- C 360話 天領始末記 4 -
「アホか! キサマらの陣地に状況の確認を行ったから、落下傘降下しとるんだわ。空挺部隊とて、ぶっつけ本番の落下傘だぞ! 本来ならば、もう少し高度を落としてからジャンプしたいところ...格納庫から飛び出して、傘が開くまで数十秒...固まれば、傘がからまり錐もみに墜落しかねなない危険を冒しているんだ。そこは、殴るんじゃなく」
キルダの上乳あたりを小突きながら、
「労われ、バカ上司が!!!」
ハナ姉の口の悪さ。
いや、愛情表現なんだけど、さ。
やっぱ、
う、うん、いや、ハナ姉だわ。
◇
「やっちゃったもんは仕方ないと思いますんで...」
フィズは踵を返し、本陣のハナ姉を見る。
ちょっと見ないうちに物怖じしなくなった、幼女へ...
「おまえも成長したなあ」
だって。
水槽の中にある...
あの子は変わってませんけどね。
「公爵軍の被害状況が問題です!」
セラフィムは告げる。
パワードスーツ隊から望遠映像の提供を受けた。
解析する限り、燃えてる本陣の火の中が怪しい。
「これ、ひと...ですよね?」
そんな風に見える影がある。
「ま、爆弾に成り得るもんを墜としたからな...必然的にそうなっても、致し方なしと言ったところか」
途端に歯切れが悪くなる。
ごっこで戦争してたことは密談だから仕方ない。
でも、彼らの本陣が燃えてるとなると。
「で、この米粒大の黒い塊なんですけど」
フィズが、ここと差すあたりになんかある。
目の前の炎が邪魔で良く見えないけど、
項垂れて、膝をついてるベックに見えなくもない。
意気消沈でもしたように、じっと炎の中をみているような。
「これ、勇者さんじゃないでしょうか?」
それを見聞するのは、賢者レンのしごと。
「どう?」
「どう...?」
「どう、ですか?」
「いや、どう...かなあ」
首をかしげてる。
元気はつらつ、バカ明るい男だ。
こんな炎を前にしたら、腰でも振りながら『キャンプファイヤー!!!』って不謹慎なことを口走っているような男である。
いや、そんな彼が動かないってのは...
◆
「消火作業、こっちはもうダメだ!! 火傷を負っている者は負って無い者の肩を借りて退避せよ!! いいから、こっちに人手を回すな! とにかく退避せよ!!!!」
って、ベックは叫んでた。
公爵の代わりに指揮を執り、鼓舞し、兵士の尻を叩く。
炎の前で項垂れてたのは、彼女に付き従ってきた古参の副官と、守役の者だ。
人生の師匠みたいな関係だったが。
「ほら、お前らも!!」
火を見ていると、魅入られるぞって注意喚起もした。
が、情けない男たちは動かない。
「侍女長!!!」
「はーい、ここに。只今、おまちを~」
侍女たちは、包帯を腕いっぱいに抱えて後方のさらに後方へ運ぶ手伝いに従事してた。
その彼女たちをベックは、呼びつけた。
「とりま、この馬鹿垂れ共の正気を回復させてくれ」
「えっと、それは気付けの...でしょうか?」
頷くベックに喝入れのグーパンチが飛んだ。
奥歯が折れ、口の中が切れて盛大に、吐血させられた。
「お、俺...ぢゃな、い...」
を言い残して卒倒。
ベックを担架に転がし載せると、馬で引きづっていく。
「じゃ、次はあんたらだね!!!!」
目が覚めるような、グーパンだった。
だから、失意だった彼らの目が点になってる。
「えっと?」
「これはさ、代理からの指示なんだわ。分かる?」
小刻みに震える高官たち。
橋から順に、首がぐるんと回るような一撃を貰って、撃沈させられていく。
「公爵、燃えちゃったけど...暫くしたら、復活するから! まあ、待ってなさいな」
意味深な言葉を残し、侍女長に支持された侍女らが男たちの脚首を掴んで撤収していった。




