82.ヒロインなんですがリア充爆発しろと思ってもいいですよね
「いやー、でもあっちもこっちも色々目立ってきましたねぇ」
コルザが乾いた笑いを漏らしながら、ホールに目を向ける。
コルザが向けた目線を追わずとも目立つカップルとカップルとカップルとカップル。星燈祭パワーでたくさんの恋人たちが誕生している。
うっとりとした瞳で見つめ合い、お互いの星輝石を大事そうに握っているのを私たちはじっと見つめた。
「なんかここまで沢山いると独り身が物悲しくなるわね」
「わかりませんよ、周りの雰囲気に当てられて春の花祭りにはお別れしている人も多いですから」
「ミルティーユ、さっきから感情のこもってない目してるね……」
女三人で物悲しい会話をしつつ、お皿に取ったご馳走を皆で一斉に口にはむっと思い切り入れる。
コルザが大きなため息をつきながら、天を仰いだ。
「なーんかもう物悲しいというか、寂しいというか、うらやましいというか。なんていうんだろう、この感情」
「それはリア充爆発しろ、だね」
「なんですか? それ」
「あ……」
しまった。これは前世である日本のスラング。
リア充とか言っても二人には通じないだろう。まぁ、日本でももうほとんど死語扱いだけど。
なんて答えれば良いのか、私は迷いながらも二人には優しい表現で説明をした。
「いやね、たしかどこかの本で読んだ気がするんだけど……カップルに対して思う複雑な感情を抱えるのってもやもやするから、カップルは爆発して消えて見えなくなってくれみたいな意味のスラング……かな?」
「へぇ、外国の本でしょうか」
「うん! たしかそう!!」
ミルティーユの質問に乗っかり、ビシッと指を差しながら肯定をした。
良かった、これでうまく誤魔化せたようだ。
「へぇ……博識だねアイリスちゃん!」
コルザの尊敬のまなざしにぐっと罪悪感を感じるが、仕方がない。
さらりとたまに前世の言葉を出してしまう事、気を付けなければ……。
「なんか、でも物悲しいから、私は……はい!」
コルザはそう言うと、こっそり隠し持っていた星輝石を2つ取り出した。
「私たちも参加しよ! はい、これ二人に」
そう言ってコルザは私とミルティーユに柔らかい黄色に輝く星輝石を手渡してくれた。
「え?」
「だってさ、大切な人に渡すんでしょ? それなら、こういうのも良いんじゃないかなって思ったの。せっかくだし、参加したいじゃない?」
私はコルザから手渡された優しく輝きを放つ星輝石を手の平の上に乗せ、見つめた。
友チョコならぬ友星輝石。
まさか自分が星輝石をもらえるとも、コルザに星輝石をもらえるほど大切な人と思ってもらえていたことも嬉しくて、胸がぎゅっと熱くなる。
「あの……実は、私も同じことを考えていまして」
そう言うと、私の手の平にそっと強い赤の輝きを放つ星輝石をミルティーユが乗せてくれた。
ミルティーユはコルザにも星輝石を渡す。コルザは頬を高揚させ、跳ねながら喜んだ。
「嬉しい! 大切にするね」
「私も二人からもらえてすっごく嬉しい! ……でも、ごめんね。私、用意できなくて。私も星輝石を輝かせられたら二人に渡したかったな」
「その気持ちだけで嬉しいです。それに、星燈祭は毎年学園でしますし、国でも毎年行われているのですから、機会なんて沢山ありますよ」
「そうそう! 楽しみにしてるね、アイリスちゃん」
ミルティーユとコルザにそう優しく微笑みを向けられる。来年以降の星燈祭も、卒業してからも続いて行くという内容の示唆に私は胸と目が熱くなっていく。
今世でも、こんなにも素敵な友達が出来て本当に良かった。私はぐっと気持ちをこらえながら、二人にありがとうと笑顔を向けた。
生徒に配られる星輝石は一人に付き2つ。
1つは交換用。もう1つは学園の大きなもみの木に飾るようだ。
となると、二人はもう2つの星輝石を使ってしまった事になるから、もみの木に飾ることができない。
「でも、飾るように配られたものも貰っちゃう事になっちゃうね。良かったの? 二人とも……あ!」
私は思い出した。
「これ、良かったら使って」
私は輝かせられずに持て余していた自分の分の星輝石を二人に手渡した。
「え、いいの? アイリスちゃん」
「うん、二人みたいに輝いてなくて申し訳ないんだけど、良かったら使って。もみの木に飾ってよ、二人の輝きも飾られるの私も楽しみなんだ」
私はそう言って二人に笑顔を向けると、二人は嬉しそうに笑い、それぞれ持っていた小さなパーティー用バックに好感した星輝石達をしまった。
「もしかしたら、一人2つって制限も取っ払った方が良いのかな。こういうこと出来ないよね」
「いえ、こっそり複数の人間に渡す人が必ず出ますよ」
「ミルティーユ、さっきから恋人たちの愛を信じていないんだね……」
ミルティーユの黒い笑顔を見ながら、私とコルザが声を出して笑った。
賑やかな星燈祭の中、後ろから声がかかる。
「失礼……アイリス、ようやく見つけたよ」
聞き慣れた彼の声。
ミルティーユとコルザは彼を見るなり、ハッとした顔をして顔を見合わせた。
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