81.ヒロインなんですが乙女ゲームイベントなのに女の子達と盛り上がってしまいました
「アイリスちゃん!」
「コルザちゃん、ミルティーユ!」
コルザと手を重ね合わせて出会えた喜びを分かち合う。
ミルティーユが私たちの様子をふんわりとした優しい笑顔で少し後ろから見つめていた。
「生徒会の皆さん、こんなに準備されるの大変でしたよね。ありがとうございます。素敵な星燈祭を運営してくださって」
ミルティーユがそう言って、礼儀正しくお辞儀をしてくれた。
いつもの三つ編みではなく、アップのお団子ヘアにしていて大人びて見える。耳に揺れる星のイヤリングをしており、星燈祭らしくとても美しい装いだ。
対してコルザは黄色い小さな星のレースがドレスの裾にあしらわれた可愛らしい黄色とオレンジのドレスだ。明るい色がコルザの明るい性格を表しているようで、とてもよく似合っている。
コルザも手を握ったまま、弾んだ声でお礼を言った。
「ほんとほんと! 会場入ってあまりに綺麗だったからびっくりしちゃった、ありがとうアイリスちゃん」
「えへへ、ありがとう。皆で頑張ったんだ」
こんな風に直接お礼を言われると照れてしまう。
準備が慌ただしくて髪型が少し崩れてしまったとか、お化粧が擦れてしまったかもとか気になっていたけど、そんなことも誇らしく思えてきた。
「装飾があまりにも美しく洗練されているんですが、この装飾の案は誰が考えたんですか?」
「昨年までのがベースではあるけど、クロトンが主に考えて担当してたよ。舞台みたいにこういった装飾を考えるの得意なんだって」
「そうですか、やはり……さすがクロトン様ですね。今度相談してみようかな……」
そう言うと、装飾をじっと見ながら何やら考え込み始めるミルティーユ。
そんなミルティーユを見て、コルザと顔を合わせて大笑いしてしまった。コルザはミルティーユの背中をぽんっと叩き、思考の世界から現実へ戻るように促す。
「もう。こんな日くらい、真面目な顔をして劇のことを考えるのはやめなよ! それより、あれよあれ」
コルザは意味深な顔をしながら、指を差した。
私とミルティーユはコルザの指し示す方向へ、目線を向ける。
そこには輝く星輝石を交換しながら、顔を赤らめている二人の男女がいた。
「二人はさ、星輝石をあげたい人、いないの?」
コルザは目を輝かせながら、私たちに尋ねた。
星輝石をあげたい人……ねぇ。そもそも輝かせられないからあげるも何もないんだけど。でも、もし輝く星輝石を交換するなら、いったい誰が良いんだろう。
「私は、いませんね……。そういうコルザは?」
「私も居ないから聞きたかったの! 人のそういう話面白いでしょ?」
ワクワクとした表情ではしゃぎながら言うコルザ。
どうやらせっかくの乙女ゲームイベントなのに、皆そういった事には縁遠そうだ。私はそんな二人の様子が面白くてくすくす笑っていると、次は私に話題が回ってきた。
「ねぇ、アイリスちゃんは?」
「えっと……実は、私星輝石をうまく輝かせられなくて……」
「え、そうなの?」
「うん、力を入れると弾け飛んじゃって……」
「魔力が多すぎるのかもしれませんね。光属性の魔法、多すぎる魔力……アイリス様のお話は神秘的過ぎて劇の参考になります」
「もう、だから劇の事から頭を放しなさいって。だから、星輝石をあげたい人の一人や二人見つからないんだよ」
「なっ……、それを言うならコルザだって一緒でしょう」
「私はいいの」
コルザの言い分に反抗するミルティーユをさらりと受け流した。
二人は本当に仲が良いな、と感心していると、二人の後ろからコツコツとヒールの音を鳴らしながら、女の子が近付いてきた。
露出の高い赤いドレス。胸元は大きく開き、太ももにまでかけてスリットも深く入っている。星をイメージしているのか、赤いドレスの生地にはたくさんの小さな宝石が散りばめられていた。
ハニーブロンドの髪を魅惑的になびかせながら、こちらへやってきて目の前でぴたりと止まった。
「あら、ごきげんよう。皆さん、壁の花になっていらっしゃるの? 勿体ないわね」
彼女の声に、げっという顔をしたコルザとミルティーユ。
顔を普通の表情に戻してから、二人は振り返り、彼女に対峙した。
「星燈祭おめでとう、アマリリス」
「素敵なドレスね」
先ほどとは違う繕った笑顔をしている二人に戸惑っていると、アマリリスは私に気が付いたようで、顔を輝かせながら優雅に美しくお辞儀をした。
「まぁ、アイリス様。はじめまして。私、二人と一緒に演劇部に入り、よく主演女優を務めさせていただいているアマリリス・アンペリユーです。以後、仲良くしてくださいね」
赤くひかれた唇をキュっと上向きにし、自信たっぷりな笑顔を私に向ける。
うむ、なるほど。二人の苦手そうなタイプだ。
「アマリリス、どうしたの? こんなところに来て」
「いえね、二人がこんなに広い会場の端にいらっしゃるのを見て、気になって来てみたの。良かったら、殿方を紹介しましょうか? さきほどから、こんなに星輝石を渡されて困っているの」
「ううん、大丈夫よ。楽しんできて、アマリリス」
「ま、私はグライユルにしか渡すつもりはないんだけどね」
「うふふ、また私達の話を聞かないで自分の話をされていますね」
ミルティーユが小さく毒を吐くも、アマリリスの耳には入らないようだ。
一頻り自慢話をし終わると、では失礼っと言ってドレスと髪をひらりとなびかせながら、会場の中心へ戻っていった。嵐のような人だ。
「ごめんね、アイリスちゃん。悪い子じゃないんだけど、あんな感じで」
「なんであんな人がいいんですかね。殿方の見る目には本当にがっかりします」
「わぁ、ミルティーユのそんな黒い笑顔初めて見た。何かあったの?」
「うーん……」
ミルティーユは冷たい眼差しでアマリリスの後ろ姿を眺め続けている。コルザはミルティーユに聞こえないように、私の耳にこっそりと事情を話してくれた。
「見たらわかると思うけど、アマリリスって結構自分中心で。劇の内容についてミルティーユとぶつかる事が多いの。極めつけは学園祭の時のオルキデなんだけど、クロトン様に断られる前はアマリリスがオルキデ役に内定しててね。ちょっとそこから更にあんな感じなんだよね」
少し困ったような笑みを浮かべるコルザ。
コルザは優しくて明るいし、場の雰囲気を大事にするタイプだから、間に入っていろいろ苦労したのかもしれない。
私はコルザの耳元で「大変だね」と小さく声を返した。コルザは笑いながら頷く。
集団生活って小さな衝突が生まれやすいものだけど、演劇部の熱量だと更に色々あるのかもしれない。いつも明るくて優しくて誰とでも仲良くなれるコルザの背景が少しわかった気がした。
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