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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第九章 楽しい日々が帰ってきたと思ったのに……

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109/121

104.ヒロインなんですが、イベントが発生しそうな予感です


 ヴィオレ、私、母のみとなった馬車で父達の馬車を追いかける。

 新しい農地の候補地に降り立つ度に馬車を降りては父か、ローランとセージか、農家の方々どちらかが首を振った。

 そして、また馬車に乗る。もう何度目だろうか。当初の畑からだいぶ遠くに来た。


「……なかなか決まらないみたいねぇ」


 母がのんびりとした声で呟いた。


「法的な問題、農地の場所として不向きな所や、既にこれから建物が建つような場所だったりらしいし、仕方ないだろ。あの農地分を確保できるような場所はそうそう無いだろうからなぁ……」


 先ほど馬車から降りた際に走って事情を聞きに行ったヴィオレがそう言う。

 開墾作業自体も大変だし、場所決めもこんなに大変となると農家の方々が気の毒だな。

 何度も立ち止まっては進む馬車の中で、私はしみじみと口から言葉が零れた。


「農業って本当に大変だねぇ……」

「この世界だと尚更ね」

「尊敬します」


 現在でも農業を営む母に、小さくぺこりと頭を下げてしみじみとそう言うと、大きく口を開けて笑った。


「まぁ今は人が増えて随分と楽になったんだけどね、みーんな良い人だし良い子だよ。これは農業やってないと出会えなかった縁だからね。良い事も沢山あるのさ。あんた達にもまた会えたしね」

「母ちゃん……」


 私とヴィオレが目を潤ませながら、母を見ると母はまた豪快に笑った。

 こんな風にいつも明るい母だけど、だからこそ私はずっと聞き辛かった事がある。

 この馬車には私と母とヴィオレしかいない。

 よし、と覚悟を決めた私は、ゆっくりと口を開いた。


「実はさ、ずっと聞いてみたかったの」

「ん? なんだい?」

「せっかく今世でも会えたのに、私たちは今は違う人達の子どもなわけじゃない。寂しくない? 父ちゃんと母ちゃん」


 ヴィオレも少し気にかかっていたみたいで、先ほどの表情から一転、少し心配そうな顔で私と同じように母を見た。

 母は私達の顔を見た後に、小さく笑った後にあっけらかんと答えた。


「まぁ、ちょっとね」


 明るい表情で漏らされた本音に少し胸が苦しくなる。しかし、母はまたいつものひまわりみたいな明るい笑顔で言葉を続けた。


「でも、あんた達の顔と周りにいる人の様子を見たらあんた達が幸せに育ってる事がよく分かるよ。少し寂しくなっても、お嫁やお婿に行ったんだ、と思ってね。幸せならそれで良いんだ。会えただけで儲けもんだよ」

「母ちゃん……」

「馬鹿だねぇ、そんな事気にして。あんた達は今の生活や家族や周りの方々を大事にして今の人生を生きなさい。でも、何かあったらいつでもうちにくるんだよ。もう父ちゃんと母ちゃん、なかなか偉くなったんだから」


 母はえっへん、と胸を張った。

 そんな母を見て私とヴィオレは声を出して笑う。少ししんみりとした空気は一気に吹き飛んでしまった。


「そうだよ、すげぇよな。俺、王宮で母ちゃんと父ちゃん見るとは思わなかったもん」

「なんか圧倒してたしね」

「おや、そうかい? こっちもこんな堅苦しい所緊張しちゃって全然気付かなかったよ。あんた達こんなところで生活してるなんて本当にすごいねぇ」

「俺たちも王宮なんてそうそう来ないけどな」


 そこに馬車をコンコンとノックする音が聞こえた。

 ヴィオレが扉を開くと、そこにはローランが居た。


「ご歓談中のところ、申し訳ありません。本日はもう日も暮れたので、一旦解散として明日改めてという事になりました」

「やっぱり場所まだ決まらなかったか?」

「いや、場所はなんとなく目処がついたよ。ただ、日がある時にもう一度見て改めて決定って形になりそうで。これで決まれば良いんだけど……長くお付き合いさせてしまって、申し訳ございません。お疲れでしょう」

「いえいえ、そんなそんな。こんなふかふかの馬車をご用意いただいたおかげで全然疲れていませんよ」


 ローランが申し訳なさそうに言った言葉に、母はにこやかに言葉を返した。

 そんな母の様子に、ローランはほっとした表情を見せる。

 1日同行したローランの顔の方が疲れが見えているようだ。それもそうか。陛下の方が現状の食糧危機の交渉や調整に手いっぱいで、王子であり以前交流もあったローランが視察に付き合っているんだし。

 王族って大変だな、プレッシャーとか凄そう。


「殿下も朝からでしたもんね、お疲れ様でした」

「アイリス達もお疲れ様。それで、ご夫妻は城でお休みいただき、明日また朝が少し早くなってしまって申し訳ないのですが、明日もまたお付き合いいただけますでしょうか」

「えぇ、朝はいつも早いですから全然困りませんよ。明日もよろしくお願いします、今日はお世話になりますね」

「そう言っていただけてありがたいです、ではこのまま王城にご案内しますね」


 ローランがにこやかにそう微笑んで馬車の扉を閉めようとする時に、バチっと目が合った。

 そして、扉を閉めようとした手を止めて、私たちを見る。


「あ、アイリスやヴィオレも泊まる?」


 あっけらかんとした声でとんでもない事を言われてしまった。

 まさかのお泊りイベント発生か……?


読んで頂きましてありがとうございました。

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