- C 157話 機動艦隊とクァンガイ航空隊 3 -
「目下、差し迫った脅威に対処すべく各方面の指揮官らが、どう動くかで熟考なされている。我々は、教官である俺たちもそうだが、貴様らの先頭で指揮する隊長器として伴に空に上がる。これは訓練ではない! 故に敵弾によって隣に腕を伸ばせば、肩に触れられるような友が傷つくこともあるだろう。だが、それがどうした? それが戦闘で、それが戦争だ!!」
司令塔の上部は、管制室になっている。
構造物としての箱部屋で考えると、わりと大きな空間だ。
魔法によって、物理法則さえも捻じ曲げちゃった...そんなアホな空間――
その管制室には今、上がっている観測器らの情報が絶え間なく入ってきている。
「司令! 映像きます!!!」
詰めてた将校らが“待ってました”と、叫んでた。
事態は一刻を争う。
出撃か或いは静観かの判断は飛び地領として今後を担う。
できれば周辺国から救難要請で飛びたいところもある。
これは本音だ。
映し出されたのは、静止画。
タイムラグと途切れがちは、艦隊からの妨害である。
「戦艦2、水上器母艦4、軽巡4、駆逐12、補給と輸送船が10くらい...って?!」
静止画から情報を読む士官からは『戦隊旗は、東洋の機動艦隊と類似します』と告げられた。
どよめく一堂。
飛びついた将校らも、若干心が後ろに引けたところだ。
「水上器母艦?! こ、こんなのも用意しているのか!!!」
艦隊旗がどこなんていちいち確認するまでもない。
南下してきたのだから東洋艦隊であることは分かり切っていた。
「あれの船に魔法士は...」
「考えたくもないな。少なくとも1隻あたり100人はいると仮定するとして」
400人。
連邦では観測器でも格闘戦を想定して訓練してきた。
が事実、他国ではどこまで想定しているかは、机上の空論でしかなかった。
諜報活動はしてある。
が、国家機密がそう簡単に国外流出する筈もなく...想定の想定でさらに上の次元の想定として机上演習を重ねてきた。
博打の域を出ない。
痺れを切らして、教官の一人が管制室に特攻しかけた。
連邦軍人としてもそれはちょっと大人気なかったかもしれない。
「失礼します」
何だ貴様は!と怒鳴られることを承知で突貫したのだが、上級将校たちは静止画で絶句しており、闖入者を見て意見を求めてきたのである。
◇
武器庫から、38式 魔法小銃を担いで整列しなおす200名がある。
点呼を受けると、各班の長が教官に向き直って――「以上200名、発着準備整いました!」と叫んでた。
高等部の17~8歳の少年たちである。
彼らの標準装備は以下、
1)耐性強化対魔法装甲
2)対弾魔法装甲/第1種ショートジャケット、半ズボン、白いハイソックス
バトルブーツと呼ばれる、安全靴にナイフなどが仕込まれてある。
3)38式 魔法小銃
光学照準器に有効射程720メートルと火属性魔法が付与された弾頭を使用するライフル。
4)12式 琥珀魔導器
一時的に狂化を促しオドを爆発的に高める、アンプル剤。
5)遅感応手投げ爆弾:別名ハンドベル
手持ちベルみたいな形状で、スティック部位を捻じる事でタイマー式の爆発が起せる爆弾。
一回りで約60秒、半ひねりで30秒遅く爆発する。
火属性の特殊弾頭は、戦術級火炎球を射撃できる。
とは言っても格闘戦に専念する隊員と、砲撃する隊員とで別れる必要があり訓練でも直掩器の損害を抑えるのはかなりの連携が求められた。そして、生還率は五割と低いものである。
「よし、上がるぞ...俺に続け!!」
と、教官が先に上がった。
200人と二人の教官が空に上がったと同時に、観測器のふたりが帰還した。
ふたりのオド消耗は激しく、滑走路への着陸は転がるような状態だったという。
「先輩方は?!」
息も絶え絶えに、上がっていった者の背を見る。
「司令部は、迫る艦隊を敵とみなした」
と、説明した。
彼らは咳き込みながら――「艦隊は進路を変えてハイフォンへ!」
◆
ハイフォン王国に知らせが届くのは、滑走路で“大の字”で寝転がっている観測兵のから、2時間は遅れてた。とは言っても、水上器母艦から上がった爆撃器の60名の脇腹を突いたのが、クァンガイ航空隊だったから、ハイフォンとしては遅れの取り戻しが容易だった。
事後報告にはなる。
クァンガイ航空隊は、連邦の飛び地領である前に、連邦と友好的な関係国のひとつだ。
その好で、みなし支援という立場を貫いたのだと説明した。
王国側の渉外担当官の表情は硬い。
「ま、我が国は...その?」
ハイフォンからは“要請”すればいいだけである。
というか、クァンガイとしては要請してほしいという願いを何とかして、伝えようと四苦八苦している。
ニュアンスは分かる。
だから苦い顔をしているのだ。




