表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第九章 楽しい日々が帰ってきたと思ったのに……

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
110/121

105.ヒロインなんですが、急なお泊りイベントは困ります


「え、えぇ!? と、泊まりですか? えぇ!?」

「落ち着けよ、アイリス」


 ローランからの急な提案に、私が顔を赤くしながら声を裏返させて動揺しているのを、ヴィオレに宥められる。

 いや、だってお泊りイベントだよ!?

 超レアだよ!? 私だって何周したかもわからないほどプレイしたフルグレで、何回も何回もロードして漸く2回程度出現した超超超レアイベントだよ!?


 予想外のイベント発生に動揺している私に、ローランがきょとんとした顔で首を傾げている。


「明日も来てくれるんだろ? それなら、一緒に出発した方が楽かと思って」

「あ、でも着替えも何も……」

「うちに用意しているものもあるし、もし不都合があるなら侍女たちに持ってきてもらっても良いし。明日も来てくれるならその方が楽かと思ったんだけど、もし泊まる方が大変ならフルール公爵邸に寄るから大丈夫だよ」

「あぁ、えっと……」


 大丈夫と言えば大丈夫なんですが、王城もとい攻略キャラの家に泊まるのは精神的に大丈夫じゃないと言いますか……。心の準備が必要なので……。


 何度も何度もロードして出した超レアイベント。

 こちらが出そうと思った時は出ないくせに、こういう心の準備が出来ていない時にパッと現れるとこんなにも動揺するものなのか。

 

 私がどう対応すべきか考えあぐねていると、母の方が大変はしゃいだ様子で私の腕をがっちりと組んで私に顔を近づけた。


「あら、いいじゃない! 王城でお泊りなんてお姫様みたいで。一緒に行きましょうよ」


 この母は、能天気にただただ楽しんでいらっしゃって……。


 母の発言から嫌と言える雰囲気では無くなってしまった。

 いや、こんなイベントそうそうないから断る選択肢なんて無いけど、はいと答えるのに勇気がいったというか。果たして、今お泊りイベントなんて急に決行して良いのだろうかとか……。


 ……えぇい、ままよ!

 私は意を決して、口を開いた。

 

「あの、ではご迷惑でなければ……」


 思ったより、か細い声しか出なかった。

 しかし、ローランはにこやかに微笑んだままいつもの穏やかな口調で返す。


「全然、むしろ付き合ってくれてありがとう。では、このまま王城に向かうことにするね」

「おい、俺には聞かないのかよ」

「ヴィオレは僕が言ったら絶対来るだろ」


 不満そうなヴィオレの声に、ローランが子供のように無邪気で少しいたずらっぽい笑顔で返す。

 ヴィオレは、はいはいといった調子で少しうんざりとした様子だ。

 ローランのこの笑顔といい、お泊りイベントといい、急な供給過多が過ぎて過呼吸になっている私を意に返すこともなく、ローランは「じゃあ出発させるね」と言って扉を閉めた。


 程なくして動き出す馬車。

 私はしばらく両手で顔を抑えて座りながらも、蹲ったままの体制で悶えていた。


「お泊りイベ……!!」

「落ち着けよ、オタク」


 数キロ進んだところでようやく声にならない叫びを振り絞ると、ヴィオレから冷たい一言が返ってきた。

 母はといえば、王城のお部屋はどんな感じなのかしらね~とマイペースな調子でうきうきと馬車の窓の外を眺めている。

 娘が悶えていても気にしない、いつものスタイルだ。豪華絢爛な馬車の中なのに、ここだけ畳のあの実家の部屋のような空気がある。


 三者三様の反応ではあるが、こうして私たちは王城へと向かったのだった。


***


 王城につくと、汚れた体をまずは癒してと入浴を促された。

 私と母は、入浴の後肌や体がふわふわになるようなエステや化粧水を施され、母はこんなにしていただけて申し訳ないわぁと言いながらも顔はにこにことしていた。


 そして、簡単なデイドレスを着させてもらい、晩餐会となった。

 長い長いテーブルの先に王様が座っている。

 私たちが入室したのを確認すると、王様はすぐに席を立ち、父と母の前へとやってきた。


「本日は我が国の為に、ご尽力いただきまして誠にありがとうございます」


 初めてちゃんと見た、陛下だ。

 

 ソレイユ王国の王がにこやかに母と父に握手をしながら、小さく頭を下げている。

 父と母も王様相手だと流石に緊張するのか、たどたどしく小さく何度も頭を下げていた。


 それにしても、だ。

 陛下の横にいらっしゃる爆美女。彼女は女王陛下であり、ローランの母のローズ様。

 幼い頃に会った時とほとんど変わらずに、相変わらずお美しい。

 ローランと同じ絹糸のようにキラキラと輝く金色の髪、優し気に少し垂れた赤い瞳、ぷっくりとした魅惑的な唇の下の黒子すら色っぽい。

 眩い美しさだ。


 人とは思えないほどの美しさに父も母もぽうっとローズ様を見つめて、茫然としている。

 そんな二人に、ローズ様が優しく微笑む。


「ソレイユ王国の料理です、お二人のために存分に腕を振るいましたので、楽しんでいただけたら嬉しいですわ」


 あまりに綺麗に微笑むので、父と母は顔を赤くしながら慌ててありがとうございますと頭を下げた。

 そのまま二人はテーブルへと案内され、席に着いた。

 慣れない席に緊張している様子で、周りをきょろきょろと見ている。

 その二人の後ろに立ち、そっと簡単に食器の使い方を小声で指差しながらローズ様がさりげなく伝えている。


 それにしても、ローランはお母様似なんだろうな。顔立ちもだけど、話し方や笑い方だったり人への振舞い方もそっくりだ。

 私がそんな事を考えながら陛下たちを見ていると、私の視線に気が付いたローズ様がパッと顔を明るくしながらこちらへとやってきた。


「まぁ、アイリスちゃん。お久しぶりねぇ、アニスはお元気?」

「は、はい。ソレイユの輝く月にご挨拶……」

「そんな堅苦しい挨拶は良いのよ。ヴィオレちゃんも、二人とも今日は長いことお付き合いしていただいてありがとう。さ、早く貴方達も」


 そう言って、ローズ様に促されて私たちも席に着いた。

 お泊りイベントの始まりである。


読んで頂きましてありがとうございました。

良ければリアクションやブクマ、評価、感想をいただけるととっても嬉しいです!励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ