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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第九章 楽しい日々が帰ってきたと思ったのに……

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90.ヒロインなんですが、新学期早々巻き込まれております


 冬季休暇明け。

 今日は朝早くに生徒会室に集まり、挨拶の時間と簡単に休暇明けの学園生活に関する会議の時間が設けられる。


 いつもよりかなり早くに起きて、庭園を爽やかに軽くランニングし、朝ごはんを食べる理想の朝の時間を過ごした私も、いつもよりずっと早くに家を出た。


 休暇明け。葉の上の水滴がキラキラと輝く爽やかな朝。

 きっと素敵な学園生活がまた始まるのだ、そんな予感で胸を躍らせる。

 心なしか馬車から見える外の世界もキラキラと輝いて見えた。


 学園に着き、私は人のまだそれほど居ない学園内を歩いて生徒会室に向かった。

 遠くから発生練習の声が聞こえる。演劇部の皆が早速朝の練習をしているのかもしれない。


 素敵な朝だなぁ。


 そんな事を思いながら、ようやく生徒会室の前まで来た。この早さならもしかしたら一番乗りかもしれない。

 私は勢い良くドアを開けた。


「おはよう!」


 きっと返事は返ってこないと思うが、爽やかに挨拶をしながら生徒会室に入る。


「あぁ……おはよう、アイリス」


 どよん、とした声が返ってきた。

 人が居た事も驚いたが、もっと驚いたのはこの暗い声。私は声のした生徒会室のソファまで小走りで近づいた。


「ど、どうしたの? クロトン」


 クロトンはどんよりとしたオーラを纏いながら、げっそりとした顔で私を見た。

 目の下には隈もあるし、腕には包帯も巻いている。


「え!? 怪我したの? 大丈夫?」

「あぁ、うん。大丈夫。いや、さ……昨日までエリオントの相手をしていたんだ。それが、帰る間際にママ〜ママ〜って叫んで……あぁ、いやママって鳴くから僕を呼んでいるのかただ嫌がって鳴いてるのかはアレなんだけど、明らかに僕から離れるのを嫌がってるのを無理やり離れるのがかなり大変で……」

「それは……お疲れ様でした……」


 この包帯の傷はその時のものらしい。

 休暇を休暇として休めていない顔をしたクロトンの隣にそっと座った。

 それにしても、エリオント。久々に沢山ママ……いや、クロトンと一緒に居られた事が余程嬉しかったのだろう。

 痛々しく包帯に包まれた腕をそっと、触る。クロトンはビクッと身体を震わせた。


「ね、傷……見せてもらえないかな?」

「え、うん……でも、なかなかすごい見た目してるからやめた方が……」

「そんな重傷なの!? 尚の事見せて」

「う、うん……びっくりしないでね」


 クロトンはそう言うと、ゆっくりと左手で右の包帯を解き始めた。すると、ガーゼが貼ってあり、さらにそれを取ると少し深めの長い引っ掻き傷が現れる。これはもしかしたら、張り付いたエリオントを無理やり引き剥がす時に出来たのかもしれない。


「うわ、痛そう……」

「ね、まぁ神経までいってないって事で普通に動かせるみたいで良かったよ」

「そうなんだね、でもまだこれだと痛いよね」


 私はクロトンの腕にそっと手を当てて、光魔法を使った。

 クロトンは、「え?」っと驚いたような声を上げていたが、されるがまま大人しく私の光魔法を受けている。

 優しい光に当てられた腕の傷をみるみる内に回復し、すぐに回復した。


 腕の傷が治ると、クロトンは目をぱちくりと何度も開け閉めし、手を振ってみたりグーパーと何度も手を開いては閉じる。

 そして、キラキラとした笑顔で私を見る。


「アイリスありがとう! もう全然痛くないよ、本当に光魔法の聖女様なんだ! うわぁ、すごい。なんか興奮しちゃうな、本当にありがとう!」

「ううん、良かった。痛いのがおさまったみたいで」

「おさまったどころじゃないよ、調子良いくらいだ!」


 クロトンが立ち上がり、何度も腕を振っている。

 嬉しそうなクロトンと笑い合っているところに、生徒会室のドアがまたガチャリと開いた。


「はよ〜……どうしたんだ? お前ら」


 私とクロトンの様子にヴィオレを先頭に部屋に入ってきた三人が足を止めた。


「あ、ヴィオレ。それにセージやローランも。おはよう。今さ、エリオントがつけた傷をアイリスが治してくれて!」


 クロトンが興奮しながら治った腕を見せて話す。

 クロトンの言葉に驚いたローランが心配そうに顔を歪めた。


「エリオントが? 大丈夫だったのかい?」

「あぁ、僕に帰ってほしくないってしがみついた時にできた傷だから。まぁ傷つけた本人が一番びっくりしてたみたいだけど」

「そりゃ大好きなママ傷つけたらね」


 私にはひどく生意気な態度を取っていたエリオントが、しゅんとしている様子をしている姿を想像すると可愛らしくて思わず苦笑した。


「エリオントも随分成長したようだから、大変だっただろう」

「うん、もうだいぶ大きいからね。とはいえ、まだまだ気持ちは子どもだから職員の人も大変だって言ってたよ」


 ローランが心配した様子でそうクロトンに声をかけると、クロトンは苦笑しながらそう答えた。


 そうか、もう大きくなってきたのか。あの生まれた頃から考えると、大体3ヶ月くらいか。子犬でもだいぶ大きくなってるし、ドラゴンもかなりの大きさになってるのかな。

 まだ子どもで慎重な時期だから、と職員の方々以外だとクロトンとクロトンのお父様くらいしかエリオントに会っていないから、全然想像がつかない。


「ねぇ、どのくらい大きくなったの……キャア!!」


 急にドォンッという爆発音かのような大きな音と、激しく揺れる校内。

 私は咄嗟に耳を抑える。しかし、あまりの揺れに耐え切れず、その場に倒れそうになる。それを、近くに居たクロトンが支えてくれた。

 複数の生徒の悲鳴も聞こえ、私達は音のしたであろう方向を同じように見た。


「何かあったみたいだ、行こう!」


 ローランが焦りながらそう指示をし、私達は音のした方へ走り出した。


読んで頂きましてありがとうございました。

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