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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第九章 楽しい日々が帰ってきたと思ったのに……

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94.ヒロインなんですが、できる事をやりきるしかないようです


 顔を上げたクロトンが私を見る。


「怪我、治してくれたじゃない」


 クロトンがニッと笑って朝は包帯を巻いていた腕を見せる。

 絶望の色の消えたクロトンの顔に目が離せなくなった。

 

 クロトンはキーホルダーを手に取り、立ち上がる。


「ごめんね、状況が状況だったから暗くなっちゃった。らしくないね。なんとかしよう、もしかしたらアイツもこれを探してただけかもしれないしさ」


 そして、私に手を伸ばした。


「それに、子どもの躾をするのはママの役目だからね」


 クロトンがそう私にウインクをしながらお茶目に笑う。

 それを見て、自然と笑みが溢れた。

 

 私はクロトンの手を取り、同じように立ち上がる。

 そして、2人でエリオントを見つめた。


「大暴れしたアイツにお仕置きだ、今日はおやつ抜きかな」


 おどけた調子だが、顔は真剣そのものでエリオントを見つめている。


 私も覚悟を決めた。

 正直、少しどころじゃなく怖い。火を吹くドラゴンに、絶え間なく降り注ぐ魔法の中を行くなんて。


 でも、エリオントが死んでしまったりする方がずっと怖いからこの歩みは止めてはならない。


 頬をパンッと勢いよく叩き、ぐっと拳を握る。


「怪我をしたら任せて、私が絶対治すから!」

「あはは、頼もしいね。実績もバッチリだ」


 クロトンがいつもの調子で明るく軽く笑う。


「よし、行こう」


 クロトンが、そう言うと私達はエリオントの元へ走り出した。


***


「ローラン、セージ、ヴィオレ! ごめん、僕も参戦する!」


 クロトンと私がやってくると、少し疲れた表情をしている3人が振り返った。

 そして私を見るなり、ヴィオレは怒鳴る。


「おい、お前は避難しとけって言ったろ! 戦力外だ、さっさと逃げろ馬鹿!」


 ビリビリと身体が痺れるほどの口調だった。

 ローランとセージも同意なようで、私を黙って見つめる。


「ごめん、私だけ避難するってやっぱり出来なかったの。私だって怪我を治したりできるよ。みんなに何かあった時、すぐに助けたかったの。それに、これ」


 クロトンが私の代わりに三人の前でキーホルダーを見せた。


「コルザとミルティーユから聞いたの。エリオントは最初、ここに来ただけだったのを生徒たちが驚いて攻撃魔法を向けてしまったって。混乱したエリオントのことも、なんとかしたくて……」

「甘いことを言うな!」


 私の言葉を遮り、セージが怒鳴る。

 そして、乱れた髪をかき上げながら、苦々しい顔で苦しそうに言葉をつづけた。


「今、ローランが指揮をとって、エリオントをどうにか弱らせておとなしくさせ、ファビアン先生に拘束魔法をかけてもらう算段で動いていたんだ。それでさえ、これだ」


 セージが次々と保険医の元へと担がれて移動していく生徒や教師たちを指し示す。

 頭に瓦礫が当たったのか頭から血を流す生徒。魔力切れでフラフラの生徒。火傷をした腕を痛そうに抱えながら走っていく教師。その人たちに肩を貸しながら、なんとか保険医の元へ連れていく生徒たち。


 悲惨な状況に、私たちは言葉を続けられなくなった。

 ローランが疲れを感じさせるが柔らかい口調で私たちに優しく諭し始める。


「僕たちだって、エリオントを救いたい気持ちは一緒だよ。でも、実際かなり厳しそうだ。もうすぐ王国の軍もこちらに到着する、その前に何とかしたかったんだけど……。もう、見えてきてしまった」


 ローランが学校を取り囲む壁の崩れから見える軍隊を指差した。

 

「国民の命、安全が第一だ。だから、彼らがここに到着したら。きっと一発で仕留められる」


 クロトンの顔からさっと血の気が引く。

 結局、何もできないのか。

 私とクロトンは顔をうつむけ、ぐっと唇を噛むことしかできなかった。


「でも、まだ彼らは到着していない」


 しかし、そんな中ローランの声色がいつもの凛として強く真っ直ぐな声に戻る。

 私たちは顔を上げて、ローランを見た。

 ローランは真面目な顔をして、私たちを見返した。


「何か手はあるんだろ?」

「あ、いや……それは実はなくて」

「ねぇのかよ!!」


 ヴィオレが全力で突っ込む。

 そこをクロトンが少し前に踊り出て、必死に説明を始める。

 

「これ、アイツの大のお気に入りなんだ。もしかしたら、これを探しているのを邪魔されていると感じているのかもしれない。どうにかアイツを一瞬でも落ち着かせられたら、これを見てくれたら、僕を見てくれたら」

「時間がない、やってみよう。思いついたこと、なんでもできる限り全てやりきるしかない」


 ローランがそう言い、皆で再びエリオントを見つめる。

 エリオントは他の生徒や教師達に火を吹きながら威嚇していた。


「ファビアン先生、クロトンをエリオントに近づけます! もしかしたら落ち着かせられるかもしれないものがあります!」

「わかりました! 援護します!」


 ローランが空を飛びながらエリオントと応戦しているファビアン先生にそう大声で伝えると、すぐさまそのように返ってきた。

 さすが、帝国一の魔法教師。なんでも合わせられるということなんだろうか。


「僕たちはとにかくエリオントの動きを止める、クロトンはエリオントとの接触を試みてくれ。アイリスは重傷者がいるようならもう手当に当たってくれ。じゃあ、行こう!」


 ローランの掛け声で、私たちは一斉に動き出した。


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