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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第八章 大好きなイベントが始まると思ったのに……

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70.ヒロインなんですがアイツのことを忘れていました……


「はぁ……ようやく戻ってこれた……」

「お疲れ様」


 私はげっそりとした顔で生徒会室のテーブルに突っ伏しながらだらしなく座るクロトンの前にそっと、蜂蜜入りの紅茶を置いた。

 前にクロトンが作ってくれた紅茶と同じブレンドの蜂蜜を入れてある。


「大変だったね、1か月ちょっと……」

「大変なんてもんじゃないよ、もう……ほんと、世の中のママを尊敬する。ありがとう、紅茶」


 クロトンがだらしない格好のまま、ずずずっと紅茶をすする。

 すると、んっと何か気付いた顔をして、姿勢正しく座り直し、紅茶を音を立てずに飲み直した。


「ごめん、マナー違反だったね。気を抜くといっつも昔の癖が出ちゃうんだ」

「いいよいいよ、どうせ私とヴィオレしか居ないんだし」

「俺も前に同じようにだらしなく飲んでたしな。不快に思うような人がここに居ないんだから、気にしなくていいだろ」

「って言うと、昔から父に癖は外で出るから気を付けろって言われちゃうんだよね。あー完全に気を抜いてた、気を付けよ」

「あはは。たしかに、クロトンのお父様なら言いそうだね。そういえば、ドラゴンを育てることになって反応としてはどうだったの?」

「それがさぁ……聞いてよ!」


 クロトンがダンっとテーブルを叩いた。珍しく怒っているようだ。

 クロトンは感情が収まらぬまま、早口で話し始める。

 

「お前がママなら、ドラゴンは私にとって孫だとか意味わかんない事言ってアポ取って勝手に来ちゃってさぁ! それもあって大変だったんだよ。あんな強面に赤ちゃんが懐くわけないのに、なんかやたら張り切って来ちゃって。ドラゴンは怖がるし泣くし夜泣き激しくなるし、もう大変だったよ」

「うーん、ちょっと想像がつくような……」

「職員の人は止めなかったのか?」

「最初は言ってたんだけどね。……なんか最終的に、姑に口を出せない新妻みたいな雰囲気になってた」

「お気の毒に……」


 私がそう言うと、クロトンはまたしんどそうにテーブルに突っ伏した。

 私達も私達でクロトンの居ない穴を埋めるのに大変だったが、クロトンもクロトンで大変だったようだ。親が複数人居たら良かったけど、一人で対応となるとたしかに大変だろう。


 ヴィオレがクロトンの後ろに立ち、肩をぽんぽんと叩き始めた。

 ありがとう、と半泣きで有難がるクロトンを見て、久々に生徒会のあの雰囲気が戻ってきたと少しほっとする。


 最近は地震やドラゴン生誕もあり、国政もバタバタしていて、ローランもセージもどこかピリピリとしていたのだ。セージは、まぁ……いつも通りといえば、いつも通りだけど。

 ローランはそういう態度をあまり見せないが、見せない分逆に心配というか。

 クロトンの飄々として柔らかいこの雰囲気がいかに生徒会にとって、大事だったのかをこの1か月で思い知った。


 今日からようやく日常に戻るのかぁ、と思っていたところに、軽くノック音が2回する。

 そして、パッと扉が開いた。


「ごめん、お待たせ」


 セージとローランが生徒会室に入ってきた。

 セージとローランを見て、クロトンが立ち上がって二人の方を見る。


「色々とありがとう、配慮してくれたみたいで」

「いや、こちらこそ一番大変なところを対応してくれてありがたかったよ。大変だったね」

「うぅ……ローランがこの国の次期王様で良かったよぉ、労いが有難いよぉ……」


 半泣き状態でクロトンが礼を言うと、ローランが苦笑した。


「あはは、色々と気が付いて手配してくれたのはセージなんだけどね」

「セージ、本当にありがとう……」

「徹夜慣れだけはしているからな、私は」

「無理しないで寝てね……」


 そうぶっきらぼうに答えるセージの目の下には、心なしかまた隈が出来ているように見える。

 新作の執筆とクロトンのフォローで随分忙しかったからなのか。

 

 ローランとセージが席に着き、書類をトンっとテーブルに置いてローランが話を始める。


「さっ、諸君! 疲れているところ申し訳ないが、今日から取り組まなければならない事がある」


 そう言うと、一人一人の顔を見ながら少しもったいぶるようにして時間を置く。

 これは、まさか”あのイベント”について、ついに始動するのだろうか。

 私はごくり、と唾を飲み込んだ。

 ローランはにこりと笑って言い放つ。

 

「星燈祭だ!」


 冬の大イベント星灯祭! フルグレで一番好きなイベントだ。

 私はあまりの嬉しさに小さく拍手をした。

 その様子を見て、ローランがくすりと笑う。


「試験前の忙しい時期に申し訳ないけど、時間を作って頑張ろう」

「……しけんまえ?」


 私がそう呟くと、恐ろしい形相のヴィオレがバッとこちらを見た。


「おい、まさかお前……試験のこと、すっかり忘れてたとか言うんじゃねぇだろうな」


 ……そのまさかである。

 冷や汗を垂らしている私を、皆が呆然と見ていた。


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