74.ヒロインなんですが恋愛もド下手糞です
あれから2週間の時が経った。
毎日放課後の勉強。星燈祭の準備に皆奔走しながら、ついに……この日を迎えた。
「……やった、やった!!」
今日はテスト後、採点が終わり、テストの結果が貼りだされる日。
後ろから順位を見ていくと、200位台に自分の名前はない。心が躍った。ずっとずっと先の100位台、50位台と数字を追っていき、ようやく自分の名前を見つける。
「おぉ、やったじゃねぇか。だいぶ上がったな」
いつの間にやらヴィオレが私の後ろに立っていて、少し遠い成績表を目を凝らしながら見ている。
52位。
そりゃ上を見たらキリがないけど、228位からの大躍進と言って良いのではないか。
「やったよぉ……みんなのおかげだよぉ、これで生徒会の体面も保てたよぉ……あぁ、今日からようやくちゃんと寝れる」
「はいはい、お疲れ様。あとは星燈祭だけだな。テストから解放されたし、星燈祭はあるし……皆浮かれてるな~」
ヴィオレがそう呟いたので、私も周りを見てみる。
確かにいつもより浮足立った生徒が目に入る。貴族がほとんどの学校なので、すごく騒いだりはないけど、いつもより皆声が大きかったり、笑い方も年頃の少女みたいにはしゃいでいる。男の子たちは小突きながら、女生徒の方へ行って来いよ、なんてやっている子たちもいた。
前世の学校みたいに、廊下を走り回ったり、急にクラッカーを鳴らしたりするより、ずっとお行儀は良い気はするけど、確かに皆浮かれている。
「ま、婚約者見つけるみたいな目的もあるしな。星燈祭や花祭りは。そりゃ皆これだけ浮足立つわな」
「……うん」
「お前みたいに星輝石を輝かせられない人間以外はな」
憐みのこもった目を向けられ、ぐぅっと締め付けられる胸を抑えながら目を反らした。
そう、なんと私はあれから勉強と並行して2週間の間、ずっと星輝石を輝かせられるように練習をしていたのに、全くと言って良いほど成功していないのだ。
「こんな展開は予想してなかったよぉ!!」
半泣き状態で膝から崩れ落ちる。
ゲームでAボタン押すだけだった簡単な作業がこんなにも煮詰まるなんて、練習し始めた当初は思いも寄らなかった。
あまりにも基礎的な事過ぎて、教科書には簡単な文章が一文くらいしか載っていないし。
弾け飛ぶからと力を弱めれば輝かず、少し力を込めたら弾け飛ぶし、一体どうすれば星輝石を輝かせられるようにできるのか。
テストは無事終わっても、心配事は尽きない。
うなだれている私の肩をぽんっと、ヴィオレは叩いた。
「俺はちょっと想像ついてたぜ」
親指を立てて、予想が大当たりなことに少し喜んでいるヴィオレ。ゆっくりと私を立ち上がらせた。
いや、本当に笑い事じゃないんだけど。
「なんでこんな事ができないの? 私、パラメーター的になんか変なの? おかしいの?」
「いや、たしかに魔力は高いんだけど、別にそれが特段問題なさそうだし……なんでだろうな。俺もこれに関しては、あまりに簡単すぎてアドバイスというアドバイスもできねぇし。普通にこうやって力込めるだけなんだけどな」
そう言って、ポケットから取り出した星輝石を目の前で輝かせる。
星輝石は赤く光り始めた。
「わぁ、綺麗……でも、ゲームで見た時のヴィオレの星輝石よりなんか赤が強い気がするな。ヴィオレの特徴が反映されてるんだろうね」
「そうだな、火属性の人たちよりも結構赤が強かったみたいだ」
「あぁ、私も自分の色見てみたいなぁ……星燈祭の準備でごたごたする気はしてたけど、こんな事で出鼻くじかれるとは思ってもみなかったよ。こんなんじゃ、好きな人と交換なんて事絶対できないじゃない」
ヴィオレが輝かせた星輝石を羨まし気に見ながら、大きくため息をつく。
私もポケットから星輝石を取り出し、ただの灰色の石の状態のそれをじっと見つめた。
今ここでやんなよ、危ないから、とピシャリと言われてしまうが、そんなことは何十回と弾き飛ばせた私自身がよく分かっている。
大好きだったイベントなのに、今は少し気が重いくらいだ。
重いため息をついていると、ヴィオレが少し弾んだ声で私に尋ねた。
「そういえばさ。お前、それができるようになったとして、誰にあげるんだ?」
「え?」
「……いや、好きな人同士で交換するんだろ。ってなると、できるようになったら好きな人にあげるってことだろ? 誰にあげるつもりなんだよ」
「おぅ……」
「おい、まさか……」
ヴィオレの顔が青ざめていく。
そうか、そうだ。星燈祭に参加できることと、星輝石を輝かせられないことで頭がいっぱいだったけど。そもそものこのイベントの目的をすっかり忘れていた。
「そこまで考えてなかった……」
「お前を乙女ゲームに転生させた神様が今泣いてるぞ、ヒロイン不適合すぎるだろ」
ヴィオレに呆れた目で見られる。
ごもっともすぎて言い訳もできない。
「今、誰が気になってるとかあるのかよ」
「……あぁ、それもあんまり考えたことなかった」
「おい。ヒロインとして生きるとか言ってたの、どうなってんだよ」
「いや、ヒロインとしてまず攻略対象キャラに会えるように頑張ってたけど、まず会えた事が嬉しくてその先の事をよく考えてなかった」
「ほんっとダメヒロインだな、お前」
ヴィオレに大きなため息をつかれる。
たしかに、今までその時々に一生懸命になり過ぎて、恋愛的な視点で未来を考えたことがなかったかもしれない。
いつかは私も好きな人と恋愛をして結婚をしていくのに……うーん、ゲームのエンディングのあのシルエットがあった場所に私が立つなんて、全く想像ができない。
「まぁ、そこに立ち返ったところで星輝石輝かせられないなら元も子もないんだけどな」
「結局そこに戻るんだよね」
今度は二人で顔を見合わせ、同時に大きくため息をつく。
「……とりあえず、生徒会行くか」
「……そうだね」
私たちはよろよろと、ゆっくりとした足取りで生徒会室に向かった。
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