マジでこの防衛機能ってさ融通が利かないわけよ。
例えば、真下に人がいても構わず砲撃して自分だけは助かろうとする。
いや、落下してるときにこの爆風で、速度を緩和させるんだと。
で、そこには人がいた。
彼女はヤウ公爵夫人。
まったく運の悪いというか、魔の悪い。
◇
「――ということは、証拠隠滅しようと慌てて彼女を蘇生したと?」
事情聴取のようにベックを前にする、ボク。
彼と二人きりはちと、嫌なんですけど。
「は、はい」
「あ、あの...どうでもいいけど。ボクの目を見て話してもらえませんか? なんで...」
「マル、もうちょっと膝を開いて」
指示されたように足を開く。
ショートパンツの脇から見える縞が気になるらしい。
これが勇者と呼ばれたベックの本性だ。
「ハナ、あいつとは一緒じゃないのか?」
「う、うん。ボクひとりで落ちたから」
真上を指さした。
キルダらは空に上がったし、セラフィム......叔母ちゃんも、残務処理が終われば空に戻るだろう。そん時にボクも上がれたら、いいんだけど。
「じゃ、」
「じゃあ?」
「マル吸いしても??!」
いやいや、それは居なくてもやっちゃだめだよ。




