23. 使節団歓迎晩餐会
そのまま私たちは、大広間へと向かった。
本来ならば私は、国王陛下や王妃殿下に続き、ジョセフ様やダーナ妃とともに入場するはずだ。
けれど今回はジョセフ様から『先に大広間へ入り、列席者とともに待機するように』との伝言を受けていた。ダーナ妃と私の扱いを、明確に分けたいのだろうか。
大広間に到着し、足を踏み入れると、そこにはすでに大勢の列席者が揃い、長テーブルの前に着座していた。
壮麗な天井画に、金の装飾を施した白亜の柱。華やかな調度品の数々が、燭台の明かりを受け輝いている。大窓の向こうには夜の庭園が広がり、その中に噴水が白く浮かび上がっていた。
私は顔見知りの貴族たちに挨拶をしながら、自分の席へと進んでいく。ミアやレナートたちは、他の護衛や侍女たちと同じように壁際へと移動した。
「アウレリア妃殿下、お目にかかれて嬉しゅうございますわ」
「お元気そうで安心いたしました」
ヴェルネ離宮へ移って以来、王宮に戻ってきたのは初めてだ。挨拶を交わすたび誰もが嬉しそうに目を輝かせてくれる。
父であるシャロン侯爵や、レナートの養父、フルニエ公爵の姿もあった。
フルニエ公爵のそばを通る時、声をかけられる。
「アウレリア妃殿下、ご無沙汰しております」
「ごきげんよう、フルニエ公爵」
彼の顔を見て簡単な挨拶をしながら、ぼんやりと思う。
(縁戚といっても、遠縁ですものね。やっぱり見た目はレナートと全然似ていないわ)
公爵の白髪交じりの栗色の髪や、やや丸みを帯びた優しげな青い目は、成長したレナートのきりっとした印象とはまるで違う。彼の黄金色の目は、もっと切れ長で上がり気味だ。
着座してしばらくすると、大広間の入口付近がにわかに静まり返った。
宮廷楽団の演奏も止まり、それまで談笑していた人々が一斉にそちらへ目を向ける。
ほどなくして扉が開き、侍従のよく通る声が響き渡った。
「国王陛下ご夫妻、王太子殿下ご夫妻、およびエルシア王国使節団の皆様、ご入場でございます!」
列席者たちが、一斉に立ち上がる。
国王陛下と王妃殿下が姿を現し、その後ろから、ジョセフ様とダーナ妃が入場した。
さらにその後方からは、今宵の主賓であるエルシア王国の使節団が入ってくる。
使節団の先頭を歩く一人は、エルシア国王陛下より全権を託され、今回の使節団長を務めるオズワルド・ハーグレイブ公爵。齢六十を越えてなお背筋は真っ直ぐで、穏やかな風貌の中にも、長年外交の場に身を置いてきた方らしい威厳がある。
その隣を歩く青年の姿を目にした途端、懐かしさが込み上げた。
エルシア王国第二王子、ローレンス・アルヴェーン・エルシア殿下。
お姿を見るのは、およそ三年ぶりだろうか。彼は私の三歳上で、レナートと同い年だ。記憶の中の殿下よりも、さらに精悍になっていた。
美しい銀髪に、漆黒の目。華やかな容貌には王族らしい気品があり、歩くだけで自然と人々の視線を集めている。
(お元気そうでよかった)
幼い頃から何度も顔を合わせてきた相手だ。再会が嬉しくて、思わず頬が緩む。
一行は国王陛下に導かれながら、大広間の中央を進んでいく。
その途中、ローレンス殿下が何気なく列席者たちへ視線を巡らせ、ふと、私の方を見た。
その瞬間、彼の表情がぱっと明るくなる。
微笑んで小さく会釈すると、ローレンス殿下は嬉しそうに目を細めた。
やがて一同が席につき、歓迎の晩餐会が始まった。
最奥には国王陛下と王妃殿下が並び、その手前の席にジョセフ様とダーナ妃。向かい側には、ローレンス殿下やハーグレイブ公爵をはじめ、エルシア王国使節団の主だった方々が席を連ねていた。
私の席は、ダーナ妃との間に重臣を二人挟んだ位置だ。
初めのうちは、両国の近況や今回の交易協議についての話が続いた。国王陛下とハーグレイブ公爵を中心に、近年の交易量や街道の整備状況などについて言葉が交わされる。詳しい協議は明日以降に行われるため、今夜はあくまで軽く触れる程度だ。
話が落ち着いたところで、国王陛下がふいに私へ顔を向けた。




