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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第九章 楽しい日々が帰ってきたと思ったのに……

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92.ヒロインなんですがダメヒロインなりに頑張ろうと思います


 戦力外通告に一瞬呆然となったが、すぐに気持ちを切り替え、周りを見る。

 しかし、外には避難誘導すべき生徒は見当たらない。

 とりあえず、もし校内にいる生徒がいたら声をかけながら私も避難場所に行くしか無さそうだ。


 私はエリオントと激しく攻防する皆を背に、校舎へと走り出した。

 影響のありそうな箇所の校舎を走り回ってみるが、幸い生徒達は居ないようだ。誰かいたら危ない、と息を切らしながら走っていたから足はガクガクだし、肺は苦しい。

 とにかく、私も避難場所へ急ごうと小走りで避難場所へと向かった。


 探している間にも、揺れや建物にエリオントがぶつかったり魔法が当たったかのような音が鳴り響いていた。

 皆怪我をしていないか、大丈夫か。安否が気になり、何度も後ろを振り返りながら走っていると途中でミルティーユとコルザに遭遇した。


「アイリスちゃん!」


 怯えたような不安そうな顔をしている2人が私を見た。

 私は2人の手を取り、避難場所の方へと引っ張る。


「2人とも、エリオントが……ドラゴンが来て危ないから避難場所に行こう!」

「う、うん。実は、私達が外で発生練習してる時に来て……」


 コルザが言い淀みながら、一生懸命に伝える。

 その間にもエリオントとの戦いの轟音が校舎に鳴り響いていた。

 一際大きく音が鳴り響き、私はパッとそちらを見る。今の音はなんだったんだろう、皆は大丈夫だろうか。


 そちらに一瞬気を取られている中、ミルティーユが俯いていた顔を上げて、意を決したように告白をした。

 

「実は、ドラゴンが迷い込んだ時に、驚いて攻撃魔法をかけた子が複数居たんです」

「そう。それで、あっという間にこんな事に……最初、あのドラゴンも全然攻撃的ではなかったんだけど……どうしよう。一番最初に攻撃したのは、うちの男子部員で。その後すぐにパニックになっちゃって」


 青ざめながらそう話す2人。

 そうか、大体の事情や流れが分かってきた。

 エリオントはもしかしたら、クロトンを探しにきたのかもしれない。そこを攻撃されてパニックになって……。


 途端にあの生意気な子どものドラゴンが可哀想になる。

 私は2人の話を聞きながら、本当にこの選択がエリオントの為になっていたのか悩んでしまった。

 どうにかエリオントを落ち着かせる方法はないのだろうか。


 そう悩んでいると、コルザがぎゅっと手に握っていたものをパッと目の前で広げて見せた。


「あと、ごめんなさい。驚いて握り締めてきちゃった。これ、ドラゴンの首についてたの。ぬいぐるみのキーホルダー。攻撃した時に外れちゃったみたいで、私の顔に飛んできて」

「あ、これ……クロトンが星燈祭で貰ってたやつ……」


 クロトンが貰っていたドラゴンのぬいぐるみキーホルダー。

 それをコルザに手渡され、少し汚れたキーホルダーを見つめる。


『可愛いからアイツに持ってってやろうと思って。この星もそのうち金色に塗られたのがいっぱい出てくるかもね』


 これを持ってってやろう、と嬉しそうに笑っていたあの時の嬉しそうに笑っているクロトンが脳裏に過ぎった。

 

 ……やっぱり、戻ろう。

 戦力外通告されたけど、エリオントや皆の怪我もすぐに治せるのは私だけだ。

 それに、事情を知ったら尚の事、エリオントの事を放っておけない。


「ごめんね、2人とも避難場所まで行ける? ここを真っ直ぐ行けば分かると思うから」

「う、うん」

「私、やっぱり戻る」


 私は2人に背を向け、轟音のする方を見据える。

 なんで戻ってきたんだ役立たずなのに、みたいな顔されちゃうかな。

 でも、エリオントが心配だし。


 それに、私はまがいなりにもヒロイン!

 きっと私がいる事で解決する何かがあるかもしれない。

 多分! ……自信ないけど。


「気をつけてね」

「本当にごめんなさい、アイリス様」


 演劇部の部長であるミルティーユが責任を感じているようで、暗い顔で私に頭を下げる。

 相変わらずの責任感の強さだ。

 私は俯くミルティーユの肩にそっと手を添えた。


「ううん、ミルティーユも悪くないよ。ドラゴンが急に現れたらパニックになるのも分かるし。きっとなんとかなるから。ね、だから早く避難してね」


 そう微笑むと、うるうるとした涙目で何度かこくこくと頷いた。

 私はまた、あの現場へと走り出す。沢山走ってきてへとへとだったはずの足が、先ほどよりも強く速くエリオント達の元へと向かっていった。


読んで頂きましてありがとうございました。

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