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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第八章 大好きなイベントが始まると思ったのに……

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80/90

75.ヒロインなんですが少し希望が見えてきました


「え、アイリスまだできてなかったの!?」


 生徒会室で会議が始まる前にヴィオレと二人で星輝石を輝かせる練習をしていたところ、クロトンが入室してきて開口一番にそう言われた。

 ピシィっと固まる私。情けないし、一人だけ星輝石を輝かせられないかもしれない、という不安で少し涙が出てきてしまった。

 そんな私の様子を見て、クロトンは慌てふためく。


「あ、ごめんごめん。傷つけるつもりはなくて……」

「ううん、至極真っ当な反応だと思っているから気にしないで。まさかこんな初歩的な魔法ができないなんて夢にも思わないよね、ごめんねダメな生徒で……」

「いや、そこまで言ってないけど……」


 クロトンが私の隣の椅子に腰を下ろし、私と星輝石を眺める。

 今度は弱く力を込めるが、やはり弱すぎて一粒光が見えては消えてしまうだけだ。


「魔力が多いってのも考えものなんだねぇ」


 しみじみとした口調でクロトンはそう言うと、机の上に何個かある星輝石を手に持ち、なんてことのないように薄緑色の光で光らせた。


「コツかぁ、なんて言ったら良いんだろう……」

「クロトンは綺麗な薄緑色だね、光り方もなんだかふんわりしてて優しい感じ」

「そう? ありがとう。きっとアイリスも素敵な輝き方をするよ、楽しみだね」


 クロトンはふんわりと笑いながら、私を励ました。

 色気たっぷりの魅力的なクロトンの微笑みを見て、私も少し元気になった気がする。


「光属性の輝きなんて、皆きっと見てみたいだろうね」

「そうだよね、皆楽しみにしているよね。なんでうまくいかないかな……」

「ロベリアン様はなんて言ってんだよ」

「……コントロール力がないとか。なんか最近はもう呆れ果てて、同室にいるだけみたいになってるけど」

「まったく、あの気分屋魔塔主は」


 そうポツリとヴィオレが言葉を漏らすと同時に、バンっと大きな音を立てて両開きの窓が開き、突風が吹きこんでくる。

 急な突風に顔を守りながら、薄目を開けて扉を見ると、風を纏って飛んでいるロベリアン様がふわふわとこちらに入ってくるのが見えた。


「おい、聞こえてるぞ」

「げ、ロベリアン様」


 ヴィオレが顔を顰めるも、ロベリアンは何も気にした様子もなく、生徒会室に降り立った。

 私が駆け寄り、開きっぱなしになっている窓を閉める。


「どうしたんですか、窓からなんて」

「帰ろうと思ったけど、やっぱりジュースをもらってから帰ろうかと思って戻ってきた」

「めちゃくちゃ気分屋魔塔主じゃないですか」

「うるさい、さっさとよこせ」

「はいはい」


 私がそう言ってロベリアンのジュースを用意しようとする前に、ヴィオレが既にジュースの準備を始めていた。悪口を言ってしまったから、挽回したいようだ。

 ついでに私たちの分の紅茶も淹れて、それぞれの目の前に置いていく。


「ロベリアン様、もうすぐ星燈祭です。さすがにこのイベントに星輝石を輝かせられないのは可哀想なので、もっとちゃんと見てあげてくれませんか」 


 そう言いながら、ロベリアンの前にジュースを置くヴィオレ。

 クロトンもヴィオレと同じようにロベリアンをじっと見つめる。

 私の為に意見してくれるなんて……と感動のあまり、目を潤ませながら二人を見た。

 ロベリアンはその二人の視線をそれぞれ一瞥し、ジュースを飲みながら面倒くさそうにため息をつく。


「じゃあ、逆に聞くが、こんなもんをどうやって教えろって言うんだよ」


 そう言うと、星輝石を手に取り輝かせた。

 七色の輝きを初めて見る二人は、おぉ……と感嘆の声を上げる。

 ロベリアンはその二人の様子を見て、ふんっと自慢げに輝かせた星輝石をテーブルに置いた。


「すげぇ色……じゃなくて、やっぱり魔塔主だし、アイリスの専属魔法教師だし、なんかやりようあるでしょ?」

「ないない、俺がコイツに何度教えてやったと思ってるんだよ」

「……教えてもらったかな」

「教えただろうが」


 そう冷たく言い放つと、ごくごくとジュースを飲むロベリアン。

 取り付く島もない。私が立ち往生していると、クロトンが続けてロベリアンに質問をした。


「やっぱり魔力が大きすぎるから、こんなに弾け飛んだりしちゃうんですか?」

「こいつの場合、多いだけじゃないからな」

「そういえば、変とか制限かかってるとか言ってましたよね? 一体、アイリスの魔力ってどうなってるんです?」


 ヴィオレがそう聞くと、ロベリアンはジュースを飲む手を止め、静かにテーブルの上に置いた。

 先ほどの横柄だった様子から一転、


「……言えない」

「え、なんで?」

「王子とそういう契約をしているからだ」

「契約?」

「あーもう聞くな聞くな。どのみち、お前のコントロール不足には違いないんだから、やるしかねぇんだよ。おら、頑張れ」


 そう言うと、私の目の前に星輝石をぽんっと放り投げた。

 そして、目を合わせることを避けるように、またジュースを飲み始める。

 ロベリアンが言ったローランとの契約や様子がおかしい事に、私達は顔を見合わせる。一体、私の魔力に何があるんだろうか……。


 そこに、トントンとノックの後にガチャリと扉が開いた。

 ローランとセージだ。


「げ、ロベリアン様」

「お前らは本当に失礼だな。俺は天才魔塔主だぞ、お前の依頼で忙しい中特別にコイツの面倒を見ているんだからな」

「あはは、すみません。いつもありがとうございます」

 

 ロベリアンを見るなり、顔を顰めるローラン。

 その様子にロベリアンがむくれると、ローランはいつもの爽やかな春風のような笑顔でロベリアンの悪態をかわした。

 

 その後、私達に視線を戻す。

 そして、テーブルの上に大量に置かれた星輝石と私を見た。


「あ、アイリス……もしかして、まだ星輝石は難しい?」

「はい、殿下……」

「そうか……まぁ、勉強でも忙しかったし、まだ1週間ある。きっと大丈夫だよ」


 そう言うと、にっこりと微笑みながら私の肩にぽんっと手を置いた。

 あと1週間しかないのか……。

 はぁと大きくため息をつくと、セージが星輝石を手に取り、手の平の上でころころと転がしながら、私に尋ねた。


「今はまだ弾け飛ぶのか?」

「あ、うん……」

「そうか、まだ弾け飛ぶのか……」

「弾け飛ばないように弱めると弱すぎるみたいで、今後は逆に全然光らなくて」


 セージは私の問いを聞いて、顎に手を当ててしばらく考える。

 教え上手のセージでも説明に困るような事のようだ。

 ロベリアン以外の皆がうーん、と考え込んでいる中、ローランが明るい表情で顔を上げた。


「ふむ……あ、そうか。アイリス、良い案があるよ」

「え、本当ですか! 殿下!」

「うん。だから、この件は私に預からせてくれるかな?」

 

 そう言って、にっこりと微笑みを向けるローラン。

 何やらとても楽しそうに見えるのだけど、ローランは一体何を考えているのだろう……。


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