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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1483/2523

- C 358話 天領始末記 2 -

「お姉さま方、もう一度、ヤウ軍と密談を開きましょう! 議題は、()()()()()()()()から船寄越せ...です!!!!!」

 途方もない提案だ。

 だが、残存とは言え天領軍の“エリート部隊をも退けた”は、箔が付くどころの話ではなくなる。

 これは北方貴族七雄それぞれが負けても、彼らにも彼らなりに言い訳がたつという話になる。

 ヤウ公爵軍からすれば、()()()()()()()()()の免罪符を手に入れられ、敗れた方にすれば...天領軍を退けた剛の者ゆえに胸を借りたのだ――とする話になる。

 挿げ変わってしまうような魅力的な話なのだ。


 それが茶番かもしれない1戦のみで、だ。

 肉を切らせて骨を断つ...。

 天領軍としては、帰る手段が欲しいだけだ。


 戦闘終了後は、まあ大雑把に言って国外退去だろう。

 そこで船を接収するのに不都合はない。

「フィズちゃん、かわいいぞ~」

 3人から捏ねくり回される。

 ただ、この戦闘...

 そう単純な方向へ転がることは無かった。



 両軍が睨み合う中で始められた混戦。

 双方、攻防一体の~激しい戦闘が繰り広げられてた。

 木偶人形を相手にした、それぞれの独り相撲が、その実態である。

「うむ、見事に阿呆な構図!!!!」

 キルダ・ファイルは、紅茶に鼻先すんすんさせながら口先尖らせ、それをすする。

 熱いのが苦手な人のたまにある行動。

「でも傍目だと戦っているように見えるから不思議だよね」

 提案者フィズの策。

 木偶の方は、甲冑を纏わせた()()()たちである。


 たぶん、こんなトコだよねって当たりで――天領軍の陣地が後退し始める。

 お昼が近くなってきた。

 セラフィムが頭上を仰ぎ見ると、息を詰まらせ咳き込んでた。

 一息に何かを飲んだような雰囲気。



 で、

 それは起きたんだ。


 頭上から、いや、集団のど真ん中に増槽タンクが降ってきた。

 中身はがらんどうの空だから、オイルなりが漏れて引火しなかったけど。

 ヤウ公爵軍の戦列歩兵陣に落ちたので、かなりの被害である。

「な、なんだ!!?」

 ベックは、ヤウの傍から離れ陽射し除けから、飛び出してた。

 彼は咄嗟にそうしたんだけど、身重のヤウにすれば旦那が()()逃げたという風に思ったのだろう。

 衛兵に連れ戻すよう下知を下す。

 彼女から数名が離れた後で...

 その陽射し除けの陣屋に、自由落下してきた増槽タンクが着弾。

 こっちは未だ少しだけマナが残ってたっぽく、引火のうちに爆発炎上へと移行した。

「あ、れ?」

 や、や...ヤウ?

 赤黒く燃える本陣地の、焔の中に動く人の影が見える。

 腕を差し伸ばすベックを止める近衛たち。

 チリチリと、

 彼の腕が灼けていくのが分かる。

「勇者殿、ダメです!! 勇者殿!!!!!」

 火の勢いが強く、魔法でも消えそうにもない。

 いや、そもそもマナの力で燃えているから、消しようもないのだ。



 最前線では、

 公爵軍の兵士をプチプチと蟻でも潰す様に、粘土巨兵が横滑りしてた。

「ま、マジか?!」

 一瞬、失語症にもなる。

 かつて骨董品として格納庫に鎮座してた、まさに数百年の間、木偶人形だったゴーレムが生き生きと動いてる姿に絶句する。キルダの記憶では、ボクが魔界に持ち込んで、いろいろ騒動を引き起こした、厄災の獣という印象のようで。

 動かないのならば、捨て置いてもいいみたいな扱いだったらしい。

 動かないならば...


 動いちゃってるよ。


 この機体の無双はぶりは、先の四領王都攻防戦でも立証されている。

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