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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1211/2523

- C 158話 機動艦隊とクァンガイ航空隊 4 -

 東洋から発した機動艦隊は、海南島の沖に停泊している。

 というか微速前進しているとでもいうか。

 航空爆撃でハイフォンの虚を突き、その後、艦砲射撃による一撃を加えれば...海南島の掌握は容易であると考えていた。同島は地殻変動により、輪郭は旧時代の半分である。

 それでも、ハイフォンからすれば国土の守り手であり、砲台島として十分に機能していた。

 蓋となるか、盾となるかは守備隊の士気にかかわる。


 その爆撃に向かった60名の魔法士の前にクァンガイ航空隊200名が襲い掛かる。

 とは言え、直掩の80器が、である。

 残りの120名は、そのまま低空で艦隊の真横から侵入した。



「左舷より敵襲を確認!!」

 って伝声管から報告があった直後に爆発音と、悲鳴が聞こえた。

 戦艦の左舷艦尾から出火してる。

 続いて、水上器母艦を守る駆逐艦からも火の手が上がった。

「何故、気が付かなかった」

 最新の水上レーダーは粗い。

 水上艦なら辛うじて、甲板上部がレーダーに捕捉させられるのだが、低空で飛翔する人間を捕らえることは難しい。これは技術大国の連邦でも成功例が無い。

「いや、良い訳は聞かぬ! ありったけの備砲を用いて弾幕を張るのだ!!! いいか、艦上部から()()()()()を落とさせるな」

 魔法士の空爆と言えば“遅感応手投げ爆弾”である。

 爆装は魔法紋で強化処理オーバードライブされたもので、60kgのTNT火薬に相当する爆発物である。

 落とす際に投擲強化スキルを咥えると、脆い甲板装甲なら貫通させられるという。

 まあ、落下高度が限られるなどの好条件でも揃わないと、なかなか貫通は難しい。

 それでも、密集した艦の上部構造上で爆発すれば、その被害は甚大であることは間違いない。


 作戦中という事もあって、戦闘艦橋には総司令ら重鎮が詰めてた。

 給仕係に、護衛の魔法少女も一緒というちょっと変わった構成。

 司令は自前の手ぬぐいで顔を拭きながら、

「どこからのだ?」

 と問い質す。

 通信手は首を振り、艦長も明後日を眺める。

「恐らくは――」

 幕僚のひとりが司令の耳元まで上半身を屈めたが、

 “お前は応えるな”としっ責させられた。

 作戦参謀のひとりで大佐だが、司令付き幕僚としては疎まれている方の人物だ。

「閣下、海南から上がるには早すぎますし...海賊の類ではないでしょうか?」

 なんて言づけた者がある。

 疎まれた同僚と違って、司令の耳にしたいものだけを口にする男である。

「で、あるか」



「艦長、先ほどは見苦しいものを見せた」

 と、疎まれた将校だけが露天艦橋に残っている。

 司令官と幕僚らは、上司の「寒くなったな」という言葉で、屋内に戻ってしまった。

 戦闘艦橋では分厚いコートを着込みながら珈琲を飲む乗務員たちだけとなった。

「いえ、あいう手合いはどこも居りますから」

 と、やや苦しいフォローをしてみた。

 大佐も苦笑していた。

「第二陣の爆撃器を上げたいところですが、甲板に集めた魔法士たちにこの状況で飛べと命令するのは聊か酷とも言えます。ま、その他にも懸念すべきことはあるのですが...」

 録音された通信内容をヘッドセットで幕僚かれに聴かせた。

 ザザッと、魔法による長距離通話に入り込むのは、思念による雑音だ。

 これらが検出されたという事は、通話に邪魔が入ったという事を意味する。

「これは戦闘か?!」


「は、空中格闘のようです。少女かのじょたちは、応戦空しく全滅したものと思われます」

 その証左は、ひとりも帰還してこなかったという事だ。

 艦隊が攻撃されているから、最高高度まで逃げた可能性はある。

 それでも、やはり報告が来るはずだが――「60名は全滅か...確かに、これを司令に聴かせるのは不味いな。あの方はご自身の思い通りにならないことが痛く気に入らないという性格だ...」

 と、俯いて考え込む。

 その背後にエレベータで上がってきた、かの幕僚が目を細めながら――。

「揶揄い甲斐のある大佐おまえがいないと、閣下も面白くないとおしゃっていた。こんな物騒な場所から下階のブリッジに降りてこないか?!」

 手揉みしているのは寒いからだ。

 海風は少し冷える。

 甲板のと比べれば、そこそこ高い位置にあったからだが。

「この際、あなたの意見も聞きたい」


「なんだ?! おまえは...」

 彼とは同期だが、不思議と出世したのは同期の中で一番早かった。

 代将となって4年目で、次の春には少将への道が開かれていた。

 これも生来の性格という力が大きい。

「...っ、ハイフォンへ飛ばした少女らが全滅したというのか?!」

 流石に足がもつれた。

 縁に掴まり、尻もち程度で済んでいる。

「ば、バカな」


「そう思いたいが、この雑音ばかりの通信を残して忽然と消えた。第二陣を上げるにしても...」

 対空防御の概念はまだない。

 魔法士たちを積極的に戦闘こと、戦略的に絡めた考えは未だ未熟だった。

 故に、艦隊の機銃や副砲などは、艦体に接近する小型艦艇の排除目的に積み込まれているに過ぎず、高高空から襲撃してくる魔法士への対応には不十分だった。

 また、果敢に飛び込んでくる人を打ち落とすという訓練も想定外である。

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