- C 342話 侵略者たち 17 -
天領の上陸部隊。
取り残されて可哀そうなキルダを指揮官とする、彼らが実効支配し、橋頭保である港町は五領の海岸線で唯一の巨大交易都市だった。最盛期ともなれば、交易が結ばれた国々の航路から、日ペースで貨物船が1時間或いは30分おきに現れてた。
が、それも輝きし...遠く昔の話である。
ま、そんな遠くってもんじゃあないけども。
昔の話。
だって、停泊する筈だったから軍艦用にスペースの確保で...
交易船を寄り付かせなくさせてしまった。
本来ならば...だ。
年ベースの貿易収支は、黒字傾向で金貨数千枚に上る。
内、国庫へと流れ込むのはその、20%であった。
「喰いきれないキノコは売ろうと思う!」
レニーホールドは宣う。
おもちゃで使い果たしたものは、付加価値が別途に付くと...レンさん曰く『は~い、みんなあ!! こっちで写真撮影するよ~♪』随分と暢気な事だと言ってた、キルダも暗室で...セーラー服に着替えさせられて――渋い顔をしてたのは、思い出したくもない。
「あの撮影は?」
「付加価値に更なる効果を上げるためだ」
引き攣る表情筋にキノコ汁。
し、沁みる...
「大丈夫、大丈夫! プライバシーは守られるし、加工済みだから年齢なんてバレない、バレない。こっちでさ、AI神絵師さんも使って色々とアレンジしてあるから、収入減アップは期待していいからね」
だって。
商魂たくましいけど、
あれ? 叔母ちゃんは?
「セラフィムさんなら、ベックを迎えに行ってるよ」
◇
そうそう。
そういう話もあった。
確か、ヤウ公爵軍が港街に迫ってるという話。
元々は...
北方戦線に参加してた貴族たちが、だ。
国家運営に対して身勝手に、税率への意見具申を行ったことに端を発する。
確かに中央平原での公爵は、地方太守みたいな権限がある。
国難だったから最大で2年間の徴税率にやや、大目に見る約束したという――「ま、政策としては分からなくもない。どの地域も復興には内外から金が掛かるし、お役人に対して“ちょっと待ってください”ってのも、ね。でもさ、税率ゼロは無茶だわ」
レンさんは説く。
憤って立ってたキルダさんは、部下が用意してくれたクッションに沈む。
「あ、これ気持ちいい!」
「あざ~す」
侍女の手製らしい。
“カイコモドキダケ”ってキノコの繊維を利用して、編まれた敷布だけど座り心地は、低反発クッションっぽい雰囲気である。
それ、売れるんじゃね?
「聞いてる?」
「ああ、うんうん...要するに、だ。免税という究極のサービスに味を占めたんだろ?!」
「まあ、そう」
貴族たちが北方戦線を敷いた時には未だ、打算めいたものはなく。
およそ純粋に“自分たちの国は自分たちで守る”感情があったのだろう。
紆余曲折のなかで、貴族本来の狡賢さに。
或いは、生存本能に目覚めたのかもしれない。
貧乏貴族だっているだろう。
真面目に家財道具のすべてを投げ売って、農兵、傭兵を率いて戦った者も少なくはない。
そうした者たちにとって荒れ果てた...
我が領地を前に膝が折れるのは当然。
ならば、と。
侯爵は善意で動いた――
「その行動の結果が、反逆者に仕立て上げられた」
「しょーっく!!」
キノコ汁が不味いと、横に倒れるキルダさん。
「それ汁じゃなくて、キルダさんの匂い付け中...もう、自分の出した潮吸って不味いとか...やめてよ施術したくなるよ、たぶん...」
キルダは、咳き込んでた。
え? わたしのー!!
って反応は、まあ予測できる。
彼女にかまわず、
「セラフィムさんは、ベック君と会談が出来るよう、差配してもらう予定だから。今んとこ、あっちは全権委ねて...るってトコかな」
とりま、これで一回お休みの升目からは脱出した。




