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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第九章 楽しい日々が帰ってきたと思ったのに……

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111.ヒロインなんですが、食糧危機を解決しました


 日も暮れて今から家へ帰るのは大変だろうし、お礼がしたいと父と母をまた王城へ招待するも、自分たちの畑の様子も気になるし、昨日の歓待で十分だからと断って家へ帰ることにしたらしい。


 私は馬車の前で父と母と軽く抱擁をして、送り出す。

 少し皆から離れて、母と二人だけで小さく会話を交わした。


「気を付けて帰ってね」

「馬車で家の前まで連れてってくれるって言うんだから大丈夫だよ、また来週来るからその時はよろしくね」


 にこやかに笑う母。

 農作業の心地よい疲労感のせいなのか、暗がりでもわかるほど機嫌の良い顔で笑っているのがわかる。


「今回は本当に楽しかった。あんたのお父さんにも会えたしね」

「あ、あの……いつもはもっとまともで、仕事も執事に怒られながらだけどちゃんとやってるし……」

「何を言ってるんだい、十分まともな親じゃないか」


 アレが? という言葉を飲み込んで、母の言葉を待った。


「子供を大事に想う立派な方じゃないか、お母さんとっても安心したわ。今度はたけるのご両親にも会ってみたいねぇ」

「デュランダル公爵家はダイエットでお世話になったけど、とっても良い方だよ。ちょっと体育会系ですごい色々噂があるけど、本当はとっても良い人達なの」

「あら、あの子にぴったりの家じゃないか。良かった良かった。じゃあ、お母さん行くからね。気を付けて帰るんだよ」


 母はもう一度私を少し強く抱きしめて、そして、馬車へ乗り込んだ。


 ローランに向かって小さく頭を下げて、ローランも丁寧にお辞儀をする。

 小さくなっていく馬車を私たちはしばらく見つめる。

 

 翌週、畑に実際作物を植え付け、1か月ほどで多くの作物が綺麗に収穫されることとなる。


 ローランとセージからは、本当にここまでうまくいくとは思わなかったと嬉しそうに讃えられた。

 私は何もしていないと言ったのだけど、私の提案からうまく行ったのだからと言われて少し照れ臭く感じた。


 皆で頑張った成果なだけだけど、農夫の方々をはじめ沢山の方に感謝される事態となって少々戸惑っている。


 平民の方々にも噂が広がり、私が魔法で畑を蘇らせただとか、一瞬で作物を育てあげたとか尾鰭がつき過ぎて街に出かけて声をかけられる度に訂正する事態になってしまった。


 ミルティーユなんて、その噂を面白がって今度の演劇で『大地に恵みを与えた聖女』なんて演目をやりたがろうとしたので激しく止めたくらいだ。

 もうほとんど脚本も考えたのに、と涙目で見つめられたが、王様にも実力を心配される程度の私が名前だけ一人歩きするのは断固避けたかった。


 そんな事がありつつも、しばらく平穏な日常が過ぎていく。


 食糧危機も脱したし、そのおかげで学園の食材確保もほとんど問題なく、新学期を過ごせる事が出来た。


 むしろ新たな食材に食堂が沸いたくらいだ。

 比較的早く育った小松菜やラディッシュを主に使い、米を主食とした献立を考案する事になったのだが、これが大好評。


 なかでも“デュランダル公爵家オリヴィア様監修”というのが女性陣の心に響いたようで、米を使った健康的な和食を新しくメニューとして採用した女生徒から圧倒的な人気を誇った。

 結局、食糧危機の一時しのぎのメニューではなく、継続となる事が決定したのだ。


 オリヴィア様の美容サロンは大変な人気だとデイジーから聞いた事があったが、まさかここまでとは。

 

 エリオントが半壊させた校舎も、ほとんど建て直しが完了してきて、いつもの学園が戻りつつあるなか、少しずつ冷たさが和らいできた。もうすぐ春だ。


 楽しみにしていたフルグレの最大人気イベント、花祭りももうすぐやってくる。

 プレイヤーだった私はもちろん、皆も国一番の一大イベントが間近になり、浮き足立っていた。そんな校内の雰囲気の中、一つ気になる事がある。


 ローランだ。

 新学期当初はどうなるかと思う程トラブル続きだったから分かるんだけど、平穏な日々が続いても尚難しい顔をして考え込んでいる姿を何度も見た。


 セージやヴィオレに聞いても、何も知らないというし。でも、二人もクロトンもローランの様子が少しおかしいというのは分かっているみたいだ。

 私やヴィオレはそれとなく、セージは直球で聞いてみたそうだが、返答らしい返答はもらえなかった。


 しかし!

 この秘密兵器があれば、口を開かざるを得ないだろうと目論んだ私はあるものを持って生徒会室の前に立っている。

 

 私はコンコン、と生徒会の集まりが終わった後、残って仕事をすると言ったローランの個人執務室の扉をノックした。


 どうぞ、と扉の向こうから声が聞こえる。

 私はゴクリと唾を飲み込み、失礼しますとドアノブに手をかけた。


 ローランが少し驚いたような顔で、机から私の方を見た。


 さぁ、ローラン。

 胸の中のモヤモヤをこれで吐いてもらおうか。


読んで頂きましてありがとうございました。

私は農作業の真似事をしたら、全身筋肉痛で歩けなくなりました。

若い彼らなら大丈夫な事を祈っております。


良ければリアクションやブクマ、評価、感想をいただけるととっても嬉しいです!励みになります!

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