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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第七章 平和な乙女ゲームに転生したと思ったのに……

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69.ヒロインなんですが古代の遺跡には謎が多いです


 地下遺跡の中は見事な物だった。

 

 地下にあったことで、遺跡の中が守られていたらしく、どれも美しく保存されていたそうだ。

 きらびやかで大振りの宝石があしらわれた金のネックレス、うでわ、小さな動物の像、当時の権力者の持ち物であったのではと考えられている50センチメートルほどの美しい杖。

 昔にどんな加工技術があったのだろう、と疑問なほどのきらびやかで緻密な細工の施された装飾品が多数あった。


 そして、その展示をされている壁には当時の生活、宗教観が描かれている。

 当時の権力者がどれほどの力を持っていたのか指し示したかったり、神様を崇拝してこのような壁画を描いているらしい。

 

 館長の説明を聞きながら、どんどんと進んでいき、ついに一番奥の開けた空間にやってきた。

 奥の空間は今までよりもかなり開けている。

 天井がもう1メートルほど高くなり、広々とした空間の真ん中に石の棺が置かれていた。

 

 そして、その空間にも壁画が描かれているのだが……なんていうか、その……


「へったく……」


 へたくそ、とロベリアンが言おうとしたのをぱしっとヴィオレに手で押さえられた。

 いや、でも今までのクオリティとは明らかに異なるし、正直何がどう書いてあるかよ全然わからないんだけど……。


 急に今までの壁画と異なった雰囲気の壁画に館長以外の皆が動揺し、口を閉ざす。

 一番初めに口を開いたのはローランだった。


「……これは保存状態が悪いから、このようになっているんですか?」


 ほら、ローランだって遠回しにへったくそって言ってるよ。


 チラリと私の口を塞いだままのヴィオレを見ると、目の鋭さだけで口を開くなと強い圧力をかけられた。

 館長はローランの問いに大きく笑いながら、「いえいえ、保存状態は今までのものと変わりませんよ」と答える。

 続けて、館長が壁画の一つ一つに説明をしていった。

 

「正直、今までとかなり異なる絵柄の為、解読という風には出来ていないんです。今までと違って文字もないですしね。これはもしかしたら、山なのかとか。これは女性か、とか……もしかしたら、この女性のような人型が棺の女性かもとか。あぁ、棺の中に入っていたのは女性だったんですよ」

「誰か、というのは判明されているんですか?」

「いいえ」


 館長は静かに首を振った。

 棺の中は空っぽになっている。中のものは別にして、特別に未だ調査中だそうだ。


「ただ、棺の中にはたくさんの花が添えられていました」

「へぇ、珍しいんですか?」

「そうですね。ほとんどは権力を示す目的や、その本人がよくつけていた装飾品が入っていることが多いので、花というのは珍しいです」

「じゃあ、偉い人ではなかったのかな……」

「いえ、そうとも言い切れず……」


 館長は両手を広げながら、この開けた空間を指し示した。


「この地下遺跡のメインといっても過言ではないくらいの開けた場所です。そこに、権力のない人物を埋葬するのはあまり想像ができない。もしかしたら、当時の権力者の妃や恋人だったかもしれませんな。ここは、この方の為の墓と言っても過言ではありません。いやぁ、ロマンですなぁ」


 館長はうっとりとした顔で、棺を優しく撫でた。

 この中には、一体どんな人が眠っていたんだろう……。

 館長の説明が上手過ぎて、私たちはその棺に目を奪われていた。

 セージが棺について追加で質問をする。


「何の花だったかは判明しているのですか」

「アイリスです」

「え? アイリス?」


 私が聞き返すと、館長はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりの嬉しそうな顔をして頷いた。


「はい、もしかしたらもっと色とりどりの花が添えられていたかもしれませんが、種が入っておりまして、それはすべてアイリスの花だったんです。もしかしたら、この時代の光属性の魔法使いだったりするかもしれませんな。アイリス様がお生まれになった時もアイリスの花が天から降ってきましたし。いやぁ、あれは美しかった……」


 館長はあの頃の事を思い出すように目を閉じて、うっとりとしながらそう呟いた。

 それにしても、アイリスの花か……。本当に館長の言う通り、当時の光属性の魔法使いだったのかもしれない。偉い人じゃなくても、光属性の魔法使い……今と違って医療も発展していない頃なら、神様のように扱われたのかも。

 でも、それなら花だけが添えられるって不思議だなぁ……。


 たくさんのきらびやかな装飾品を見た後だから、余計にメインとも考えられるこの棺に装飾品がなかったというのはかなり疑問を感じた。

 そもそもこの遺跡ってどれくらい前のものなんだろう……。

 

「この絵が描かれた時代って大体どれくらい前なんですか?」

「約二千年前ではないか、と言われておりますよ」

「二千!? へぇ~すごい……フルール様ですら、ずっと前だと思っているのにさらに千年前なんて」


 私は首が痛くなる程、顔をぐっと上げながらこの空間を上から下まで眺める。

 へったくそな絵だが、壁の隙間がないくらいに描かれているのはそれだけ慕われていた証拠なのかもしれない。

 

 私達が壁画をぐるりと見上げている中、ローランは館長に静かに話しかけた。


「館長、この棺や壁画についてもし新たに分かった事があったら、連絡をくれないか」

「えぇえぇ、もちろんですとも。殿下にも歴史に興味を持っていただけるなんて、非常に嬉しいです」

「……あぁ、助かるよ」


 ローランは館長ににこりと微笑むと、棺を真剣な眼差しでじっと見つめる。

 どうしたんだろう、とローランを見ていると、棺を見た後に私に視線を向けた。目が合う。なんとなく見ていてはいけなかったか、とあたふたとしていると、いつもの穏やかな笑みを向けられた。

 

 なんだか、無理をして笑っているようなそんな気がしたのだが、最近のローランは一体どうしたんだろう。

 ローランに近づこうとすると、その前にセージがローランに近づき、「ローラン、そろそろ」と小さな声で言った。それに気が付いた館長が、「こちらで遺跡の案内は以上になります」と言って丁寧にお礼を述べながら、出口へと案内した。

 

 その後、すぐにセージとローランは予定があるからと一足先に帰っていく。

 ローランはヴィオレに私を家まで送るように、と言い残し、私とヴィオレは二人取り残された。

 

 二人きりになったので、ヴィオレに最近のローランについて聞いてみる。


「ねぇ、最近ローランの様子っておかしくない?」

「え? いや、別に……そうか? まぁ、ドラゴンが孵化したり、地震が起こったりと最近色々あって疲れてんのかもな」

「あぁ、たしかに……そっか」


 俺たちもさっさと帰るぞ、と促され、私たちは二人馬車に乗る。

 たくさんの謎が私の周りを取り巻いている、そんな気がしながら。


 フルール・ド・グレイス。

 このゲームはただの恋愛乙女ゲームじゃなかったの……?


読んで頂きましてありがとうございました。

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