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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1207/2524

- C 154話 極東の魔都 台州 10 -

「恩を、売るだと?」

 陸軍大臣の下へ半歩前に進む。

 見えている鏡に近寄り、

「連邦では、軍艦が強奪されたと聞き及んでいます。コレは傭兵ギルドを介した民間へのクエストでございましたが...未だに拘束できたという話を聞きません。であれば...」

 深く項垂れて、大臣は「却下だ」と告げた。

 軍艦1隻を探すのは難しい。

 例え、海軍の虎の子であろうとも、だ。

「では...スカイトバーク王国のです」


「ふむ、聴こう」

 末姫の行方と、反体制派である抵抗者の解体などに関するものだ。

 抵抗勢力の全容がつかめていないので、()()と口にするには時期尚早である。

 しかし、前者である人探しとなれば造作もないというのが、商会の考えだ。

 それでも件の大臣は煮え切らない。

「仮にこちらから攻め込まないとしても、南洋のことも...」


「気がかりですよね。で、あれば連邦に南洋の交易路をリークするのは如何でしょうか? 例えば“マナ鉱石の航路”だと伝えるのです」

 能面だった大臣の顔に色と艶が浮かぶ。

「その情報は誠か?!」


「いいえ、そんなものは出任せですよ。南洋の経済活動は我々が止めたいに決まってますが、それを当事者がやっては全面戦争は避けようもありません。しかし、第三国のまあ、横やりとでも言いましょうか...飛び石の領地があるかの国でしか危機感は図れないでしょう」

 一度は重い腰が浮きかけて――

「動機は、そうですね...この場合何でもいいと思いますが。かの国が一枚岩でないのが幸いとなるのではないでしょうか? 例えば、南洋は国王派と真・王家派で内紛状態で、今やどちらが正当なる国主であるかの覇権を掛け合おうとしている――とか」

 大臣よりも先に奥の将校たちが仰け反ってた。

 続いて、大臣も引き攣りながら...

「出来るのかそんな事が!!!?」


「否定するほど怪しく映るのがこの界隈です。また、黙って受け流せるほど国王派が寛容ではない...これは亡き女王一族の廃嫡させて、王位の簒奪を行った者たちの心理です。1世紀も前のことでも簒奪は明らかに国家反逆罪。その時点に呵責が無かろうとも子孫の代でなら...」

 大臣からは「天草君だけは敵に回したくないな」という言葉が贈られた。

 天草商会は、陸軍の特務機関だ。

 海軍からも選抜された兵が出向して学びに来るほどの機関だったが、国内にあった養成機関を台州に移してからは、予算申請以外の接触はすべて断っていた。



「...社長」

 扉越しに声を掛ける社員がある。

「中へ」

 遠見の鏡は絵画の裏へ。

 青年実業家然とした少年のような優男があった。

 菓子の机にかじりつくように向かってた。

「我が国の海軍が妙な動きを...」

 持ってきた紙片を社長に会づけて、卓上に海図を広げた。

 南シナ海を指でなぞっている。

「南下するような話です」

 社長は小首を傾げ、

「どこへ向かう気だ?!!」

 永世中立の南蛮国を刺激する行為はしないとしても、長距離航海は不自然だ。

 社長は唐突に、部屋の隅の白服へ目を向ける。

「君は何か知っているか?」

 で、すまし顔だ。

 装うのならソレらしい言葉かいとうを用意するべきだった。

 陸軍将校らに脇をがっちりと固められ、

「大佐のお聴きになられたことにのみ、正直に答えよ」

 本人はやや焦った風に取り繕いながら「こ、これは訓練、訓練ですよね?!!」なんて叫んでた。青年実業家を前にしても、似たセリフで逃げようとしている。

「困った者だな。シラを突き通すのなら最後まで知らんふりをしろと、教えただろう。諜報員はカウンターにこそ活路を見出す人種だ。捕まることも想定に入れと...教わらなかったか?」


 海軍出向の彼らは、南方戦略案の為の調査が主な任務だったと、ゲロってしまった。

 拷問らしい拷問は受けていない。

 ただ、大音量の密閉された室内に3日も放逐されただけだった。

「陸軍大臣が効いたら卒倒しそうですね」

 なんて番頭が空笑いを浮かべた。

 彼も店番の後に知らされたクチだった。

「だが有意義だぞ。南方戦略案の杜撰さの御蔭で、海軍の第一目標は早々に破綻するというのが分かった。我が国は国土の半分以上が海である...が資源が全くないという事ではない」

 水棲生物の多民族国家というのが東洋の実態で、その王都も海中に没した古代都市を再建して利用している。故に、地上と同じように水圧に耐えながら、海底から資源の採掘で海軍力を鍛えたという実績がある。

 根性のある人魚と、魚人の都なのだ。

 故に、穀物などの麦などは国外から輸入しないと成り立たないが、それ以外はまあ、何とかなっていた。

 無理やり南洋と事を構える必要が無いというのが、東洋にある肩身の狭い“陸軍”らである。

 なにせ活躍する陸地は少なく、飛び石の島か、王都くらいしか実際に仕事が無かったのだ。

「マナ鉱石以外が採れることも奇跡なのだが...採れれいるうちは感謝をしないのが、我々の悪い癖なのだろう。いや、まあ、そんな感傷はどうでもいい、な。海軍たちはハイフォン王国を襲撃するようなのだ...マナ鉱石は大陸にあると考えているようだ」

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