- C 343話 侵略者たち 18 -
交易都市“ドゥーラン”。
碧色の海と、真っ青な空が水平線で交わるような、幻想的な光景がみえる観光の名所としても――五領だけに留まらずで有名な、都市である。
天領軍らは、市庁舎に一部の兵を残して大半が野営している為。
市民も気兼ねなく日常を過ごしてた。
結果、港湾施設が閉鎖的でも。
陸路での交易路がより活発に機能する形で、多くの物資が最盛期の半分以下でも、マーケットの賑わいは健在と言えた。
だからこそ、レンのキノコ裁きも成功するのだ。
ピンク色に彩られたムフフな天幕へと客を招き込んで、さらにムフフな商品が客のポッケに仕舞われる。その客が捨て台詞のように...
「賢者もワルよのう~」
「いえいえ、お代官さんもなかなか...」
って、少々芝居じみてはいるけども。
コンテナいっぱいに運び込まれたキノコを見た時は、皆が卒倒しかけた。
これで漸く、はけたところである。
◆
さて、交易都市“ドゥーラン”に迫る影――ヤウ公爵軍だが。
どういう訳か、都市とは目と鼻の先で停止した。
六領軍と五領本陣との方で、一段落ついたのもあるし。
ヤウ自身の体調不良もあった。
「出来たみたい」
――が引き金だった。
咳払いをする公爵陣営。
それに囲まれ肩身の狭いベックという不思議な構図。
一応、医師による診察中なので、本人に事情も聞く事が出来なかった。
「さて、勇者殿...いや、ベック殿は如何、責任を果たされるのでしょうか?!!!」
ってのは、彼女の教育係である老人であった。
ヤウが嫁ぐまで“ジイ”が傍に居りますぞと、政務全般にまで手を広げてた臣下だ。
彼女の父の代から、過保護に育ててきた者。
「はあ、はあああああ...」
煮えきらーん!!!で、吠えられた。
まっすぐ不動に立つと、
「せ、せ、せせせせせせ...せ、責任はああああああ」
「とるのか、とらぬのか?!」
いや、その...確かにゴムは付けませんでしたが...って、聞いてもない事を口走りながら、彼は及び腰のまま俯き、仰ぎ、明後日へと視線が泳ぐ。
「みなさん」
医師が天幕の奥から、すっと現れる。
彼の下へ駆け寄ったのはベックだった――「先生、アレの勘違いですよね!!!」――は、随分と失礼な話ではあるんだけど。
医師はベックの手を解いて...
「おめでとうございます。公爵閣下はご懐妊いたしました!!」
だって。
ベックの人生にまた新たなページが増える事に成る。
で、軍の侵攻もここまでとなった。
◇
セラフィムからの遣いというのが公爵駐留軍に寄る。
ああ、ご懐妊の話は未だ表立っていない。
まったく当人が逃げ腰なので、シングルで育てる可能性さえ、視野に入れなくてはならない状態となってやや、たぼうの極みとなりつつあった。特に教育係のジジイと勇者の一騎打ちは、関係者としても目が離せない。
「あの...」
「何者だ? いや、今それどころではないのじゃ」
使者は咳ばらいを吐く。
しかも、気の障る感じのを何回もだ。
「っ、やっかましいと!!」
「我らは天領軍である!! こちらも子供の遣いではないのだ、それ相応の持て成しくらいはあるだろう?」
強気で切り出してた。
都市との交換で、怪鳥ゴーレムを都合付けてもらうという交渉が控える前段階だったから、下出に出るような気が前もあった。が、それも半日待たされたら柔らかくいこうかなって人の気持ちなんて消し飛ぶようだ。
「て、天領?!」
「使者の相手をした兵士は、幕僚の下に奔っていった」
《あれ? ...今のは下っ端であったか》
それは大人気の無い事をしたと、反省してた。
その数分後。
やっぱり怒髪天になってた頃、
「えっと、天領のどなた様ん?」
随分軽そうな巨大な虎が現れる。
使者を見下ろすような大きさだ。
その使者も、腹から胸板、太い首を見て顔へ――もう見上げるような巨漢ぶりだったのは覚えている。




