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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第九章 楽しい日々が帰ってきたと思ったのに……

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108.ヒロインなんですが、今日は土いじりで一日を終えそうです


 騒がしい夜だった事も忘れてしまうような、キンと冷たくて静かな朝がやってきた。

 私は早めに起床し、身支度を整える。

 朝ごはんを食べ終えて少しした頃に、王城から馬車の迎えがあり、現地まで送り届けてくれるとの事だ。手間をかけさせて申し訳ないな、と思いながら御者の方に謝罪とお礼を一言言って馬車に乗り込もうとしたところに、またお父様がやってくる。


 昨日に引き続き、くれぐれもあの男たちに気を付けるように、と口を酸っぱくして言うお父様に、いい加減怒りますよと軽く窘めるとシュンとしてとぼとぼと公爵家に戻っていった。


 馬車に揺られながらしばらくすると、現地に到着する。

 皆、開墾作業をしている最中だった。

 ようやく畑の場所が本決まりとなったようだ。


 当初の高原地帯からはかなり離れてしまったが、ソレイユの首都ともそれほど遠くなく、開けた良い場所だ。


 私はほっと胸をなで下ろしながら、馬車から降りて畑の場所まで駆けていく。

 私に気がついたローランが、にこりと私に微笑む。


「おはよう、アイリス」

「おはようございます、遅くなってしまってすみません。馬車までご用意いただいて」

「全然遅くないよ、昨日は大変だったね」


 ローランが苦笑しながら言ったので、私も苦笑いしながらご迷惑をおかけして申し訳ないと謝った。

 今の状況は、と畑をチラリと見る。

 農夫達に混じって父と母とヴィオレが黙々と開墾作業を行なっていたのを見て、ローランが説明を始める。


「早速開墾作業中なんだ。ヴィオレが張り切っていてね、まるで経験者のようだって皆から褒められているよ。僕は足手まといになりそうだったから早々に離脱となったんだけどね、ヴィオレはすごいな。僕の騎士にしておくのは勿体ないのかもしれない」

「はは……」


 そりゃ昔、私も含め何度も手伝いでやってましたからね。

 そうとも言えず、乾いた笑いで誤魔化した。


 私の姿を見つけた母と父が、私に向かって大きく手を振った後また鍬を振り下ろす。

 王城にいる時よりも畑にいる時の方がイキイキとしている事や、実家でよく見たような光景を再度見られた事に自然と笑みが溢れる。


 しかし、しばらくしてここに居そうなのに居ない人物がいるのに気がついた。


「あれ、そういえばセージは?」

「あぁ、助っ人を呼びにね」

「助っ人?」

「そう。じゃあ、せっかくだから僕らもできる事をやっていこうか」

「は、はい」


 助っ人って誰なんだろう。

 そう思いながらも、ローランに連れられて苗の準備を始める。

 顔に土をつけながら2人で農作業をしてしばらくすると、カラカラと馬車の車輪が近づいてくる音がした。

 丁度近くで馬車が止まる。


 助っ人を連れてきたみたいだ。

 セージがまず馬車から出てきた。

 私は後ろに続く助っ人が誰なのか気になり、しばらくじっと見つめる。

 すると、程なくしてムスッとむくれっ面をしたロベリアンと、少しげっそりとした顔のクロトンが出てきた。


「え、ロベリアン様とクロトン?」

「ロベリアン様、ご協力くださってありがとうございます」


 ローランがにっこりと微笑んで馬車の前に立つと、ロベリアンはキャンキャンと吠える子犬のように噛みつく勢いで怒った。


「何がご協力だ、ほとんど無理矢理連れてきたくせに! せっかくの俺様の貴重な休みを」

「終わりましたら王家のシェフ特製のデザートプレートが待っていますよ」


 セージがそう言うと、ちょっと嬉しそうな顔をして黙り込むロベリアン。どうやらまた甘いものに釣られたようだ。

 クロトンはふらふらとこちらにやってきて、私の頭の上にコツンと頭を乗せて大きなため息をついた。


「もう馬車の空気最悪で道中で疲れちゃったよ〜。セージはいつも通り口数少ないし、ロベリアン様は機嫌悪いし。来るだけで疲れちゃった」

「あはは、すごい目に浮かぶなその光景。お疲れ様」

「仲間はずれはダメかと思って。クロトンも来てくれてありがとう、はいこれ」


 ローランがにっこりとした良い笑顔で、クロトンの目の前に鍬を突き出す。


「早速労働!?」

「うん、頑張って。ほらヴィオレを見てごらんよ、朝からあんなに頑張っているんだ」

「帝国の剣を輩出してる家柄のご子息と比べないで! もう、それなりにしかできないからね!」


 クロトンはそう言ってローランから鍬を受け取り、ヴィオレの元へと小走りで向かっていった。そして、父と母に教わりながら畑に鍬を振り下ろした。


 腕まくりをしたシャツ、キラキラと光る汗。長い髪をかき上げる様子。これはファンクラブの子が見たら卒倒しちゃうんじゃないだろうか。現に母は鍬を振り下ろすのも忘れて、あまりの美しさに口元に手を当てて固まっている。


 クロトンは相変わらずキラキラしていて魅力的だなぁ、と見ているとロベリアンが私の横で首を傾げた。


「お前ら何やってんだ? こんなもん、魔法使えば一発だろ」


 ロベリアンは心底不思議だ、という表情をしている。

 地属性で畑を耕すなんて聞いた事ないけど、今度は私とローランが顔を見合わせて首を傾げた。

 開墾作業を魔法で?

 そんな事、聞いた事もないけど……。


読んで頂きましてありがとうございました。

お盆ですね。

お時間のある方、完結している作品がお読みになりたい方は別作品の『ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています』をお読みいただけると嬉しいです。


リアクションやブクマ、評価をしてくださった方もありがとうございます!

嬉しいです!励みになります!

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