114.ヒロインなんですが、気遣いパラだけは良いそうなので細かな事だけよく気が付きます
神殿に来たのは初めてだろうか。
白い大理石で建てられた神々しいこの歴史ある建造物は、まるで別世界のような荘厳さと威厳を感じる。いや、私にとってはここは変わらず別世界というか異世界ではあるんだけど。
ローランの話を聞いた生徒会メンバーは、当たり前のように来てくれた。クロトンだけは「怖っ! 一伯爵家の一人息子に国家機密なんて話さないでよ!」と言っていたが、結局黙っていたローランがようやく話してくれた事に喜んでいた。
神殿の入り口まで行くと、白い礼服に身を包んだ副司祭が厳かに礼をし、出迎え、ティアーユ様の元へと向かっている。
神殿の奥へとずっと続いていく道をひた歩き、一際大きな部屋に着いた。
この荘厳な神殿の奥のひと際大きな部屋で過ごされているだなんて、学園で会った時は気さくで少年のような容姿も含めて実感がなかったけど、やはりすごい人なんだと感じざるを得ない。
ヴィオレやクロトン、私は首が痛くなるほど顔を上げてこの大きな扉を見つめる。思わず出る小さな感嘆を含めた吐息を吐きながらぼうっと見つめていると、副司祭の方が厳かに礼をした。
「こちらです、既にティアーユ様がお待ちですのでお入りください」
「案内ありがとう」
副司祭が厳かに礼をすると、ローランがそう言葉をかける。返事をするように、礼をしたまま更にまた頭を少し下げて、元来た道を戻っていった。
私達がドキドキと大きな扉を見つめていると、ローランがノックをして、失礼しますとキンと響く程大きな声で扉を開けた。
「やぁ、来たね」
荘厳な神殿とは不釣り合いなほど、テーブルの上に沢山のお菓子が置いてある。
まるで友だちの家に来たような歓迎っぷりだ。
いつもの調子のティアーユ様に少し面食らいながらも、皆促されるようにして椅子に座った。
「大人が来るたび結構嫌な話を聞くものでさ、君達なら大歓迎だよ。嬉しくてついつい色々用意しちゃったんだ。まぁ、食べながら話そうよ」
そう言うと、ティアーユ様はテーブルの上のクッキーを自分の口に放り込んだ。
ティアーユ様とロベリアン様を似ていると今まで思ったことがなかったけど、甘いもので口いっぱいにもぐもぐと咀嚼している様子はよく似ているような気もする。
「あの、ティアーユ様。実は前々からご相談させて頂いていた件なのですが……」
「地震のことだろう? そうか、またあったか。陛下はどう仰ってるの」
「いや、また父は感じないと言っているのですが……」
ローランが言いにくそうに尻つぼみになりながら伝えると、紅茶を一口飲んでからティアーユ様がふぅと一呼吸置き、静かに話し始めた。
「君の方がソレイユとの親和性が高いのかもね。それに……すまないね、あまりこういった事を言いたくないのだけど、今の王は少し臆病なところがあるように思えるんだ。見えないようにすると、見えなくなるものもあるんだろうと思うよ。まぁ、これは僕も憶測が大分含まれてるから聞き流して」
紅茶を飲みながら、淡々とそう述べるティアーユ様。その言葉に思うところがあるのか、ローランも否定せずに少し目線を下げて何か考えているような顔を見せる。
ティアーユ様が「先代がご立派だと大変だねぇ……」と呟いて、また今度は苺を口に放り込んだ。
まるでティアーユ様だけ、井戸端会議に参加されている主婦のような穏やかさだ。
いや、母曰くあの井戸端会議だってかなり気を使いながら話題を選んだり、言葉を選んだりして大変だって言っているから井戸端会議だって色々と知略の限りを尽くしたものなのかもしれないけど……。
ローランが黙ってしまうと、次はセージがティアーユ様に尋ねた。
「ティアーユ様は聞いた事がありますか、現統治者ではない者が異変を察知するとか」
「う~ん……神殿は基本、王族とそこまで深い付き合いをしてこなかったからなぁ。まぁ、でもないんじゃない? あれば君たちみたいに長く生きてる僕みたいなのに訪ねてくるだろうし」
「それも、そうですね……」
次はうーん、とセージが黙り込んでしまった。
会話が途切れてしまい、空気がしんとする。ティアーユ様が「ごめんねぇ、力になれなくて」と苦笑いをして、気まずそうに今度はカップケーキをもぐもぐと食べ始めた。
私やクロトンもこの空気が少し耐え難くて、クッキーや苺をいただく。
甘いクッキーの後に紅茶も挟まずに苺を口に入れてしまって、口に広がる酸味を覚悟したのだけど、広がったのは爽やかな甘みだった。すごく美味しい苺だ。
ティアーユ様、本当に楽しみに待っててくださったんだ、と気が付いたのと当時に、暗い顔をさせてしまって申し訳ないと感じた。
私は空気を変えるように、明るい声でティアーユ様に尋ねる。
「あの……フルール様って、建国の立役者って言われてますけど、実際何をされたんですか? それに、どんな方だったのかなって……」
私がそう言うと、 急に話題を変えたのが気になったようで、皆してこちらをふっと見る。
ティアーユ様だけが、一瞬ぽかんとした顔をした後にふわりと表情を緩めた。
「良い質問をするね、アイリス」
ティアーユ様がカップケーキをお皿の上に置いて、楽し気に笑った。
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お盆が終わりますね、気を確かに来月のシルバーウィークまで耐えましょう。
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