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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第九章 楽しい日々が帰ってきたと思ったのに……

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115.ヒロインなんですが、思ったより私の責任が重そうで胃が痛いです


 私の発言に、呆れたような口調でヴィオレは言った。


「お前、フルール公爵家っていう女神の末裔の家柄のくせに知らないのかよ。家の事なんて一番知ってないといけない基礎中の基礎だろ」


「いや~、小さい頃に女神様みたいにお優しい方だった~とかふわっとした話くらいしか聞いた事なくて」


 私がそう苦笑いしながら答えると、ヴィオレはため息をついた。

 そんな中、クロトンがクッキーを齧りながら話に参加する。


「逸話は沢山あるよね、フルール様。結構たくさん。本当かな、ってものもたくさんあるけど。それを総合して建国の立役者って呼ばれていると思っていたけど……実際どうなんですか?」


「まぁあの時代は大変だったから、そうやってフルール姉さまを神格化して支えにしないと生きていけない人も多かったかな」


「じゃあ、嘘の話もあるって事ですか?」


「うーん、嘘っていうか……ちょっと大げさに言っているなぁっていうのが殆どかもね」


「ふーん、貴族の噂と一緒か」


「デュランダル公爵家の噂の尾鰭の付き方もなかなかなもんだもんね」


 私がそう言って笑うと、ヴィオレはうるせぇと一蹴した。

 和やかな雰囲気となっていくテーブルに、ティアーユ様は目を細めて笑う。


「優しい方だったんだよ。真面目だったかな、あと。でも、逸話で言われているほど特別な人じゃないんだ。僕にとっては、ただただ優しいお姉さんで親代わりみたいな人だった。でも、皆の憧れや期待が強くて結構大変そうだったな」


「へぇ」


「皆にそういう期待の眼差しを向けられた分、自分の望みは強く深く胸の中にしまい込む人、だったかな」


 少し寂しそうに笑うティアーユ様の顔を見ると、なんだか切なくなる。

 おそらく千年も前となると、今ほど医療も発達してない中で優れた治癒能力を持つ光魔法を使うフルール様は本当に神のように扱われていたのかもしれない。


 16歳頃からそんな大役を急に務めるのは……うわぁ、考えただけでしんどいな。


「フルール様って大変だったんですねぇ」


 しみじみと自然と口からそんな言葉が溢れた。

 今からそんな役回りをやれなんて言われたら、私には絶対無理だろう。そもそも、今でこそ多少コントロール出来てきたけど、治癒魔法だってかなり負担なのに。


 今ほど魔法について分かっている訳でも、優れた指導者がいたわけでも、教育機関があった訳でもない時代にそれが出来たっていう事はロベリアン様並みに魔法の使い手としても優れていたのかもしれない。

 ……同じ光魔法の使い手なのに、こうも違うのか。


「そうだね。でも、きっとアイリスもフルール様みたいになるよ」


「うーん、自信ないですねぇ……」


 ティアーユ様がにこにこしながらそんな事を言うもので、思わず苦笑いをして逃げてしまった。

 ソレイユの女神として奉られたフルール様、か。私じゃなくて、ゲームでのアイリスならできたのだろうか。

 ただ乙女ゲームのヒロインとして生きていくと思って生きてきたのに、この世界を重い立ち位置に置かれている気がしてとても気が重い。なんなら、胃も痛くなってきた。


 私、ゆるゲー乙女ゲームのヒロインに転生したはずだったんだけどなぁ……。

 

「でもほら、アイリスも最近アレ出してたじゃない。あの大きな光の壁!」


 暗い顔をしていると、私を励ますようにクロトンがそう明るい口調で話を振った。

 そういえば、目の見えない人の目に光をもたらしたとか、怪我を治したとか、そういう系の逸話は沢山あるのに、光の壁の話は聞いた事がなかったな。


 でも、ロベリアンは魔法書で見た事があるって言ってたし、光魔法の使い手はフルール様以来のはずだ。それなら、あんな壮大な魔法、逸話になっていてもおかしくないのに。


「あの、そういえばフルール様も光の壁を出せたんですよね? ロベリアン様が魔法書でしか見た事無かったって言っていて。でも、そんな逸話は聞いた事ないし……」


 ティアーユ様が私の言葉に、ピクリとティーカップの紅茶を波立たせる。

 ティアーユ様の様子に、違和感を感じながらも質問を続けた。


「使わないといけないような事が起きたんでしょうか」


 私の言葉に、しばらくティアーユ様は黙り込む。


「そうだね、でも僕からは何も言えないんだ。まぁ、殿下と同じく見てもらった方が早いかな」


 ティアーユ様はそう言うと、席を立ち、少し離れた位置に立つ。

 急にどうしたんだろう、といった視線で私達はティアーユ様を見つめる。


 そして、ティアーユ様が静かに口を開いた。


「実は……」


 話そうとした瞬間にティアーユ様の足下にまた魔法陣が現れた。しかし、お母様の時とは違う様子だ。ティアーユ様の足下から凄まじい風が吹き荒れ、ビリビリと小さな稲妻のようなものも見えて、咄嗟に顔を腕で覆った。

読んで頂きましてありがとうございました。

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