72.ヒロインなんですが魔法がド下手糞のようです
既に皆当たり前のように履修済だと言っていた星輝石の力の込め方について、全く習っていないとロベリアン様にクレームをつけてみると、あっさりとこんな返答が返ってきた。
「すまん、忘れてた」
「ロベリアン様ぁ!! 私を不出来な弟子だと罵るなら準備に時間がかかることはご存知ですよねぇ!!」
「まぁ待て。そんなに泣きつくな。今までの魔法が出来ているなら、あんなのちょちょっとできちまうんだから。ほら、やってみろ」
そう言うと、ロベリアンは私に向かって星輝石を投げ渡してきた。
星燈祭で使われるような星型に加工されたものではなく、加工前のただの石だ。こう見ると、道端に落ちているような灰色の石ころの様に見える。
私は改めて星輝石に力を込めてみる。
今度はゲームでAボタンを押したときのイメージを強く持ちながら。
そして、石は光り輝き、そのままやはり爆発したかのように弾け飛んだ。
「は、弾け飛んだんですけど……」
「……もう1回やってみろ」
ロベリアンはまた、私に石を投げてくる。
私はさらにゲームの時のイメージをもっと強く持ちながら、力を込めた。
すると、先ほどよりも大きな音を立てて、石は八方に弾け飛んでいく。
「もっと弾け飛んだんですけど!!」
「バカ! 大体さっきの力の加減であぁなったんだから、弱めるなりにしてやれよ! ほんっとダメだな、お前は!」
「ダメって言わないで!! 私一応生徒ですから、ちゃんとした言葉で指導してくださいよ! 泣いちゃいますよ!」
あまりの暴言に抗議すると、舌打ちをしながら風の魔法で椅子を引き寄せた。乱暴に足を組んで座ると、こちらを睨みながらはぁっとあからさまなため息をついて私にプレッシャーを与える。
「こんな簡単な事、なんで出来ないんだよお前。本当にコントロール力がないな」
「すみません……じゃあ、どうやってやったらいいんですか」
「普通に力込めるだけだろ。こんなもん、息をするようにできる」
そう言うと、ロベリアン様は星輝石を手の平に乗せ、目を瞑る。
石は静かに段々と光を帯びていき、七色に光った。
こんな色はゲームでも見たことがない。
「うわ、綺麗……」
「俺は四属性持ちだからな、色々な色が出るんだよ」
「火属性なら赤。水属性なら青。地属性なら黄色。風属性なら緑ですよね」
「あぁ、よく知ってるじゃないか。出来もしないくせに」
「一言余計ですよ」
私がムッとすると、ロベリアンは楽し気に笑った。
「ま、実際はそういう色の系統が出るだけで、力の大きさや本人の性格に結構影響されるんだけどな。純粋に単色が出るのは珍しいんじゃないか」
「じゃあ、ロベリアン様も本当なら赤と青と黄色と緑の4色が綺麗に出るはずなのに、こんなひねくれた性格だから七色に輝いているんですね」
「言うじゃねぇか。お前、成績表楽しみにしてろよ」
「ごめんなさい」
すちゃっと素早く土下座をする。
ロベリアンにこのポーズをするのも慣れたものだ。何度諍いを重ねた事か。
ロベリアンが用意した無数の星輝石を一つ手に取る。
まだ力を帯びていない、ただの石ころの星輝石。私が光り輝かせることはできるのだろうか。
これは絶対にできるようになりたい。
フルグレの大人気イベントであり、私自身大好きだったイベント。
好きな人同士で交換、というあのイベントを遂行するには、これが出来るようにならなければならない。
でも、光属性の私が輝かせる星輝石がどんな色なのか純粋に気になる。
単色は珍しいというが、ゲームのヒロインであるアイリスの星輝石は純粋に白く光り輝くものだった。
おそらくパラメーターが全部良く、スタイルも良かったヒロインアイリスはそうだったのかもしれないが、出来損ないヒロインアイリスである私の星輝石は違った輝きを放つのだろう。
「私はどんな色なんだろうなぁ」
「さぁな、さっさと出来るようになればわかるようになるだろ」
そう投げやりに言うと、椅子の上にだらしなく座り直し、何やら分厚い本を開いてのんびりと読みだした。
一応私の授業中なんだけどな……と思いつつ、この人は一応現魔塔主で忙しいはずの身なのだと思い出す。そうなると、私の授業を見るのも大変なのかもしれない。
私は教科書を開いて、改めて星輝石の輝かせ方を調べた。
そうは言ってもやはり、石に魔力を込めるといった簡単な説明だけで何の参考にもならないのだけど。教科書と石を交互に見ながら、悩んでいると、ロベリアンがぽつりと呟いた。
「……まぁ、お前の魔力変だから難しいのかもな」
「あぁ……そういえば最初に仰ってましたね、ロベリアン様。結局私の魔力が変だから、魔法のコントロールが難しいんですか?」
「普通は魔力の量や流れがどんなにおかしくても、ずっと体に馴染んだ魔力の流れをうまくコントロールできるんだけどな。16歳以降なら尚の事。俺もお前みたいなのは初めて見たから、よくわかんねぇんだよ」
「そっかぁ」
「ま、練習あるのみだな」
そう言うと、またロベリアンは私の前に大量の星輝石をどんっと置いた。
私は信じられない量の星輝石を前に、たじたじとなる。
ロベリアンは、ふんっと鼻を鳴らすと、私に冷たく言い放った。
「たかだか星輝石に魔力を込めるのも、今までの基礎魔法も、フェスタンでぶっ倒れるほど魔力使ったのも、もとはと言えば、お前のコントロール力の無さだな。ほら、さっさと石光らせるくらいやってみろ。あと、基礎魔法な。練習しろ。はい、今日の授業は終わり」
「そんないい加減な! まだ授業終わるのに時間ありますよ!?」
「忙しいんだよ、俺は。そんな基礎的な事をちまちまちまちま教えてる暇ねぇの。ほら、ここに居るからやってろよ。集中したいから声かけるなよ」
「そこにいる意味無くないですか!?」
「帰ってもいいのか?」
「ごめんなさい、そこで本を読んでいてください」
もう、すぐ謝るのも癖になってしまった。
私の言葉に満足したようで、ロベリアンはにやりと笑うと、本当にじっくりと本を読み始めた。信じられない、この教師……。
とはいえ、基礎魔法だけずっと見られているのも、いつものように高圧的に怒られる方も大変か。そう思い直した私は、何度も石を弾け飛ばし、基礎魔法を何度も練習し始めた。
なんとか、星燈祭までにはこの石を輝かせられるように……。
お忙しい中、読んで頂きましてありがとうございました。
4月最初のフル5日間でしたね。
色々と環境の変化があった方も多いかと思います、お疲れ様でした。
思ったよりも疲れが溜まっていらっしゃるかと思いますので、お休みの方は休んだり、遊んだり、リフレッシュされてくださいね。




