78.ヒロインなんですが初めての星燈祭に感動しています
輝きを徐々に放っていく星輝石。
星輝石は目が開けられないほどの輝きを放っている、いつまで魔力を注ぎ込めば良いのだろう。
私はあまりの眩しさに目を閉じながら、魔力を注ぎ続けた。
そこに、ローランが私の握った手をさっと下に下ろし、止めるように促す。
「アイリス、もう大丈夫だ。目を開けて」
爆発音は聞こえてこなかった。という事はつまり……。
私がゆっくりと目を開くと、先ほどまで輝いていなかったはずの星輝石が眩いほどの光を放っている。
「金色だ! 金色の輝きだ!」
「ソレイユ王国に黄金の時代が訪れるぞ!!」
わぁ、と地響きを感じるほどの大きな歓声が沸き上がる。
そう、ゲームのヒロインアイリスのような真っ白な輝きではない、黄色を帯びた美しい黄金色に星が輝いている。
ローランと私の魔力が混ざったのだろうか。
私は輝きを放つ星輝石のあまりの美しさに、目を奪われていた。
「ほら、やっぱり成功した! 弾け飛んでしまうなら、星輝石の方を大きくしてみたらどうかなって思ったんだよね」
そんな中、ローランは嬉しそうに声を弾ませて、子どものような笑顔で私を見つめる。
いつも少し大人びた表情をしているから、少し驚いた。はしゃいでいるローランを見て、苦笑しながらローランを窘める。
「殿下、今回は流石に見切り発車過ぎますよ」
「あはは、それに……アイリスは自分の事よりも、他人の事に一生懸命になる子だからね。絶対ここは成功させると思ったんだよ」
「殿下……」
「ローランね」
うまくいったのは結果論な気もするけど、でも皆のこんなにも嬉しそうな笑顔が見られて良かった。
ステージの下では待機していたクロトン達が、私たちに小さく手を振っている。皆の嬉しそうな様子に、星輝石を輝かせることに成功した実感をじわじわと感じていった。
いよいよ、この大きな木に私と殿下の星輝石と皆の魔力が注ぎ込まれた星輝石が木に飾られていく。
目の前の巨大な星輝石が複数の風の魔法使いにより、木のてっぺんへ押し上げられ、固定されていくのをただじっと見ていた。
木の下では皆が集まってそれぞれ木に星輝石を縛り付ける。星型の先端に紐がついていて、くくりつけられるようになっているのだ。
クロトンは高い位置に飾りたいと言っている子どもを見つけると、風の魔法で高くまで飛び上がり、木に星をつけてあげていた。降りるたびにその子のご両親から嬉しそうにお礼を言われており、そのまま次の子への対応に入る。クロトンも風の魔法使いと同様に働いていた。
ヴィオレはというと、持ち前の運動神経を活かし、ぴょんぴょんと木の上に登って、同じように子ども達の星を飾ってあげていた。
しかし、この世界で魔力を持つものはほとんどが貴族のはずだ。稀に国民にも魔力を持つ者が出るらしいけど。
明らかに貴族ではなさそうな人々が輝く星輝石を持っていて不思議に思いながら眺めていると、魔力を注げる国民も一部いるが、ほとんどは星燈祭に参加した貴族が吹き込んだ魔力の星輝石を皆に配っているとセージが説明してくれた。
なるほど、だからこんなにも国民が楽しめるイベントになっているのか。
セージもクロトンやヴィオレの周りに集まっていく子ども達の列を整理し始めた。結局、ここでも仕事をしてしまっている生真面目な三人を見て、くすりと笑みが零れた。
その三人と運営の方々のおかげで木には次々に星が飾られ、どんどん美しく輝いていく。
「綺麗ですね……」
「うん、皆の輝きが込められているからね」
私とローランは顔を見合わせて笑う。
ローランがそのまま嬉しそうな……しかし、少し切なさそうな瞳でじっと私を見つめるので、どうしたんだろうかと見つめ返していると、そのまま私の瞳をじっと見つめながら口を開いた。
「ずっと、君と見たかったんだ」
「え?」
私が聞き返すと、ローランは困ったように笑う。
「幼い頃に、約束したんだよ」
「そ……うでしたっけ、ごめんなさい。私初めて殿下と会えた時、あまりに緊張しすぎてよく覚えていなくって」
そう私が謝ると、ローランはしばらく黙ったまま、少し寂し気な顔で俯く。いつものローランなら笑って仕方ないなと言ってくれると思ったのに、思っていた反応と違って戸惑ってしまった。
どうしたら良いのか分からないまま、しばらくローランを見つめる。するとローランは顔を上げ、星輝石の輝く木を一瞥すると、キラキラと金髪の髪をなびかせながら、こちらに視線を戻す。そして小さな声で呟いた。
「ようやく一緒に見られたね、アイリス」
――今年、一緒に星燈祭に行こうよ!
また声が頭の中に響いた。
今度は前に聞こえてきた声と違う声に聞こえた。
なんだろう。最近こんな事が度々ある気がする。
違和感というか。ゲームで何度もやっているから、こんな変な事が起こるのだろうか。
もしかして、ローランが何か知っている……?
ローランはもういつもと変わらない穏やかな笑みをたたえながら、木を見ていた。ローランに話しかけようとした時、ちょうど大きな声で遮られる。
「殿下、あの……」
「いやーつかれたー!!」
ヴィオレが大きく声を上げて、クロトン達と一緒にこちらへやって来るのが見えた。
私は口を止め、そちらに体を向ける。
「皆、お疲れ様。大人気だったね」
「ね。なんか列出来ちゃったから、抜けられなくてさぁ」
「列を作って途切れなくさせちまったのは、セージだけどな」
「あのまま放置すれば混乱するだろう。最適の対応だった」
「うん、ありがと。僕は楽しかったよ。ほら、お礼にってこんなのもらっちゃったし」
そう言うと、クロトンはドラゴンが嬉しそうに星を抱いている小さなマスコットキーホルダーを目の前に見せてくれた。
「わ、可愛い! そうか、ドラゴン流行ってるもんね」
「金色の星輝石に繁栄をもたらすドラゴン……なんだか今年は幸先良いね。可愛いからアイツに持ってってやろうと思って。この星もそのうち金色に塗られたのがいっぱい出てくるかもね」
「ママしてるねぇ……」
クロトンが母性溢れる笑顔で愛おし気にキーホルダーを見つめていて、笑ってしまった。
最初はあんなに文句を言っていたし、帰ってきた時もあんなにげっそりしていたのに、十分にドラゴンを愛しているらしい。
「さ、お祭りはここからだよ。せっかくだし、楽しもうか」
ローランはそう言うと、私に腕を差し出した。
私はその腕に手を置き、うん! と返事をする。
その日、街は沢山の笑い声で溢れていた。
星輝石の輝きに照らされて、ソレイユ王国の美しい1年の締めくくりが始まったのである。
次は学園の星燈祭。こちらもうまくいくといいな……。
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