71.ヒロインなんですが準備が色々と不足しています
「えっと……試験っていつからだっけ?」
最近色々とバタバタとしていて、すっかり試験のことなんて忘れていた。
ある程度はやっているけど、学校、生徒会、帰ってからはダイエットの為に運動とマッサージをしてもらっていたので、勉強まできちんと時間を使っている日はあまりなかった。
本当に課題をやったり、余裕がある時にしか勉強していなかった……。
でも、その代わり今では標準体型に近付いてきたのだからそこは褒めてくれても良いんじゃない!?
……あぁ、でもそうなってしまったのも、もとはと言えば自分のせいか。
私がそんなことを考えている中、ヴィオレが「そこからかよ!」とくどくどと怒っている。
たしかにヒロインとして頑張る、とは言ったけども、実際1日24時間という制約がある中で全部は無理だよぉ!!
私がヴィオレに怒られて、しくしくと泣いていると、ローランが私の肩にぽんと手を置いた。
「まだ、再来週で試験自体は時間があるよ」
「良かったぁ!」
「ただ……」
ローランが喜ぶ私を見て、気まずそうに視線を外す。
「これから星燈祭について詰めていくつもりだから、放課後忙しくなってしまうんだけど……」
ローランが気まずそうにそう言うと、セージが冷ややかな目で私を見た。
「今度は228位以下か」
「セージよく覚えてるね!? あと、順位の事言わないで!」
「へぇ、アイリスって結構おばかなんだね」
「ほらぁ! 今度はクロトンにもバレちゃったじゃないの!」
「セージに怒るな!! もとはと言えば、お前が公爵令嬢の癖にろくに勉強してこなかったのが悪いんだろ!!」
「ひぃ……ごめんなさい……」
しゅんっとしていると、ローランが私の後ろに立ち「あんまりいじめないの」と皆を窘めた。
しかし、たしかに本当にやばいぞ。
夏休みに挽回の勉強をしたし、今でも多少継続しているんだから、228位なんてことはないはずだが、あまりにおばかだと知力系キャラセージに見切りをつけられる……!
せっかく名前で呼べる仲にまで発展したのに!!
冷や汗をだらだらとかきながらあたふたとしている私を見て、ローランが少し困った顔で後ろから私の顔を覗き込み尋ねる。
「あれだったら、星燈祭の準備から外れる……?」
「いやぁ、楽しみにしてたからやりたいよぉ」
「ふむ、そうだよねぇ……」
ローランは私の返答を聞くと、顎に手を当ててしばらく考え込んだ。
そして、クロトンの方にぱっと顔を向ける。
「1か月学校に来れなかったクロトンは大丈夫かい?」
「まぁ、大体入学前に済ませているから大丈夫だとは思うけど、少し不安だね」
「ほら! 貴族は大体こうなんだよ、このおさぼり令嬢め!」
「ヴィオレ、人には人の事情があるんだから、あんまりそう言うな」
いや、本当にヴィオレの言う通り、ただのおさぼり令嬢だったのでぐうの音も出ないんですが……。
ヴィオレを再度窘めるローランにも申し訳ない気持ちで居たたまれない。
しゅん、と塞ぎ込んでいると、しばらくしてローランが空気を変えるようにパンっと手を一度叩いた。
「……うん。よし、こうしよう。クロトンとアイリスの勉強を見る時間も作ろうか、私達で面倒を見るよ」
「え、いいんですか?」
「でも星燈祭の準備も忙しいんでしょ? 大丈夫なの?」
「あぁ。星燈祭は例年やっていることだから、改めて何か決めることもないし、いつもよりずっと忙しさとしてはマシかなと思って。それに、生徒会メンバーかつ公爵令嬢のアイリスが……その……」
「お前がバカだとこちらとしても体面が悪いということだ」
「セージ、そんなにはっきり言わなくても……」
「ご迷惑をおかけしてすみません……」
小さくなりながら土下座をする。
ローランが私のフォローをしようとするも、どう声を掛けたら良いか言葉が出ないみたいで少し困っている。いや、本当に申し訳ない。
ヴィオレがそんな様子にも全く気にせず、ローランに尋ねた。
「ちなみに、今回生徒会でやるって何やるんだ?」
「まず、星輝石の確認かな。生徒の人数分足りるかとか、実際にうまく反応するか何個か試したりして。たまに不良品が混じっている事があるからね。あとは、会場や料理の手配とか生徒達への当日のドレスコードとかの案内諸々かな。星輝石はもう手配済みのものと、去年の余りがあるからそこは大体終わってる。あとは確認だけ。ということで、ここに星輝石を用意しました~」
すでに温めたものがこちらにございます、といった料理番組ほどの手際の良さで部屋の隅の大きな箱から、星型の星輝石をローランが取り出し、私たちに見せる。
キラキラとした目で石を見ていると、星輝石を私に手渡してくれた。
手渡された星輝石を少し上に掲げて、色々な方向から眺めてみる。
「わぁ! これが星輝石なんですね! 素敵~! 光る前は本当にただの石みたい。あ、でもちょっと軽い気もする」
「ん? 魔法の授業中に星輝石に魔力を込めるのとかやってるだろ」
「え? 何それ?」
「は? やってねぇの?」
ヴィオレにそう突っ込まれて、きょよんとしていると、ローランがはぁと深いため息をついた。
「まったく……ロベリアン様、ちゃんと学習指導要領読んでないな……」
どうやら皆は既に星輝石の魔力をこめる方法について履修済みのようだ。
ここでも遅れを取ってしまっているのか、と焦ってしまう。
「え、皆やってるんですか? うわぁ、どうしよ……」
「まぁ、本当に簡単な事だからそんなに構えなくても大丈夫だよ。試しにやってみる?」
「はい! 魔力を込めれば良いんですね」
私はゲームで見た時の様に、星輝石に魔力を込め始める。
その内、石がキラキラと光り輝き始めた。
「わぁ……」
「光属性だと、何色に輝くんだろうな」
ヴィオレが興味深く、私の手元を覗き込む。
私はさらに力を込める。その内、石がピシっと音を立てた。
「……ん?」
何が起こっているのか、私も石を覗き込むと、激しく音を立てて石は弾け飛んだ。
「あ、危ない!!」
クロトンがはじけ飛ぶ石の欠片を風の魔法ではたき落とす。
私は何が起こったかわからないまま、呆然と立ちすくんだ。
「ごご、ごめんなさい! え、なんで!? 不良品でした?」
「いや、多分力の込め方かな……まぁ、これから練習すれば大丈夫だよ」
ローランが苦笑いしながら、私の肩に手を置いて励ました。
勉強。星燈祭の準備。その上、星輝石への魔力の込め方もできるようにならないといけないらしい。
課題がどんどん積みあがっていき、私は気が遠くなりそうだった。
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