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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第八章 大好きなイベントが始まると思ったのに……

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76.ヒロインなんですが大好きなイベントの事をよく知らなかったみたいです


「さぁ、それではまもなく点灯です! 星の光輝く素敵な夜を!」


 司会の男性がそう声を張り上げると、町は一斉に明かりを消し、すっかりと暗闇に包まれた。


「聞いてない聞いてない! さすがに無理です!」


 私の小さな抵抗の声は殿下の耳にしか届かない。


「大丈夫、私を信じて」


 私の手を取り、肩を抱くローラン。

 ときめくポイントのはずだが、今はそれどころじゃない。

 ローランの良い案ってこんな事だったの!?

 焦りと混乱で私の頭の中はいっぱいだった。


 この非常事態が起こったはじまりは、約4時間前に遡る。

 

***


「わぁ、素敵……」


 空が藍色とオレンジ色の混ざった黄昏時、世界が薄暗くなっていく中で街の灯りや星の飾りがちらほらと輝き始める。

 私たちは、ソレイユ王立公園に来ていた。


 今日はソレイユ王国の星燈祭の点灯式の日。

 星燈祭が始まると、年が明ける頃まで連日、町が華やかな光に包まれ、出店が出る。

 星を模った雑貨や食品が並ぶのだ。


 本来のゲームのシナリオであれば、この星燈祭中の街へのデートにお誘いを受けるのは2年目以降のはずだけど、今回はラッキーな事に1年目から来ることができた。

 デートじゃなくて、生徒会メンバー皆で来ているけど……。

 まぁでもイベントには違いないし、ゲームのシナリオよりも早くイベントを体験するのは初めてだ。ようやく巻き返すことが出来始めたのかもしれない。


 クロトンも堅物のお父様と1度だけ来たことがあったくらいで、あまり星燈祭に参加した事がなかったそうだ。 

 きょろきょろと周りの様子を見ながら、弾んだ声で話し始める。


「綺麗だねー。でも、珍しいね。ローランとセージとヴィオレは、点灯式の運営の方に行かないといけないかと思ってたよ」


 ローランは深い帽子付きの黒色のマントを被っている。

 気楽に楽しみたいから、と少しお忍び風の恰好をしているらしい。マントには金や銀の刺繍で星が描かれており、光に当たるとチラチラと小さな輝きを放っている。

 このマントも星燈祭で作られているものらしく、色違いのものや丈の長さの異なるマントを着ている人とかなりすれ違った。


 ローランはクロトンの言葉に、小さく笑いながら返答した。声がいつもより少し明るい気がする。ローランも星燈祭を楽しんでいるようだ。


「元々民間で始まったお祭りだからね。一応点灯式の時は前に出るんだけど、基本的には招待って感じで主催ではないから」

「そうなんですね、お祭りの始まりなんて考えた事なかったな」


 星燈祭はイルミネーションの美しさと、魔力を吹き込んだ星輝石を交換すると結ばれるという伝説くらいしかゲームに出てこなかったから知らなかった。

 クリスマスの代替行事、くらいにしか思っていなかったのだが、きちんと何か意味があったのか。


「冬は空気が澄んでいて星が綺麗に見えるからね。星空を楽しむ機会にあわせて、今年も平和であった事への感謝や来年の平和への願いを込めて星に力を込めるんだ。ちょうど、新しい年の始まりの前だしね」


 ローランが出店にぶら下がっている光り輝く星型の星輝石をつんっと触りながら話す。


「あとは、昔恋人同士だったある男女からこの星燈祭が始まったらしい。最初は星祭りという名前で、星輝石を交換する習わしもなかったそうだ。戦乱があった頃から星輝石に魔力を吹き込み、交換することが始まったらしい。無事に恋人が戻ってくることを祈って」


 セージがそう説明を付け加えた。

 そうか、恋人同士で交換すると結ばれるという事くらいしか知らなかったが、始まりはそんな話があったのか。

 ヴィオレもそれは知らなかったみたいで、セージの話を興味深そうに聞いている。


「へぇ、それで無事結ばれたってわけか」

「さぁな。そこまでの話は特にないが、まぁ……そうだといいな」


 セージが重い口調でそう呟く。

 未来の宰相であり、未来の王様であり、国の中枢を担っていく立場の私達にとっては重いテーマだ。

 戦乱の世でどれほどの国民が愛する人の元へ帰れたのだろう……。

 きっとすべての人、ということはなかったはずだ。


「本当に。戦争だけは絶対に起こしちゃいけない。この美しい祭りを、皆がずっと楽しめるようにしなくちゃね」


 ローランは行き交う人々の楽しそうな表情を見つめながら、穏やかだが力強い口調でそう話す。

 この星燈祭がそんな意味を持つお祭りだなんて知らなかった。

 町を彩るたくさんの星々を見上げる。

 その男女がどうなったのか、今では知る術はないが、今後の未来でもこの美しいお祭りが続いて行けるようにしていきたい。


「さ、ちょっとしんみりしちゃったね。先へ進もうか」


 先頭を歩いていたローランがこちらへ振り返り、私に向かって手を伸ばした。

 私はその手を取り、歩き出す。

 初めての星燈祭、この星々の輝きの祈りを感じながら楽しんでいきたい。


 と、思っていたのですが、なかなかイベントって思い通りに進まないものなのです。


読んで頂きましてありがとうございました。

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