第8話 どうか、お幸せに
真実は、ツェツィーリアがレオンハルトのもとを離れると決めた、その翌日に明らかになった。
「レオンハルト様」
朝。
執務室へ入ってきたヘルムートの顔を見て、レオンハルトはすぐに立ち上がった。
「分かったのか」
「はい」
机の上へ、何冊もの古い記録が置かれる。その上には、小さな布包み。
「薬草庫から見つけました」
布を開く。
乾いた赤黒い葉と、銀色の粉。
「竜血草です。それから、古式術に使われる銀粉」
ヘルムートは一冊の古文書を開き、記述を指で示した。
「竜血草そのものには、魔力の昂りを抑える作用があります。ですが、特定の術式と組み合わせれば、番に対する感覚を鈍らせることができる」
レオンハルトの金色の瞳が細くなる。
「……絆を切るのか」
「いいえ。切ることはできません」
「なら」
「感じ取れなくするだけです」
番がそこにいる安心感。
離れたときの焦燥。
相手の気配。
危険への反応。
そうした本能に近いものを、薬と術で覆い隠す。
「ですが」
ヘルムートは続ける。
「人の心を操るものではありません」
レオンハルトが顔を上げた。
「何?」
「記録には、はっきり書かれています。番への本能的反応を鈍化させるのみ。記憶、思考、判断、感情そのものへの作用はない、と」
部屋が静まり返る。
「つまり」
レオンハルトの喉が動いた。
「俺が、ツェツィーリアを疑ったことは」
「術のせいではありません」
ヘルムートは目を逸らさなかった。
「レオンハルト様ご自身の判断です」
何も聞こえなかった。
自分の呼吸だけが、やけに大きく響く。
『本当に?』
『私が嘘をついていると思ってるの?』
『どうして私を疑うの?』
ひとつずつ、ツェツィーリアの声が蘇る。
『お父様は、そんなことしない』
『分かっていたら、お父様を疑ったりしない!』
それでも自分は。
『可能性を一つずつ確かめている』
そう答えた。
冷静に。
正しいことをしているつもりで。
「ペトラは」
「拘束しています」
「……認めたのか」
「はい。竜血草を使ったことを」
レオンハルトの手が強く握られる。
「なぜ」
「あなたを愛していたからだと」
ヘルムートは少し間を置いた。
「番の感覚さえ弱めれば、自分にも機会があると思ったそうです。感覚がなくなっても、それでもツェツィーリア様を選ぶのなら諦めるつもりだった、とも」
レオンハルトは目を閉じる。
馬鹿げている。
何もかも。
馬鹿げていた。
「それで」
低い声が出る。
「俺は、何をした」
記憶は全部残っている。
十五歳のツェツィーリア。
緊張しながら、自分を見上げた少女。
『レオンハルト様』
少しずつ自分を知ろうとしてくれた。
竜の姿を見て。
『綺麗』
そう言った。
黒竜を見て、怖いでも、化け物でもなく、綺麗だと笑った人間は初めてだった。
『だって、レオンハルトでしょう?』
あれは、番の感覚ではない。
そのとき嬉しかったことも、自分ははっきり覚えている。
青い花を見つければ、彼女に見せたいと思った。
似合いそうなリボンを見つけて、手に取った。
彼女が来る日は、いつもより早く仕事を終わらせた。
玄関先で待ったこともある。
黒竜の背で、楽しそうに笑う声を聞くのが好きだった。
全部、自分がしたかったからした。
なのに。
『昔、お前に優しくしたのも、その術の影響だったのかもしれない』
「……何を言った」
レオンハルトは額を押さえた。
「俺は、あいつに」
ヘルムートは答えなかった。
答える必要などない。
自分が一番よく覚えている。
『……あの日々まで、偽物だったのですか』
あのとき、ツェツィーリアはどんな顔をしていた。
「違う」
今さら、声が漏れた。
「違う」
あの日々は、偽物ではない。
ひとつも。
最初は、確かに番だから気にかけた。
けれど。
いつからだった。
来る日が待ち遠しくなったのは。
彼女が笑えば嬉しくなったのは。
自分の名前を呼ばれるたび、もう一度呼んでほしいと思ったのは。
『番だからじゃないわ』
『レオンハルトだから好き』
彼女は、ちゃんと言ってくれた。
なのに、自分は。
「ヘルムート」
「はい」
「ツェツィーリアのところへ行く」
レオンハルトが立ち上がる。
「今からですか」
「ああ」
「何をお伝えになるのです」
その問いに、レオンハルトの足が一瞬止まった。
「全部だ」
もう遅いかもしれない。
それでも。
「俺が間違っていたと伝える。謝る」
許されなくても。
もう戻ってこなくても。
あの日々まで偽物だったと思わせたままにはできない。
「それから」
レオンハルトは目を閉じた。
今なら答えられる。
『好きだから?』
『……分からない』
あのとき答えられなかった問いに。
「好きだと伝える」
◇
「お嬢様、その箱はこちらでよろしいですか?」
「ええ」
同じ頃。
ツェツィーリアの部屋には、少しだけ荷物が出ていた。
旅へ出る準備といっても、すぐに遠くへ行くわけではない。冬が終わり、暖かくなったら、父と相談して海のある町へしばらく滞在してみようと思っていた。
「海かあ」
「楽しみですね」
「ええ」
「お嬢様、泳がれるのですか?」
「たぶん」
「私は岸から見ております」
「イルゼも入りましょうよ」
「嫌です」
「どうして?」
「髪が濡れます」
「そんな理由?」
「十分な理由です」
ツェツィーリアは笑った。
最近、少しずつこんなふうに笑える時間が増えていた。
レオンハルトを忘れたわけではない。
深い青色を見ると、もらったリボンを思い出す。空を飛ぶ竜を見ると、黒い翼を思い出す。
会いたい。
そう思うことも、まだある。
けれど、会わない。
それでいいのだと思えるようになっていた。
「お嬢様。テオドール様からお手紙が届いております」
「あら」
イルゼから受け取り、中身を読む。
「何と?」
「来週、お父様に用事があるから来るって。それから」
ツェツィーリアは少し笑った。
「翼の髪飾り、ちゃんと使ってるかって」
「使っていらっしゃらないのですか?」
「大事にしまってあるわ」
「それでは、使っていることにはなりませんね」
「そうね」
今度つけて見せよう。
そう思ったときだった。
慌ただしい足音が廊下から響く。
扉が叩かれた。
「お嬢様。旦那様がお呼びです」
「お父様が?」
「はい。それと……レオンハルト様がお見えになっております」
ツェツィーリアの指が止まった。
「……そう」
胸が大きく鳴る。
まだ。
こんなにも簡単に。
彼の名前ひとつで。
書斎へ入ると、父が最初にそう言った。
「無理に会わなくていい」
窓際にはレオンハルトが立っている。
その隣にはヘルムート。
久しぶりに見るレオンハルトの顔は、以前より少し疲れて見えた。
「大丈夫」
ツェツィーリアは父に答える。
「私も聞きたいことがあるから」
その言葉に、レオンハルトの表情が動いた。
「……ツェツィーリア」
「何でしょう」
丁寧な言葉。
それだけで、レオンハルトの顔が少し歪んだように見えた。
「分かった」
「何が?」
「全部だ」
ツェツィーリアは黙って彼を見る。
「お前は」
レオンハルトが一度息を吸う。
「俺の番だ」
胸が痛んだ。
ずっと。
ずっと聞きたかった言葉だった。
けれど今は。
「……そうですか」
それだけしか出なかった。
「ツェツィーリア」
「何があったの?」
レオンハルトは、竜血草と古い術について簡潔に話した。
ペトラがそれを使っていたこと。
術が鈍らせたのは、番としての感覚だけだったこと。
「感情や判断を操る術ではなかった」
「……」
「だから、俺がお前を疑ったのは俺自身だ」
ツェツィーリアは何も言わなかった。
「お前の父親を疑ったことも、昔の時間まで否定したことも」
金色の瞳が、まっすぐツェツィーリアを見る。
「全部、俺がした」
「……そう」
「すまなかった」
初めてだった。
レオンハルトが、はっきり謝った。
「許してくれとは言わない。言える立場ではないことも分かっている」
少し前なら泣いたかもしれない。
自分が偽物ではなかったことが嬉しくて。
謝ってくれたことが嬉しくて。
でも、不思議なくらいツェツィーリアの心は静かだった。
「ひとつだけ、訂正させてくれ」
「何?」
「あの日々は、偽物じゃない」
ツェツィーリアの瞳が揺れた。
「お前に本を選んだのも、会える日を待っていたのも、青い花を見せたかったのも、リボンを選んだのも」
胸が痛い。
全部、大切だった。
「俺がそうしたかったからだ。術のせいじゃない」
ツェツィーリアは俯いた。
それだけは、聞けてよかった。
本当に。
「……ありがとう」
小さく言う。
レオンハルトが息を止めた。
「それを聞けたのは、嬉しいわ。私にとっても、大切な思い出だから」
顔を上げる。
少しだけ笑った。
「偽物じゃなかったって分かって、よかった」
レオンハルトの目に、かすかな希望が浮かぶ。
だから、ツェツィーリアは続けた。
「でも」
その希望が止まる。
「だからといって、前には戻れないわ」
「……」
「あなたが何をされたかとは、別だから」
「ああ」
「私を疑ったのは、あなた自身だった」
「ああ」
「お父様を疑ったのも」
「ああ」
「私が何度、本当だと言っても、信じてくれなかった」
「ああ」
レオンハルトは目を逸らさなかった。
低く。
ひとつずつ認める。
「だから、真実が分かったからって全部元通りにはできないの」
「分かっている」
「……そう」
「だが、それでも言わせてくれ」
「何を?」
金色の瞳が、まっすぐ自分を見る。
「俺は、お前が好きだ」
時間が止まったようだった。
ツェツィーリアは瞬きをする。
「今なら分かる。お前が番だからじゃない」
その言葉。
かつて、自分が彼に言った。
『番だからじゃないわ』
『レオンハルトだから好き』
「ツェツィーリアだからだ」
胸の奥が強く痛んだ。
どうして。
今。
「……遅いわ」
ぽつりと声が出た。
「ああ」
レオンハルトは否定しなかった。
「遅すぎたな」
「私、ずっとそれが聞きたかったの」
目の奥が熱くなる。
「何度も。何度も、聞きたかった」
「ツェツィーリア」
「でも」
ツェツィーリアは首を振る。
「今さら……」
そのときだった。
外で、大きな音がした。
「何だ!」
父が立ち上がる。
次の瞬間、窓の外から悲鳴が聞こえた。
「旦那様!」
護衛が駆け込んでくる。
「襲撃です! 北側の塀が破られました!」
「何者だ」
「竜殺しの紋章を!」
ヘルムートの顔色が変わる。
レオンハルトの表情も一変した。
「ツェツィーリア」
腕を掴まれる。
「奥へ行け」
「でも」
「早く!」
今まで聞いたことがないほど強い声だった。
「ヘルムート。伯爵家の者を守れ」
「はい。レオンハルト様は」
「俺が出る」
「待ってください。相手が竜殺しなら――」
「だからだ」
人間の兵では、被害が広がる。
レオンハルトは伯爵を見る。
「伯爵」
「娘は私が守る」
「頼む」
それだけ言うと、窓を開けた。
黒い影。
風。
次の瞬間、巨大な黒竜が空へ飛び上がった。
「レオンハルト!」
思わず。
昔のように、名前を呼んでいた。
外は、あっという間に混乱していた。
「お嬢様、こちらへ!」
イルゼが駆け寄ってくる。
ツェツィーリアは父とともに廊下を走る。
窓の外では黒竜が飛び、黒い装束の襲撃者たちが銀色に光る武器を構えていた。
「……あれは」
幼い頃から竜族と交流してきたツェツィーリアには分かった。
「竜殺しの呪具」
竜の鱗を貫くために作られた、禁じられた武器。
「見ないでください。お嬢様、早く!」
「ええ」
進もうとした。
そのとき、轟音が響いた。
館の一部が揺れる。
「きゃっ!」
足元が崩れ、ツェツィーリアは壁へ手をついた。
「ツェツィーリア!」
「大丈夫!」
煙。
埃。
その向こうに、少し離れた庭へ黒竜が降りるのが見えた。
襲撃者の大半は、すでに倒れている。
あと少し。
そう思った、その瞬間。
壊れた塀の陰から、一人の男が立ち上がった。
手には、長い黒銀の槍。
先端に赤い術式が浮かんでいる。
「……レオンハルト」
男が槍を構える。
黒竜は、こちらに背を向けている。
「レオンハルト!」
声が届かない。
男が槍を投げた。
真っ直ぐ、黒竜の胸へ向かって。
「駄目!」
考えたわけではなかった。
体が勝手に動いた。
「お嬢様!」
「ツェツィーリア!」
イルゼの悲鳴。
父の声。
走った。
ただ、レオンハルトが死ぬ。
それだけが分かった。
嫌だった。
黒竜がこちらを振り返る。
金色の瞳が大きく見開かれる。
そして。
ツェツィーリアは彼の前へ飛び込んだ。
衝撃は、思っていたより小さかった。
「……え?」
体が少しだけ後ろへ押される。
何かが、胸を貫いていた。
痛い。
そう思ったのは、少し遅れてからだった。
「ツェツィーリア!」
聞いたことがない声。
次に気づいたときには、人の姿へ戻ったレオンハルトの腕の中にいた。
槍を投げた男は、ヘルムートたちに取り押さえられていた。武器も奪われ、もうこちらへ近づくことはできない。
「ツェツィーリア」
「……レオンハルト」
「なぜ」
金色の瞳が揺れている。
「なぜ、こんな……」
「よかった」
「何がだ!」
レオンハルトが叫ぶ。
「何がよかった!」
「あなたが、無事で」
「馬鹿なことを言うな」
胸が熱い。
けれど、指先はどんどん冷たくなっていく。
「ヘルムート! 治癒師を!」
「すでに呼んでいます!」
「早くしろ!」
イルゼと父も駆けてくる。
ツェツィーリアはぼんやりと、レオンハルトの顔を見る。
こんな顔。
初めて見た。
「ツェツィーリア。目を閉じるな」
「……閉じてないわ」
「俺を見ろ」
「見てる」
「ツェツィーリア」
声が震えている。
あの、いつも強かった人の声が。
「お前は俺の番だ」
ツェツィーリアはしばらく彼の顔を見た。
そして、少しだけ笑う。
「今さら……そんなこと、言わないでください」
「違う」
「……」
「違うんだ」
レオンハルトがツェツィーリアの手を握る。
「番だからじゃない」
強く。
「俺がお前を愛している」
聞きたかった。
ずっと。
聞きたかった言葉。
なのに、どうしてこんなときに。
「……遅いわ」
「ああ」
「本当に」
「ああ」
レオンハルトの顔が歪む。
「すまない」
「……」
「すまなかった。俺が間違っていた」
「……うん」
「だから」
強く抱きしめられる。
「死ぬな」
「……」
「頼む」
レオンハルトが、そんな言葉を使うことを初めて知った。
「何でもする。お前が望むことは何でも」
「……」
「だから、生きろ」
声が崩れていく。
ツェツィーリアはゆっくり手を動かした。
レオンハルトの頬へ。
けれど届かない。
途中で力がなくなった手を、彼が掴んで自分の頬へ当てる。
「冷たい」
レオンハルトが呟く。
「ツェツィーリア」
「……レオンハルト」
「ああ」
「私」
息が苦しい。
それでも、言いたかった。
「あなたに会えて、幸せだったわ」
「やめろ」
「十五歳の私に」
「やめろ」
「優しくしてくれて」
「ツェツィーリア」
「ありがとう」
「そんなことを言うな!」
レオンハルトの声が響く。
けれど、もう少し遠く聞こえた。
「あなたを、好きになれて」
よかった。
本当に。
苦しかった。
たくさん泣いた。
それでも。
好きだったことまで、後悔したくなかった。
「……どうか」
「言うな」
「お幸せに」
「嫌だ」
初めて、レオンハルトがはっきり拒んだ。
「お前がいないのに、何が幸せだ」
「……」
「そんなものはいらない」
ツェツィーリアは少しだけ目を細めた。
「わがままね」
「そうだ。俺がわがままなのは、お前が一番よく知っているだろう」
「ふふ……」
もう、声を出すのも難しい。
それでも最後にひとつだけ、言いたかった。
「レオンハルト、大好きよ」
レオンハルトの瞳が、大きく揺れた。
「……ああ」
ツェツィーリア。
そう名前を呼ばれた気がした。
その声を最後に、世界が静かに暗くなった。
「ツェツィーリア?」
返事がない。
「……おい」
レオンハルトが頬に触れる。
「ツェツィーリア」
何も返ってこない。
「治癒師!」
叫ぶ。
「早くしろ!」
駆けつけた治癒師が膝をつき、傷を見る。脈を取り、胸へ手を当て、魔力を流す。
「早く」
レオンハルトが言う。
「治せ」
「……」
「聞こえないのか!」
「レオンハルト様」
治癒師の顔が青ざめていた。
「治せ!」
「……申し訳、ありません」
「何を言っている」
「心臓が」
「なら動かせ!」
「もう」
「竜族の治癒術でも何でも使え! 俺の魔力を使え!」
「レオンハルト様!」
ヘルムートが腕を掴む。
「離せ!」
「もう……!」
「離せ!」
「お嬢様!」
イルゼの泣き声が響いた。
父は何も言わず、ただ娘を見つめていた。
治癒師が震える手で、ツェツィーリアの瞼を閉じる。
「……死亡を確認いたしました」
その瞬間。
レオンハルトの中から、何かが完全に消えた。
番の気配。
薬で隠されていても、本当は確かにそこにあったもの。
細い糸のように、自分と彼女を繋いでいたもの。
それが、切れた。
「……嘘だ」
レオンハルトは呟いた。
「ツェツィーリア」
腕の中の少女は、眠っているようだった。
淡い金髪。
閉じられた薄青の瞳。
頬には、まだわずかに温もりが残っている。
「起きろ」
返事はない。
「俺は」
声が震える。
「まだ何も」
伝えていない。
謝った。
愛していると言った。
けれど、それだけでは足りない。
これから何年でも、何十年でも償うつもりだった。
許されなくても。
遠くからでも。
彼女が笑えるように、何でもするつもりだった。
時間は、いくらでもあると思っていた。
自分は長命な竜だから。
彼女は人間だから。
だからこそ、本当はもっと急がなければならなかったのに。
「……ツェツィーリア」
返事はない。
十五歳の少女が、初めて自分を見上げた日の声が蘇る。
『私、またここへ来てもいいですか?』
何度でも来ると思っていた。
何度でも会えると思っていた。
なのに。
レオンハルトの腕の中で。
ツェツィーリアは。
二度と。
目を開けなかった。




