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異世界へ

「あなたが姫ですか!」


「いやーどうだろう?」 


「待っておりました!」


有無を言わさず握手をされる。

この人は恐らくこの国の偉い人だろう。

品の良い格好をしているのですぐ分かる。


「お名前はなんと?」


「俺は朝比奈…じゃなくて、ナギサ」


まだ脳が自分をナギサと認識しきれておらず、思わず本名が出そうになる。


「俺とは男の者のような喋り方をされますな!外向けの発言の時は改めてもらいます、ナギサ姫」


「あ、すみません」


あまりに普通に注意されるもんだから反射的に謝ってしまう。


「私はずっと姫のお世話係をしておりました、カイと申します」


「なるほど、よろしく」


「そしてあなたは…?」


カイは怪訝な表情でナオに問いかける。


「申し遅れました。私はナオと申しまして、ナギサ姫の騎士を務めております。己の身が滅びようとも姫をお守りすると誓っております」


すっかり騎士のつもりだ。


「おお!これはこれは頼もしい。これでこの国も安泰…」


「あの…お言葉ですが、俺はいったい何をすればいいんでしょうか?」


「特には」


「特には!?」


「ええ、普通に姫として振る舞って頂ければ、あとは周りの者が何でもしますので」


「姫として…」


それが分からんと。


「さあさあ今日は新しい姫様を楽しみに皆が来ておりますので、挨拶してやってください」


「挨拶!?」


自己紹介も苦手な俺が!?

朝比奈だから名前の順でだいたい最初に回ってくるという不運の元に生まれた俺が!?


「おい!姫様が何か喋るぞ!」


その一声で騒がしかった周囲に沈黙が走る。

逃げられない空間が一気に形成された。


「あ、皆さんはじめまして。ナギサといいます。趣味はエロゲ…じゃなくてPCゲームです」


「ぴーしーげーむってなんだ…」

「しっ!」


「姫は初心者なので、正直よく分かっていない…。なので、どうかお手柔らかにお願いします。これからよろしくお願いします」


「うおー!姫様ー!」

「こちらこそよろしくお願いします!」


無数の拍手に囲まれる。

俺の自己紹介でこんなにも人の心を掴むとは。

人々から向けられる純粋な期待の目。

いよいよ引き下がれなくなってきたな。

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