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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori
第九章 楽しい日々が帰ってきたと思ったのに……

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102.ヒロインなんですが、ランチの危機は絶対に許せません


 ローランがついに重い口を開いた。


「実は、ランチの食材の確保が難しいみたいで……ランチだけというか、うちの国全体で食糧不足になりそうな傾向があるんだけど」

「え、そうなんですか!?」


 驚きの声を上げると、神妙な顔で頷く面々。

 そんな……学園生活の楽しみでもあるランチの危機だなんて。ロベリアンのスパルタ授業を乗り越えられているのも美味しくて楽しいランチのおかげなのに、新学期をどう乗り越えたら良いのだ。


 私が青い顔をして震えていると、セージとローランは説明を続けた。


「今年の冬が暖かい影響ではないか、と農家の方々が仰っている。それに、今年は暖冬の影響にしたって、いつにも増して酷いらしい」

「陽が差さない日もいつもより多かったからじゃないか、と。体感でそんな気もしないんだけどね」


 ローランとセージがそう言いながら、難しい顔をして腕を組んだりテーブルに頬杖をついて人差し指の爪でコツコツと何度も音を立てる。

 相当参っているようだ。


 幼い時にしか公爵邸にいなかったからあまり覚えてないし、静養地にずっと居たからここが暖冬だなんて気がつきもしなかった。


「私、ここに来たのは今年度が初めてだから、こちらはこのくらいだと思ってたら暖かいだけだったんだ。静養地は結構北の方だからいつも冬は寒くて」

「いや、特別暖かい気もしなかったんだけど……まぁ農地の方は違ったのかもしれない」


 ローランはまだ一定のリズムでテーブルを人差し指の爪でコツコツと叩きながら考え込んでいる。

 しばらくの沈黙の後、クロトンが苦笑しながら私に笑みを向けた。


「ほらね、生徒会じゃどうしようもない問題だろ? でも、先生方が対応するには限界があるからってローランに話があって、ローランが冬期休暇前から色々動いてくれてたみたい」

「あぁ、だからあの日来れなかったのね」

「最終日はすまなかったね」

「いえいえ、私達もそんな状態と知らず……」


 王子様が直で動いてくれた方が話が早いからか、ローランやセージに直接話が来る事も珍しくはない。というか慣れてきた。

 でも、こうやって色々な話がローランに集まってきてしまうのも考えものだな。

 生徒が扱えるような問題じゃない、けど王族だから対応せざるを得ない。生徒会として、というよりは王族としてどう対応すべきなのか、という子とみたいだ。


 ローランがまた深いため息をついた。


「また今年っていうのが、タイミングが悪くて。比較的近い位置のフェスタンも去年不作だったから、輸入量も限られてね。輸送も近い国じゃないと傷むから輸入先も限られているし。こちらも色々手は尽くしているんだけど」

「あぁ、そっか。ここには車も飛行機もないから……」

「ん? クルマ?」

「あぁ、いや! なんでもないです、独り言です!」


 慌てて誤魔化すと、ヴィオレが前世の知識を出すな、といった目線で睨みつけているのが見えた。私がごめん、と小さく手を挙げる。


 それにしても公爵令嬢として生きてきて、何不自由なく生きてきたから気が付かなかったけど、やはり前世の世界は豊かだったのだろう。

 天気予報もない。気温の計測もない。車や飛行機もない、となるとこういった基礎的な観測やデータや物の輸出入がこんなにも大変なものなのだと初めて実感した。

 これが前世だったら、気温だって傾向だって、輸出入だってもっと簡単に解決できただろうに。


 前世みたいに、か。

 あぁ、でも……それなら適任がいるじゃないか。

 気候変動がある年でも何十年とずっと経験をしてきたプロが。


 暗い顔をした面々の中で、私はぱっと顔を上げる。


「あの、もしかして母ちゃ……あ、いやフェスタンのあのリズを作っていた夫妻に畑の様子見てもらったり、比較的早く育つ野菜について聞いてみたら良いんじゃないかな。取り急ぎ葉野菜とかでも早くに育つ野菜があったらだいぶ違うかなって」


 私がそう言うと、今度はヴィオレが明るい顔でパッと顔を上げた。


「あぁ、たしかに! 母ちゃ……あ、いや。あの夫妻なら種や苗も多く扱ってるだろうしな」


 私たちの話で、ローランもカツカツとテーブルを叩いていた人差し指を止めた。

 そして、その人差し指がそのまま顎に添えられて、静かに考えながらぶつぶつとゆっくり小さな声で話し出す。


「あぁ、そうか。いや、フェスタンの王にそういった提案はしてなかったと思う。輸出入だけの話ばかりで。でも、それはたしかに良いかもしれない。フェスタンの王を通して聞いてみよう、あの夫妻が受けてくれると良いんだけど……」

「受けるに決まってるよ!」


 ヴィオレが大笑いしながら答えると、きょとんとするローラン達。

 私だけが、母ちゃんがイケメンからの頼みを断るわけがないもんねと静かに頷いていた。

 そんな変な空気になりつつも、ローランが陛下に進言をして迅速にフェスタンの王との話し合いが始まった。


 そして、近くフェスタンの食糧危機を救ったという伝説の夫妻となった母ちゃんと父ちゃんが農業の特別顧問として来てくれる事となったのである。


読んで頂きましてありがとうございました。

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