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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第九章 楽しい日々が帰ってきたと思ったのに……

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113.ヒロインなんですが、国家機密を知ってしまいました


 建物が揺れる感覚がしてから、数十秒後、揺れがおさまったようだ。

 震度3くらいだろうか。少し揺れたな、という感じで何か物が落ちたり、壊れたりもしていない。


 それよりも、だ。

 ローランがあまりにも近すぎて、心臓の方が飛んだり跳ねたり胸の中から出ようとでもしているのか、ドクンドクンと内側から強く胸を打ってくる。


 ローランの方は私を抱える腕の強さを緩めないまま、もう片方の手を机の中の壁に押し付けて安全に徹している。

 言わば壁ドン状態に、私は顔まで熱くなっていった。


 しばらくして、揺れがおさまった事が確認できたのかローランはそっと腕を外して、ローランだけが立ち上がってきょろきょろと周りを見渡した。


 そして、私に手を差し出す。


「また揺れたか。ごめん、アイリス。驚いたね」


「あ、いえ。全然……それより、またって?」


「あぁ、最近よく揺れているんだ。小さくだけど。もし大きいものだとしたら、と思って焦ってしまって。ごめんね、急に引っ張って。痛くなかった?」


「全然大丈夫です」


 私はローランの手を取り、机から出た。

 乱れたスカートをパンパンって手で払い、身なりを軽く整える。


 頬の赤さを少しひんやりとする両手で包み込んで落ち着けている内に、ある事に気が付いた。


 緊急地震速報もないのに、ローランはこの揺れが始まる前に地震が来る事がわかっていた事に。


「それより、よくわかりましたね。揺れる前でしたよね、殿下が私を引っ張ったの」


「あぁ、それは……」


 ローランが言い淀む。

 しばらく何か考えた後に、吹っ切れたような表情でまた顔を上げた。


「いいか、どのみち話すならこれから話さないといけないから。今から言う事は他言無用で、国家機密が含まれているからね」


 国家機密、という言葉の重さに私は少したじろぐも、静かに頷く。

 ローランが深刻な顔でこんなにまで考え込んで、ようやく打ち明けるのだ。


 ローランは私の顔を見て、いつもの穏やかな口調で説明を始めた。


「王族は代々地属性の魔法を使う、のは知っているよね」


「はい」


「ソレイユの地に何かが起こると、実はわかるようになっているんだ。地属性の魔法使いだからではなく、王族だけそうなっている。だから、今みたいな地震や広範囲で作物に元気がなかったりすると、分かるんだ。国の危機がいち早く分かるようになっている」


 知らなかった。

 私は相槌を打ちながら、ローランの説明を聞き続ける。

 

「ただ、この地震。父は感じないそうで。本来、何かあれば現在統治している者に強く出るはずなんだ。だから、特に影響が無いから感じないのかもしれないし、特段気にする事じゃない。実際父にもそう言われているんだけど、そういう気がしなくてさ」


 ローランが困ったように笑う。

 ローランは国に一大事が起こるかもしれない、と一人で抱えて調べ続けていたのか。

 

 どれほどのプレッシャーだっただろうか。

 そんなローランを思うと胸が苦しくなる。


「だから、もし過去にこういった事があればと色々調べていたんだけど、今のところ見つからなくて。こんな段階だったから、皆には言いづらくて。でも、かえって色々と心配をかけてしまってごめんね」


「いえ、そんな……」


 ローランが考え込んでいた事、というのが想定していた以上に大きな事態でどう答えたら良いのか分からない。


 セージなら知恵を出してくれるかもしれない。

 ヴィオレなら、明るく何か来ても倒してやるよくらい言ってのけるかもしれない。

 クロトンなら、ローランのこの張り詰めた気持ちを和らげるような空気を作れるかもしれない。


 私には何が出来るのだろうか……。


 顔が自然とどんどん俯いていく。

 一緒に調べ物をする事位は出来るかもしれない。過去の王族の事、寓話や伝説まで追っていけば何か……。ん? 過去? 過去の事でもはや存在が伝説の人が居るではないか。


 私は顔を上げた。

 

「ティアーユ様! ティアーユ様に聞いてみたらどうでしょう、1000年も生きていらっしゃってフルール様と通じていらっしゃったティアーユ様なら何かご存知かも」


「いや、それは……まぁ見てもらった方が早いか、それにアイリスが居たら何か話せる事もあるかもしれない」


 ローランはそう言うと、幾分か晴れやかになった顔で私に笑いかける。


「ティアーユ様のご都合がよろしい時にアイリス、君も来てくれるかい。セージやヴィオレとクロトンも、一緒にお願いしようか」


「ぜひ! 皆もきっと、殿下の話を聞いたら行くって言いますよ」


 私がそう言うと、ローランは静かに笑った。


 程なくして、ティアーユ様面会の日程が早くも決まった。

 いよいよ、この世界の伝説から話を聞く事ができるのだ。


読んで頂きましてありがとうございました。

連休中でお時間のある方、完結している作品がお読みになりたい方は別作品の『ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています』をお読みいただけると嬉しいです。


良ければリアクションやブクマ、評価、感想をいただけるととっても嬉しいです!励みになります!

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