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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第九章 楽しい日々が帰ってきたと思ったのに……

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109.ヒロインなんですが、畑仕事には少し通じております


 ロベリアンが不思議そうに開墾作業に魔法を使わないのか、と言っているので、ローランと私の方が首を傾げてしまう。

 魔塔主であるロベリアンが畑の事など知る由もないか、とローランが丁寧に説明をしていく。


「基本的に開墾作業で魔法を使う、というのはあまり聞きませんね。今回は僕が地属性の魔法で地面だったところから、耕しやすいようにはしましたが。開墾作業を終えた後でしたら、水属性や風属性の魔法を組み合わせて全体に水が行き渡るようにもします」


 土を隆起させたり、動かしたりはできるけど、この広大な土地に対して均等にすべて1メートル程度に土を柔らかくしてなんてできるはずがない。


「地属性の魔法で開墾はできないですよ。 土を柔らかくしないといけないし、均一にある程度の深さがないといけないし。畑って結構デリケートなんですからね」

「お前なんでそんな畑の事知ってんだよ」

「えぇっと、それは……あの夫妻から聞いたりして」


 ロベリアンに突っ込まれ、私はそっと話を逸らす。


「まぁ、そういう訳で開墾作業は人力なんですよ」

「ふん、均一に土を柔らかくすればいいんだろ? おーい、お前ら離れろ! 魔法使うから!」

「ちょ、ちょっと。ロベリアン様! だから、魔法じゃ無理ですって」

「俺をそこらへんの魔導師と一緒にすんな。ま、俺くらいの天才じゃないと無理だろうけどな。」


 ロベリアンがそう大声を出しながら、開墾作業中の人を退けさせた。

 最初は皆きょとんとしながらも、こちら側へやって来てロベリアンの後ろに立つ。

 避難が終わると、ロベリアンはしゃがみ込み右手を地面に当てた。


 目を閉じて集中しているようだ、その内風もないのに髪がゆらゆらと動き出す。

 空気がキンと張り詰めるのを感じた。

 何やらすごい事が起きそうな雰囲気に、私は一歩後ろへと退く。


 ロベリアンが目を見開くと、畑の一体がものすごい轟音と速さで一列に土埃が走っていく。

 すごい音に私は耳を塞いだ。

 耳を塞いですぐに、音は止む。土埃が畑の一面に立っていて、どのようになっているのかはまだ見えない。

 そのうち少しずつ土埃が落ち着いてきて、よくやく土肌が見えてきた。


「こりゃすごい……」


 父と何人かの農夫が畑に降り立ち、土を触った。

 手前の土を触ると、少し離れた場所まで足早に移動し、またしゃがんで土を触る。


「すごい、これならもう耕さなくても大丈夫だ」


 父をはじめ、農夫の方々も信じられないようで、何度も場所を変えては土を触って確かめている。

 まさか、こんな事ができるだなんて。

 正直、ロベリアンが来たところで何も助けにはならないような気がしていたのだけど、一番の功労者となってしまった。


「……ロベリアン様すごいですね」


 呆気にとられながらも、私がそう絞り出した。

 ローランは希望に満ちた目でロベリアンを見る。


「もしこれが出来るようになれば、ソレイユの農業も一段と楽になりますね。一体どうやったらこんな風になるのですか?」


 ローランがロベリアンに一歩近づき、期待の眼差しで彼を見た。

 ロベリアンは私たちの顔を交互に見て、自分が余程すごい事をしたのだとようやく自覚したようで、急に胸を張りながら自慢げに話し始めた。


「地と風の魔法をうまく使えばこんなもん簡単だ、ちょっと疲れるけどな」


 そのロベリアンの一言に、一緒に見ていたクロトンやセージ、ヴィオレががっくりと肩を落としながら言う。


「いやだから、2属性も使える魔導師がそもそもいないんですってば」

「使えたとしても、ここまで繊細に魔法を行き渡らせられるのはロベリアン様くらいでしょう」

「これで教える才があれば、もっと魔法が発展しそうなのにな……」

「なんだよ、お前ら。喜んだり、がっかりしたり忙しないな。ほら、さっさと終わらせろよ、これでもういいんだろ? これでもう王城に行けるか?」

「ロベリアン様……デザートが食べたいだけでこんな大がかりな事したんですか。すごいですね」


 うきうきと話し出すロベリアンを見て、彼の真意を知り、呆れ果ててしまう。

 手を土だらけにして戻ってきた父が、ロベリアンの様子を見て大きく笑った。


「まだですよ、これから肥料を入れて畑に水をあげないといけないんです」

「げー! まだ食べられないのか!」

「皆でやったらすぐですよ、ほら頑張りましょう」

「本当に人使いが荒いな、今度の王族は」


 ロベリアンが舌打ちをしながら、大人しくローランから鍬を受け取る。

 皆で肥料を土に入れて、また耕す。

 耕し終わったら、セージとクロトンが協力して風と水の魔法を組み合わせて畑全体に水を降らせる。

 そうして、すべての作業が終わったのはもう日も暮れそうな黄昏時だった。


読んで頂きましてありがとうございました。

お盆ですね。

お時間のある方、完結している作品がお読みになりたい方は別作品の『ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています』をお読みいただけると嬉しいです。


リアクションやブクマ、評価をしてくださった方もありがとうございます!

嬉しいです!励みになります!

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