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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第八章 大好きなイベントが始まると思ったのに……

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77.ヒロインなんですが攻略対象のせいでピンチです


 先ほどより暗闇が深くなった。

 辺りが暗くなってきてから、星々の輝きはより光を放っているように見える。

 私たちは王立公園の中心にある、大きな木の前にやってきた。

 親の顔より見た風景。実際にはこんなにも大きい木だったのか、と首が痛くなる程木のてっぺんまで見上げる。

 

 ローランが木を熱心に見つめる私をくすりと笑いながら、説明をする。

 

「アイリス、ここが点灯式の会場だよ」


 知ってます。なぜなら、このイベント何百周もしたので。


 点灯式は1年目は陛下。二年目は王妃様。三年目はローランがされていた。

 その点灯式を見ながら、攻略対象と星燈祭のデートをしていく。今回は一年目だから、陛下が点灯式を執り行うはずだ。

 

 王妃様にはローランと初めて会った際にお会いした記憶があるが、陛下の事は絵でしか見た事がない。今日初めて陛下に会えるのかもしれない。

 私がそわそわと周りを見回していると、男性がこちらへ駆け寄ってくるのが見えた。

 こちらへくるなり、ローランに礼儀正しくお辞儀をする。

 

「殿下、本日はよろしくお願いします。……あ、このお方がアイリス様ですね! 本日はありがとうございます、よろしくお願いいたします」

「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします?」


 なぜ、お礼を言われたのだろう……。


 私が首を傾げていると、ローランが何やら嬉しそうな顔で私を見ている。

 その笑顔に少し嫌な予感が過った。

 この顔は見覚えがある。ヴィオレやセージにちょっと面倒な頼み事をする時の顔だ。この顔が私にまで向けられる日が来るなんて思わなかった。

 私はローランの意図を探ろうと、恐る恐るローランに尋ねた。


「あの、殿下? なぜ、ありがとうございますなんでしょうか。私、何もしてないですよ」

「そりゃあ、これからするからだね」


 ……いや、これからって何?


 先ほどの嫌な予感が大きくなる。私が冷や汗をかきながら、ローランを見つめていると、ローランは先ほどと変わらない調子で話を続けた。


「本来私や陛下、王妃が行っていてね。せっかく女神の祝福を受けた君が魔法学園に入ったんだから、今年の点灯は君にしたらどうかって話が出ていて。ドラゴンが生まれたり、繁栄の時代を迎えそうな気配のする中で光属性の魔法で照らされる星燈祭。素敵じゃないか?」

「いえ、殿下。あの、それは私がまともに星輝石を輝かせられたらの話であって……」

「大丈夫! アイリスは本番に強いタイプだからね」


 グッと親指を立てて爽やかに笑うローランを、皆唖然としながら見つめる。

 ハッといち早く正気を取り戻したヴィオレが、素早く反論した。


「いや、ローラン。本当に無理だと思うぞ。それに、ここで弾け飛ばせてみろ。下手すりゃ怪我人だって出かねない」

「そこはセージやクロトンがいるからね。水と風の盾があれば、大丈夫だよ」

「え、僕もやるの?」


 さりげなくクロトンまで戦力として数えられていたようだ。

 急に役割が飛んできて、クロトンが戸惑っている。

 セージはもうこんな無茶ぶりにも慣れているようで、目を伏せながらただため息をついていた。


 たしかに水と風があれば、何かあっても防ぐことはできそう……じゃない! こうやってローランの無茶ぶりにいつの間にかはまっているヴィオレやセージを思い出さなければ。

 私は更にローランに反論を続ける。


「でも、それでももし失敗したら、皆がっかりします。こんなに素敵な星燈祭なのに」

「大丈夫、私がサポートするから。アイリスは私の事が信じられないのかい?」

「いや、どちらかというと私が私の事を信じていないといいますか……」


 ローランが私の手を両手で優しく握り、ずいっと顔を近づけてくる。

 綺麗な顔がすぐそばにきた事に動揺していると、セージがまた大きなため息をついて私に言った。


「諦めろ。こうなった時のローランは誰にも止められない」

「セージのその目から今までの苦労が窺い知れるよ……」


 私がセージの疲れ切った目を見て同情を感じていると、後ろから若い男性の声で声がかかった。

 

「すみません、そろそろご準備をお願いいたします!」


 あぁ、もう逃げきれない……。

 私が俯いていると、セージがぽんっと背中を叩いた。


「大丈夫だ。あの遺跡の崩れからも守れただろう。お前が弾け飛ばしたとしても、すべて防いでみせる」

「僕も。アイリスが弾け飛ばしても今まで全部風で叩き落とせてたんだし、実績あるでしょ? そんなに固くならないで」


 クロトンも私に憐みの目を向けながら、そう励ます。

 最悪、けが人が出ないなら……やるしかないか。

 私は覚悟を決めて、顔を上げた。そこに、ちょうどいたヴィオレと目が合う。ヴィオレは気まずそうな顔をして、頬を人差し指でポリポリとかきながら、何やら考えながら私に言う。


「悪いな、火じゃなんともならねぇわ。うーん……最悪あの木を燃やして誤魔化してやるから、頑張れ」

「いや、それはしなくていいよヴィオレ。ありがとう。気持ちはいただいておくよ。……ん? そういえば、皆私が失敗する前提で話してるね?」


 そう言って皆の顔を見ると、ローラン以外が素早い速さで顔を横に向け、目を反らした。

 ローランはそんな様子を見て、「ひどいなぁ、皆」とのんびりとした口調で言っている。

 いや、皆の反応が正解なだけで、ローランが楽観的過ぎるというか無謀すぎるだけだと思うんだけど……。


「さぁ、行こうか」


 ローランが私に腕を差し出した。

 エスコートをしてくれるようだ。私はその腕に渋々と掴まり、ステージの上へあがった。


***


 そう、これが今点灯式でまさに星輝石を輝かせようとしているまでの4時間の出来事である。


「さぁ、それではまもなく点灯です! 星の光輝く素敵な夜を!」


 司会の男性がそう声を張り上げると、町は一斉に明かりを消し、すっかりと暗闇に包まれた。

 私は目の前の星輝石を見て、ローランにしか聞こえないくらいのボリュームで叫ぶようにローランに訴える。


「聞いてない聞いてない! さすがに無理です!」


 そう。用意されていた星輝石は私たちの体よりもはるかに大きい大きさの星型の星輝石だったのだ。

 これを光らせて、木のてっぺんに掲げるらしい。

 そうだ、点灯式の星輝石はあの大きな木のてっぺんで大きく光り輝いていた。

 我が家の小さなテレビだと、あまり大きく見えていなかったが、冷静に考えるとこの大きな木のてっぺんであんなにも光り輝いていた星輝石が普通の大きさな訳が無かった。


「大丈夫、私を信じて」

「でも、これ流石に弾け飛んだら怪我人どころか死人まで出そうですよ!?」

「じゃあ、そうしないように頑張ろうか」

「殿下、急にスパルタ過ぎません!?」


 動揺する私の話なんて全く聞く耳を持たず、私の手を取り、肩を抱くローラン。

 焦りと混乱で私の頭の中はいっぱいだった。


「それに、ローラン」

「へ?」

「前に名前で呼んでって言ったのに、私だけずっと殿下じゃないか。名前で呼んでよ」

「今そんな事言ってる場合ですか!?」


 小声での小競り合いが続き過ぎたせいで、皆がざわざわし始めた。

 やばい、早くしないと……でも、こんな大きな星輝石を光らせるなんて……。


 ローランは私の手を先ほどより強く握った。

 私はローランの顔を見る。ローランは優しい顔でにっこりと笑う。


「ゆっくり、少しずつ力を注ぎこんで。自分の魔力を感じながら、ゆっくり。皆が喜ぶ顔を思い浮かべながら。大丈夫。私の真似をして」


 優しくそう囁きながら、握った手を星輝石の方へ近付ける。ローランの手が徐々に熱くなり、手の先から何かが流れ込んでいくのを感じる。

 星輝石がほんのりと輝き始めた。


「ほら、大丈夫。やってごらん」

「はい……」


 私はローランの言う通り、星輝石に力を込め始める。

 うまく、輝かせられるだろうか。私もローランの手をぎゅっと力強く握り返し、魔力を注ぎ始めた。

 星輝石は少しずつ輝き始める。


読んで頂きましてありがとうございました。

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