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オービタルエリス  作者: jukaito
第5章 ズハル・ムアームラ

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第98話 環

 シャトルが木星を飛び立って二百二十五時間。地球時間にして約十日。ようやく土星がくっきり見えてきた。


「あれが土星か」


 シャトルの展望エリアからダイチ達は土星を見上げる。


「ここからじゃ大きさはわからないが、木星よりは小さいんだろう?」


 デランがイクミに訊く。


「そうや。せやけど、金星の十倍以上はあるでー」

「そう聞くと宇宙って広いんだなって思うぜ。その上で、あの星にもヒトがいっぱい住んでいるんだろ?」

「せや。ヒトは木星ほど多くもないみたいやけどな」

「土星人……どんなヒト達なのでしょうか?」


 ミリアはダイチに訊く。


「俺に聞かれてもな……見た目じゃ区別つかないしな」

「案ずることはない」


 フルートが代わって答える。


「ヒトなど案外大して変わらんぞ」

「冥王星人のお前が言うと、説得力があるような、ないような……」

「まあ、木星人も聞いてたほど巨人でもなかったからね」


 マイナが言う。


「あんたっていうか、水星人の常識って偏ってるっていうか……ちなみに火星人はどんなのを想像してたのよ?」


 エリスが訊く。


「足が八本あるって聞いたわ」


 マイナがそう答えると、エリスは頭を抱え、ダイチは腹を抱える。


「それじゃ、火星タコじゃない」

「……金星人のウワサは聞かないほうがいいな」

「地球人もな」


 どんなに怪物に仕立てられているか、怖くて聞けなかった。

 土星は一体どんな星なのか、そこに住む土星人は一体どんなヒトなのか、ダイチは何も知らない。

 土星の()が色鮮やかに輝き、歓迎しているように感じた。

 もちろんそれは錯覚なのだけど、そう思っていたほうが楽しい気がしたからそう思うことにした。、




 展望エリアで土星を見上げてからおよそ十二時間後、土星の()の中域内に入ったというアナウンスが入った。

 ダイチ達は荷物をまとめているうちに、シャトルは()の中にある小惑星を模した宇宙港に着く。


「土星の()っちゅうのは外からみるとそれは見事な()に見えるんやけど、実際は小惑星のような氷が集まっているんや。まあ、中には塵や岩もあるみたいやけどな。その中に港がある」


 とイクミが嬉々として話している。


「なんでわざわざこんなところに?」

「土星の中域内にあって、都合がええからやろうな。水もたっぷりあることやし。いざとなったら隠れ蓑になる」


 ダイチが訊くとイクミが楽しそうに答える。


「さ、行こうか。中から見た()っちゅうものを見に行こうか」


 イクミにそう言われると、ダイチも興味が湧いた。

 荷物を持って、シャトルを出ると、そこは展望室のように外の宇宙の景色が広がっていた。


「お~」


 ダイチは感嘆の声を上げる。

 無数の氷に覆われた宇宙(そら)の景色は漆黒の闇とはまた違い、光が乱反射してさながら光の国に来たかのような錯覚をする。


「満天の星空ともまた違うな。氷ってこんなに光るモノなのか?」

「まあライトアップされている部分もあるからな」

「でもここから次の目的地はどう移動するのよ?」


 エリスが疑問をイクミへ投げる。

 同じ疑問をダイチやデランも持っていた。

 シャトルが停まった港は小惑星を改造したとはいえ、一キロほどの小規模なものだった。

 このくらいの規模だと木星へのシャトルを受け入れて、木星へ戻るだけのシャトルを受け入れるだけで手一杯で、とても天王星へ飛び立つ便があるとは思えない。


「フフン、まあついてきなはれ」


 イクミは得意顔で先頭を歩く。

 イクミもこの場所に初めて来たはずなのに、自宅の庭のごとく歩いている。

 エリスもイクミがそう言うのなら、と一任している。

 まあ金星行きのシャトルも木星行きのシャトルもイクミが手配してきたので、ここでも同じことだった。

 イクミのおかげで迷いなく歩いたおかげで、辺りの景色をみるだけの余裕を持って歩けた。


「なあ、イクミ?」


 しかし、宙に浮かぶボードを見て、ダイチはたまらずイクミに訊いた。


「土星、れっ、しゃ……って、なんだ?」

「土星列車な。土星名物やから行っとこうと思ってな」

「土星名物? イクミ、私達は観光にきてるわけじゃないのよ」


 エリスが言う。

 その声色には焦りの色が浮かんでいるように感じる。


「わかっとる、わかっとるって、エリス! でもなあ、土星列車は観光と実益を兼ねてるんや!」

「実益?」

「そ、目的地へ向かってくれる列車や」

「その土星列車は天王星まで行くのか?」

「ダイチはん、そこまで都合よくはないよ。第一、土星列車が天王星まで行ったら、天王星列車になってまうよ」

「あ、そうか。そうだな。……いや、そうか?」


 ダイチの疑問をお構いなしにイクミは歩を進める。


「さ、あのシャトルに乗り込みまっせ」


 そう言って、イクミは停まっているシャトルを指差す。ちなみにヴァーランスを運ぶコンテナは積み込みずみだそうだ。


(土星列車ってなんだろうな……?)


 イクミから聞かされたその単語に、期待と少しだけの不安を抱きつつ、シャトルに乗る。






チャミー「今、土星の()についたとこや」

ほおわ「いや、土星についたんじゃないのかよおおおッ!?」

ラッカセイ「土星の()も土星のうちということか」

ロイヤルガード「ということは、チャミーの性格からして、土星列車に乗るつもりか」

チャミー「おお! よおわかってるやないか心の友よ!!」

ほおわ「いいな! ついていきたかったなあああッ!!」

ロイヤルガード「土星は我が故郷。(まみ)えるときを楽しみにしてる」

チャミー「あ~ロイヤルガードはんに会うつもりはないなあ」

ほおわ「ないんかい!?」

チャミー「なんちゅうか、趣味やないんや」

ロイヤルガード「避けられたものだ。だが、お互いが拒否したとしても出会うべくして出会う。それが運命というもの」

チャミー「まあ、そんなわけやから。そんときはよろしくな!」

ラッカセイ「……土星列車か。一度は乗ってみたいものだ」






 シャトルを乗り換えてから三時間後、また新しい宇宙港に辿り着く。

 宇宙港というより小惑星といってもいい規模で、このあたりの宙域の中央駅的な位置づけなのかもしない、とダイチは思った。

 シャトルを降りて、再びイクミの案内で港の中を進んでいく。

 港の中もかなり広く、ちょっとした街くらいはあった。


「お食事……」


 ミリアはぼやいていた。シャトルを乗り換えてから食事をとっていないからそろそろ腹がすく頃合いだった。


「おい、イクミ?」


 あの呟きが出たミリアは、導火線に火が着いたような状態だった。


「わかっとる、わかっとるから」


 それはダイチより付き合いの長いイクミもよくわかっているはずだ。


「もうすぐや」


 エレベーターに乗り込んで数分。

 コンテナでどこやらかに運ばれるような感覚に襲われてたどり着いた先は、港というより(ちきゅう)の駅を彷彿させるものあった。


「なんだ、ここは?」

「土星列車の駅や」

「だから、その土星列車ってなんなんだよ?」

「ダイチはん、みえへんか? あれや!!」


 イクミが指差した先を見る。


「おお、SL(エスエル)だ!?」


 ダイチは感嘆の声を上げる。


SL(エスエル)?」


 エリスはイクミに訊く。


「蒸気機関車のことや。地球ではむかしむかーしに地上を走ってた列車のことや。この土星列車はそのSLを模して作られたっちゅう話や」

「なんでSLそっくりに作ったんだ?」

「さあ、そこまではわからんな。ただこの蒸気機関車のデザインは大好評みたいやな」

「あ~そうなんだ。こういうデザインって、いつの時代になってもヒトのロマンをくすぶるものなのかな?」

「……似合わねえこと言ってんな」


 デランがぼやいたことに、ダイチは目を細める。


「それにしても……ちょっと、デカくねえか?」


 ダイチはイクミに訊く。

 土星列車が蒸気機関車を模しているのはわかったけど、今目にしているモノはダイチが記憶している列車よりも大きく見えた。

 いや、ダイチ自身は実際に目にしたことはないのでイメージでしか無いけど、イメージよりも遥かに大きく見えた。

 列車というより、さっきの大きなシャトルを細長くした感じに見える。


「まあ、色々運搬するためやしな。あと遠くからみたら土星の環の上を走っているように見えるためやろうな」

「ああ、なるほど。確かに元の大きさだったら、土星の環の上を走ってるように見えないかもな」


ブオオオオオオン!!


 ダイチが納得したところで、汽笛の音が鳴り出す。


「おお、なんじゃなんじゃ!?」


 フルートは驚いて、ダイチに飛びつく。


「落ち着け。汽笛の音だ」

「きてき? 敵が来るのか!?」

「あ~いや、時報みたいなもんだ。もうすぐ列車が発進することを報せる笛の音みたいなものだ」

「なるほど。ま、まあ音が大きだけであったからそんなことであろうと思ったがな」

「はいはい、さっさと乗るわよ」


 強がるフルートを適当に受け流して、エリスはさっさと乗り込む。


「む! エリスのやつ、なんか苛立っておるな」

「ああ、いつも、お前の強がりを鼻で笑ってるところなのにな」

「なぬ、強がり!?」

「あ、わりいわりい」


 ダイチは苦笑して、フルートに謝る。


「まったく、相変わらず女性関係で苦労してるな」


 デランが言う。


「そういうあなたはどうなのよ?」


 マイナが訊く。


「俺か? 俺は……この旅のうちは考えないようにしてる」

「そういう考え方はずるいですね。木星人の女の子と仲良くやってたではありませんか? エドランさんにそのことを通信で伝えたら喜んでいましたよ」


 ミリアが楽しそうに言う。


「お前誰から聞いたそれ?」


 そういう場のときは、収容所にいたミリアは知らないはずなのでは? と、デランに疑問がよぎる。


「ああ、私が話した」


 マイナが言う。


「お前!!」

「わあ、ごめんごめん! だから剣抜くな!?」


 デランが剣を抜いて、マイナを追いかけ回す。


「おいおい、そんな鬼ごっこしてる場合じゃないだろ。汽笛が鳴ったってことはもうすぐ発車するってことだぞ」


 ダイチが二人を諌める。


「チィ、わかったよ。お前らあとで覚悟しておけよ」

「お前らって誰と誰のことでしょうね?」


 ミリアはわざわざマイナに訊く。


「し、白々しい……」

「お前ら何やってたんだ? 速く乗るぞ」


 既に列車内に乗り込んでいるダイチが呼びかける。


「はーい、待ってください」


 ミリアは猫なで声で走っていく。


「覚えてろよ」

「ふん、三流悪党のセリフだね」


 そんなやり取りをしてから、列車に乗り込む。

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