- C 464話 勇者の備忘録 4 -
まあ、そんな怪奇現象を目にしたボクだったけど。
軍艦が感知した魔法の痕跡頼りに、ハナ姉がヤウ公爵領へ降り立つ。
犬猿の仲となったかつての親友が対峙。
“ザボンの騎士”というギルドの長、ベック。
同ギルドの副官的ポジション、ワードックのルーカス...改め、ハナ・コメ。
ふたりが斜に構えた状態で、火花散らす様子ってのは...
なんか、怖いんだよね。
いきなり掴み合わないだけで、なんとなく。
互いにどう殴り倒そうとか考えてるような感じで。
「ふん、相変わらずの目つきの悪さだ。それでは、オスも寄り付かんだろう?!」
口火を切ったのはベック。
ボクの身柄は同じ体形のヤウさんに、しっかりホールドされてる。
振りほどくことは容易だけど。
それじゃあ、彼女に怪我を...あれ?
「ヤウのは腕力は、キャベ族譲りだ。魔王キャベ・ジンと同じ奴を相手にしていると思った方がいいぞ、マル?!」
見透かされた。
ベックに吸われた時は、背中に硬い凶器を感じたものだけど。
ヤウさんのは、ぽっちをふたつ感じます。
あ、あれかな...
「マルを人質に取ったつもりか?! この腐れ外道ロリコン勇者!」
まあ、否定はしない。
その通りだし、
「褒めるな、テンが見ている」
うん、確かにヤウ侯爵夫人が見てますし、聞いてますねえ。
ハナ姉に罵倒された時、心なしかボクへの締め付けが強くなりましたが...
違いますよ、違いますとも!
ベック...さんの興味はボクではなく、あなたですよ~
「褒めてねえわ!」
「ふふ、もっと詰れ、貶してくれ! 俺は言葉で責められるのも好物なんだ」
変態だ。
ちらっと、背後のテンさんへ気配を向けたんだけど...
こっちも似た者同士に見えた。
ベックが責められてるのを見て、興奮するタイプ。
うーん...
ちょっと毛色違い過ぎて、ボク無理。
「ハナ姉~、たすけて~」
って、泣いてみた。
泣いてから思ったけど、これで助けてくれたこあったっけ?
◇
ああ、案の定だ。
首を傾げてるハナ姉がいるよ。
「お前は本当に私の妹か?!」
とか...聞いてきた。
いや、なんか気持ちの入ってない棒読みっぽい。
「あれ?」
あれれれれれ......
うっわー、面倒くせぇー
「ちょ、テンさん解放してね!」
彼女の腕から、スライム化して脱出。
力で抜け出すより簡単で、誰も傷つかない方法。
ボクだけが魔力を消費する。
シェイプシフトで元の少女姿に戻れば、右手に作った氷のこん棒で殴り倒すだけ。
「放せって優しく言った時に、放せっての!!」
キレたボクは珍しい、レアだぞ。
対峙してたベックの目の色が変わる。
まあ、愛情を向けてる対象者が殴り倒されれば、ね。
「マ、マル!!」
「うむ、マルである、な!」
ボクにつかみかかるベックと、それを抑え込むハナ姉――かつて“ザボンの騎士”には、ベックとルーカスという巨頭が率いる陽気なギルドがあった。
ベックは今でも高いポテンシャルを秘めた戦士で張るけど。
それでも、ルーカス改めハナ・コメと名乗るようになった彼女とは、一線を画す。
そりゃ、種族もワードックから幻獣・九尾狐になれば差も開くようなもの。




