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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1462/2524

- C 337話 侵略者たち 12 -

「翁よ...」

 声を掛けてきたのは、入植組の班長。

 点呼を取って回ってきたところで、

「やっぱり男女比が」

 ...だって。

 ハンドベルからパートナーに関係なく、男たちは女性や若い人々を守った。

 戦士たちの傷も深いものから、浅いのもいるけど、当分は戦えそうにないものまで――すこし暗雲が差し込んでいる。ハンドベルの脅威は、その形状でありながら手榴弾じゃなくて高度計が仕組まれた、マナ鉱石爆弾だってこと...つまり、地表から数十メートル付近で、火属性高位魔法の爆発が簡単に起動できるってえ、代物だった。

 高度計をゼロ設定にして投げれば、投射から10秒以内に爆発することもできる。

 そうやってジンへの攻撃に使われたことも。


 さて、この驚異の爆弾さまのせいで。

 損失した兵と、入植の為に来た民間人は、道の中央に躯のまま動かない。

 最悪なのは、対岸の森へ消えた、千人将と連絡が取れないことだ。

 かつての世界では、レシーバーによる意思疎通が出来た。

 こちらの世界のように、念話で会話が出来るような機能もない。


 取捨選択によって、未来人たちはシンプルな器官を喪失したのだ。

 連絡が取れない――これは千人将とて、似た状況なのだろう。


 で、坂上から――“芽吹きタマネギ”ちゃんらが降りてきている。

 翁と入植者たちは、さらに森の深い方へと入らざる得なくなってた。

《連絡がますます取れなくなった》

 と、胸の奥で零してた。

 そこへ班長のひとこと。

 “男女比の不均等”だ。

「あと何組、送り込めそうか?」


「そうだなあ多少の無理を強いて、20組が...いや、それ以下で、が...限度かも知れねえ。残念ながら若い女性が少ない...入植しても、だ。あとからパートナーを見つけるのは苦労するだろう...どちらか片方ってのは目を惹くし、体裁も良くねえ」

 班長の言葉どおり。

 村の人間にバレても――「この間、越してきた人たちでしょ?」――くらいなら、1組のカップルが望ましい。大量移住は、閉鎖された世界では珍しすぎるし、噂は命取りだ。とくに、適当に嘘を吐く量が半端なくなる。

 しかも、パートナー付きでこうなら。

 片方だけの警戒され具合は、相当じゃなかろうか。


 男だけの放浪者――人相も身なりも、誤解を生みやすい。


 女だけの放浪者――もっと胡散臭い雰囲気で、駆け落ちだとか、まあ良くない噂しか呼び込まない。


 どちらも、現地でパートナーを得るのは警戒心の強い村では難しい。

 だが、街はもっと難しい。

 城門にある検問所は所謂、関所機能がある。

 基本、村を転々とする放浪者の入場は認められない――密偵である可能性があるからだ。

 出入り自由は、城壁の外にある郊外だけに限る。

「理想を言えば、とっと身軽になりたい」

 翁から言われる、班長も苦笑しつつ。

「それは俺もだ。こっちの方は入植組が50だだったし、翁たちも配置を終えれば、国境まで戻って森深いとこで...開拓村とか開く予定なんだろ?」

 ジジイは頷き、

 周りを見る。

 壮年とは言い難いが、ギリひとりは出産めそうな、女性兵士たちの医療班もある。

 これらとオオカミに成らずに済んだ、戦士とでパートナーが組めれば...

「それは絵空事だ」


「そうかい?」

 そうだともと、言ってやりたかった。

 が、その夢も見なかったわけではない。

 仲間が爆弾の犠牲になるまでは。



 翁とは別の森に逃げ込んだ先の千人将ら、幕僚は周囲の警戒に努めてた。

おやじとはぐれたか...」

 装備品の整備、四肢の確認、点呼を取る。

 入植者の組が殆ど対岸にあるようだ。

「こちらは戦士と、数人の医療班が...いや、もう班と呼べるかは」

 ドクターがひとりと看護兵が3人くらいしかいない。

 治癒士ではなく、物理的な西洋医師みたいなタイプがだ。

 村や砦を襲った時に採集した、ポーションが頼みの綱だ。

「ドクター?」


「アンプルの在庫も、私が担いでるバックの分しかない。医療班の再編成が出来れば...人数分は確保し得るだろうが」

 首を振りながら、

「恐らくは、対岸にもないと思う」


「それは、どういう?」


「どさくさに紛れてたとは思うが、あの爆発の影響では...」

 荷物持ちの看護兵だって、逃げるのがやっとに違いない。

 或いは道へ投げ捨てた可能性がある。

 予備として各自、()()()()()という強化剤が与えられてる。

 ただし、狂戦士化の危険薬物ではなく、理性があり時間が経てば元に戻る薬。

 “命を大事に”で生産されたわけじゃない――研究者曰く、これは()()()である!――だという。

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