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オービタルエリス  作者: jukaito
第5章 ズハル・ムアームラ

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第97話 土星行きのシャトルにて

「はい、これで五度目の撃墜や」


 視界、というよりモニターが真っ暗になり、イクミの声が耳に入った。

 ダイチはイクミが作成した疑似コックピットのシートから降りる。

 そのコックピットのモニターで行われていたのは、ヴァーランスとシュヴァリエのデータを打ち込んで正確に再現した体感シミュレータで、ダイチはこのシミュレータ内でヴァーランスを操縦し、シュヴァリエと対戦して連敗を喫している。


「毎回ええとこまでいくんやけどな。押しきれへんな」

「………………」

「まあスペックが元から違うんやからしゃーないんやけどな。ダイチはんの戦い方みてると、こーな、あれやな」

「……なんだよ、はっきり言えよ」


 イクミのもったいぶった言い方に、ダイチは()れた。


「――ダイチはんのイメージにヴァーランスが追いついてないみたいやな」


 イクミの指摘に、ダイチは息をつまらせる。


「ヴァーランスはええ機体やで。パワーやスピードはバランスよおまとまっとる。ある程度の無茶がきく耐久もある。しかし、度を越えた無茶振りまではようできひんで」

「俺は度を越えた無茶振りをしてる、ってのか?」

「自覚ないんか?」

「………………」


 ダイチは沈黙の肯定をする。


「しかし、そうなってしまった理由(わけ)はある、とウチはみてる。ヒトにしたって、調子の悪い時に調子のええ時のことをやろうとすると上手くいかんことはあるやろ? ウチはそうふんどるんやろうけど、どや? ダイチはんの調子のええ時っていつや?」

「……あの戦争のとき」


 ダイチはボツリとぼんやり思い出すように呟いた。


「あのときの動きをイメージしてみたんだけど……」

「イメージ通りに動けんかったちゅうわけか」

「……ああ」


 木星でダイチ達は戦争に巻き込まれ、イクミが用意してあったヴァーランスに乗り込んでシュヴァリエの集団と戦った。

 あの時の動きを再現しようとした。シミュレータとはいえ、イクミの技術力で限りなく現実の戦いに近い感覚で戦えていた。シミュレータだから出来なかったというわけではない気がする。


「火事場の馬鹿力(バカヂカラ)。というわけでもなさそうやな」

「ああ」


 確かにあの時は死なないために必死こいて立ち向かった。

 あの時に発揮した力が火事場の力といえばそうなのかもしれないけど、それでも、今のダイチなら発揮できるくらいの力な気がしてならない。


「多分、あの時と変わらないくらいの力は出してた」

「せやったら、他に力の要因がどこかにあるって考えた方がええな」

「どこかにある、か……」


 ダイチには心当たりがあった。

 あの時にあって、今のシミュレータになかったものといったら真っ先に思い当たるものがあった。


「あいつをシミュレータの複座に乗せるわけにもいかねえからな」

「そうか」

「イクミ、俺の思ってることがわかるのか?」

「うーん、ウチはエスパーやあらへんからなあ。せやから、なんとなくや、なんとなく」


 そうは言われてもすんなり納得がいかなかった。

 この旅を続けていくうちに、イクミはこちらの考えていることを見透かしているような発言する時がある。

 とぼけているようで頭がいい、ということなのだけど、こういうとき、ダイチはいい気分はしなかった。とはいえ、それで助かったこともあるのは事実で、今回イクミからシミュレータをやってみないかという提案も気晴らしになるかと思ってやってみた。

 その結果、五連敗だった。


「イクミ? あの戦争のときのヴァーランスのパラメーターデータとかってとってあるか?」

「ああ、せやな。そのパラメーターデータからシミュレータで再現したからそりゃあるよ」

「ちょっと、みせてく……いや、やっぱいいか」

「なんやいけずやな」

「何言ってるんだ?」


 ダイチはイクミのとぼけた態度に緊張がほぐれる。


「ひとまず今日はこのくらいにしてほしい」

「もっとやらせてくれねえのか?」

「調整の必要がありそうやしな。他にも入れてみたい機体のデータもあるし。明日になったらまた一味違うもんになってるで」

「ああ、期待してる」


 できることなら次は勝ちたい。と、ダイチは思った。


「しかし、準備と用意がいいよな」


 ダイチはハンガーから出る。

 今ダイチ達は土星に向かうスペースシップに乗っている。

 イクミが手配したスペースシップは、ヴァーランスを格納したコンテナを搬入できるハンガーまで用意されている大きなもので、イクミはそのハンガーでヴァーランスの調整やらシミュレータの開発やら色々やっていてこもりっきりだった。


「まったく何考えてるんだか……」


 ダイチはぼやくものの、イクミが準備のおかげで助かっていることがあった。

 今度何かあってもそれで助かることがあるかもしれない。

 そんな呆れ半分と期待半分のぼやきだった。


「ダイチ!」


 ハンガーを出ると、フルートがやってきた。

 急に飛び込んできたが、ダイチはなんとか受け止めた。


「遅いもんだから迎えにきてやったぞ!!」

「ハハ、もう終わったからな」

「イクミのシミュレータとやらは、どうじゃった?」

「ああ、凄かった。まるで現実の戦いみたいだった」

「そうか、それは妾も見ておきたかったのう」

「今度見せてもらえよ。あいつ、見せたがりだからな」

「今はダメなのか?」

「また調整始めたからな。今話しかけたら怒鳴られるぞ、『今、手えはなせんとこなんや!』ってな感じでな」

「ハハハハ、似てる似てる!」


 フルートは手を叩いて笑う。

 こうしていると普通の子供にしか見えない。

 しかし、彼女は冥王星の皇位(おうい)の座に着く者。れっきとした冥王星の(おう)なのであった。

 あの戦争の時も、フルートと行動をともにして不思議なことが起きたのは一度や二度ではない。そのことについてはあの状況を切り抜けることばかり考えていて、ゆっくり考えることができなかった。だからこそ今ゆっくり考えてみるとあれは本当に不思議なことだったと思える。

 シミュレータでヴァーランスを操縦した時と戦争でヴァーランスを操縦した時、その違いについて真っ先に思い浮かんだのが、フルートがコックピットのサブシートにいたかどうかだった。

 GFS――ゲノム・フィードバック・システムというものが、ヴァーランスを始めとした人型機動兵器には搭載されている。それは搭乗者の遺伝子情報を読み取り、身体能力に最適化した機体の操縦を実現することができるシステムだった。あの戦いのとき、ヴァーランスはダイチだけではなくサブシートに着いていたフルートの遺伝子情報まで読み取った。その結果、ダイチの身体能力を遥かに超えた動きが実現できていた。いや、それどころかヴァーランスの機体としての限界を超えた動きすらしていたのかもしれない。さっきのシミュレータでそんな気がしていたが、その推測が真実味を帯びてきたような気がしてきた。


(……こいつに話してみるか?)


 ふとダイチはフルートを見てそんな事を思った。


「どうしたのじゃ、ダイチ? 難しい顔しおって?」

「難しい顔? 俺がしてたか?」

「うむ、そうじゃ。抜けない知恵の輪を前にしたような顔じゃ。ダイチに似つかわしくない。妾の旦那ならそんなもの、パパッと引きちぎってしまえ」

「お前は旦那に何を求めてるんだよ?」

「ジェントルと知性かのう……」

「パワーと筋肉じゃないのか」

「そんなわけないやろ!」


 とイクミ仕込みのツッコミを入れて、笑い合う。

 それからほどなくしてダイチとフルートは客室に向かう。

 スペースシップの客室は二部屋とっていて、男子と女子に別れている。とはいっても、男子はダイチとデランだけなので広く感じるけど、女子の方は、エリス、ミリア、イクミ、フルート、マイナ、エウナーデと五人もいる。それが手狭なのか、しょっちゅうミリア達はダイチとデランの部屋にやってくる。

 特にフルートにいたっては、ほとんど男子側の部屋にいる。


「夫婦は同衾(どうきん)するものじゃろ」


 フルートの意見だけど、絶対意味はわかってないだろうなとダイチは思う。

 その次に来訪が多いのがミリアだった。


「ダイチさん、ちょっときてください」


 ダイチが戻ってきたのを察知して、ミリアがすぐやってきた。


(やれやれ、またか……)


 ある意味、これを回避するためにイクミのシミュレータに行ってきたのだけど、どうにもミリアはそのあたりは察しがいいようだ。

 ダイチは観念して、ミリアについていく。

 行くのは、隣の部屋、つまり女子の部屋だ。


「お姉様、食べさせてください!」


 エウナーデがエリスにねだっている。

 「見ましたか? 見ましたよね?」としつこくミリアが問いかけるように視線を送ってくる。

 ダイチはげんなりする。

 土星行きのスペースシップに乗り込んでから、ずっとこんな調子だった。

 記憶を失ったエウナーデは目覚めるなり、エリスをお姉様と呼び慕い、もう幼子のように甘えている。

 エウナーデはエリスより背が高く、幾分か年上のように見える。そのせいで、エリスに甘えている光景は異様に映る。


「自分で食べなさい」


 エリスは興味がないふうに切りそろえたリンゴをつまんで食べる。

 エウナーデをそれを食べさせるようにせがんでいるようだけど、エリスはその態度にうんざりしつつも話し相手ぐらいのつもりで接している。

 ミリアにとってそれが面白くないようだ。


「あんな風にせがむのは私の役目のはずではないですか?」


 などとダイチに不満を漏らしている。


「お前の役目ってそうだったか?」

「そうなんですよ、ダイチさんから何か言ってやってください」

「言ってやってくださいって……お前が言えよ……」


 面倒だな、と言いつつ、ダイチはエリスの方へ歩み寄る。


「おい」

「何よ?」


 ダイチが声を掛けると、エリスはギィッと睨む。ご機嫌ナナメのようだ。


「ミリアにかまってやれよ」

「ミリア? なんで?」

「あいつ、お前がエウナーデにかまってばっかで寂しがってるんだ」

「寂しがってるねえ」


 エリスは入口のミリアの方を見る。

 そのミリアというとわざとらしく顔をそらす。それでは、エリスに気持ちを察してもらえない。


(メンドくさい奴だな……)


 察してほしいくせに、気取られたくない。

 もっと素直になればいいのにな、と、ダイチは思う。


「お姉様! お姉様!」


 エウナーデはエリスに抱きついてくる。


(こいつもこいつで変わるもんだな……)


 木星では、ファウナ・テウスパールとして、中央国クリュメゾンの領主となってその強権をふるい、兄殺しの濡れ衣に収容したエリス達火星人を全員処刑しようとした。

 一歩間違えれば彼女によって、エリスとミリアは処刑されていたかもしれない。

 しかし、今のエウナーデは最愛の兄の死に加え、本物のファウナが生きていて、その兄殺しの犯人だった事実を報される。

 事情を聞かされたダイチにしても何が何やらわからないのだから、当事者のエウナーデからすると情緒不安定に陥ってもおかしくない状況だったのは察せられる。

 その上で、本物のファウナが自分を殺そうとして、逆に殺し返した。

 念願だった兄殺しの復讐は果たせたものの、それがかつての姉であったのなら、復讐を果たした喜びなんて無いに等しいだろう。


 全てを忘れたい、と考えてもおかしくないと、ダイチは思った。


 その後、エリスは雪辱を果たすためにエウナーデに戦いをけしかけたけど、その際に、最後の一撃でエリスはエウナーデの頭へ強く打撃を打ち込んだ。

 それが最後の後押しになったかもしれない。と、キャプテン・ザイアスは言っていた。

 ダイチにはよくわからなかったが、少なくともそうしてファウナ・テウスパールは死んだことになった。それでもって木星で死んだはずのヒトが木星にいたのでは不自然だということで、土星に向かうダイチ達と同行することになった。

 何よりも記憶を失ったエウナーデはエリスをお姉様と呼び慕っていてついていきたいというのだから本人の意思を尊重しても問題はない。

 何故エリスをそう慕うようになったのかまではザイアスにも、わからないと言われた。

 ともかくそうして何のトラブルもなく木星を出ることができた。

 それでこの状況が面白くないと感じるのがミリアだった。何しろ妹に近い立場が奪われたのだ。

 最初の一日二日くらいだったら貸してあげましょう、とミリアははじめのうちは穏やかだった。そのくらいの分別はつけられるようだった。

 ただこれが三日四日と続いたせいで、いよいよもって穏やかではいられなくなった、というわけだ。


「あ~うるさいわね」


 エリスはエウナーデの肩を掴んで離す。


「ほら、ダイチならかまってあげるわよ」


 エリスはダイチを指差して言う。


「俺におしつけるのかよ」

「うるさいわね。あんたが面倒見れば私はミリアをかまってあげられるし、あんたは女の子にかまってもらえる。一石二鳥じゃない」

「なんで、俺が女の子にかまってもらったら得になるんだよ?」

「エウナ、あんたダイチに遊んでもらったら? あいつ、エウナにかまってほしいんだって?」

「聞けよ!」


 エリスはダイチへエウナーデを紹介する。


「ん~」


 エウナーデはダイチの顔を見る。


「イヤです!」


 そして、拒否される。


「えぇ……」

「この男は、エウナのお兄様に相応しくありません!」

「お、お兄様……?」


 ダイチは困惑した。

 エウナーデの年齢はよく知らない。しかし、外見では年上のように感じられる。

 それに、皇族らしく育ったと思われる気品さが幼い振る舞いの中に見え隠れする。そんな女性にお兄様と呼ばれると違和感が隠せない。


「たしかにそうね。ダイチはお兄様って感じじゃないわね」

「エリス、お前まで……」

「――お兄ちゃんといった方が相応しいですね」


 いきなりミリアがダイチの隣に居座って、会話に加わってくる。


「お前、いつの間に……?」

「ダイチさんが不甲斐ないので来ました」


 そう言われて、ダイチは「俺、不甲斐ないか」と少しへこむ。


「イヤです!」


 エウナーデはプイッとダイチから向く。


「何がイヤなの?」


 エリスが訊く。


「お兄様に相応しい気品と風格をそなえておりませんわ」

「……そりゃまあ、たしかにな」

「認めるのね」


 エリスは呆れたように言う。

 そう言われてもエウナーデが言っている相応しい気品と風格というのはおそらく木星を治める皇族のそれを言っているのだろうけど、ダイチにとっては木星のスケールが大きすぎて想像することすらできないほどの高見のヒトなのだろう。そんなモノを自分に求められても困るだけだ。


「認めるも何も事実だろうが」

「あ、そう……」


 エリスはつまらなさそうに言う。


「俺に何を求めるんだ?」


 ダイチはミリアに訊く。


「お兄様と呼ばれるだけの気品と風格ではないでしょうか?」

「そんなもん求められてもな……」


 ヒトにはもって生まれた相応の風格がある。残念ながらそれは分不相応の要求だとダイチは思った。


「あんた達はなんか仲がいいわね」


 ダイチとミリアがそんなやり取りをしていると、エリスは言う。


「そうか? 普通じゃないか?」

「普通、ですか……?」


 ミリアは不満そうだった。


「まあ、別にあんたが誰と仲良くしててもどうでもいいんだけどね」


 エリスもまた不満そうだった。その態度に、ダイチは違和感を覚えた。


「エリス、お前さ……」

「何よ」

「なんか苛ついてないか?」

「……はあ?」


 エリスはキィッと睨みつける。


「私が何に苛ついてる、っていうのよ?」

「そういう態度だよ」

「どういう態度よ!?」


 エリスの口調が荒くなってきた。


「あ、あぁ……!」


 エウナーデはエリスが怒鳴りだしたので、怯えて戸惑っている。

 ミリアは黙って真剣な眼差しで、二人を見つめている。


「怒鳴ってるのが何よりの証拠じゃねえか」

「それはあんたが能天気だから!」

「俺のどこが脳天気なんだよ?」


 エリスの物言いにさすがにムッとする。


「ミリアと仲良く話して浮かれてたでしょ!?」

「そんなの別に普通だろう。そんなのもわからないくらい苛ついてるんじゃないか!」

「何よ、その生意気な言い方!」

「生意気も何もこういうのが俺なんだよ!」

「あ、そう! もういいわ!」


 エリスは立ち上がって、部屋を出ていく。


「あ、お姉様!」


 エウナーデは追いかけようとして、部屋の出入り口の扉が閉まって、阻まれてしまう。

 それはエリスの無言による「ついてこないで!」の意思表示だった。


「……まったく」


 ダイチは一息つつ頭をかく。


「すみませんね、ダイチさん」

「自分が悪いって自覚はあるんだな」

「はい、これでも淑女ですから。人の気持ちには察しが良くなくてはなりません」

「お前、淑女っていうんならもっと気を遣い方をな……いや、いいや」


 ミリアに言いながらそれを期待するのは間違いなのかと、ダイチは思った。


「エリス……大丈夫か?」


 ダイチはそそくさと出ていってしまったエリスに想いを馳せる。


「大丈夫ですよ」


 ミリアは断言する。


「ああいったことも力に変えるのがエリスですから」






 一方出ていったエリスは、廊下を歩いていく。

 ダイチは「シャトルっていうよりホテルみたいだな」とコメントしたけど、エリスもそう思った。

 そのあたりは全部イクミにまかせてあるから、エリスは気にしていなかった。

 とはいえ、その手配のおかげで気が晴れるまで散歩することができる。まあ、手当たり次第に殴って壊すことが出来ないのが残念だ。そういえばダイチは「絶対にやるなよ!」と大真面目に止めてきたな、とエリスは思い出す。


「フフ、あのときのダイチのアホ面といったら」


 自然と笑っていた。


「まったく、あいつのせいで苛ついて、あいつのせいで笑うなんて……」


 自分のおかしさにまた笑えてくる。


「私が苛ついている、か……」


 いったん落ち着いて、考えてみると図星だった。

 その原因は、木星での出来事だった。

 監禁されている場所から開けた外套を羽織ったヒト。そのヒトの正体を、エリスは知っていた。

 それは、エリスが探し求めていたヒトの関係者だった。

 それによってだんだん彼へ近づいていることをヒシヒシと感じてきた。にも関わらず、自分はこのままでいいのかと想いがこみ上げてきた。

 エウナーデことファウナに、神の雷(ケラウノス)に敗北した。

 その雪辱を果たしたものの、あのときの敗北でミリアが自分をかばったときのことが脳裏をよぎる。

 ミリアを危険にさらしてしまった。下手をすれば木星で自分だけではなくミリアの命も落とすことになっていたかもしれない。自分が弱いせいで。

 そんな自分の弱さに腹立たしく、このままだとまた同じように危険をさらしてしまいそうな気がしてならない。


「あ~!!」


 イライラで頭をかきむしる。

 こんなときはひと暴れして発散するのが一番なのだけど、シャトルの中ではそうもいかない。

 どうにもこの苛立ちを溜め込むことしかできなくて、もどかしい。


「早くつかないの?」


 何日も過ごしているスペースシップの窓から見える漆黒の宇宙へ苛立ちをぶつけることしかできなかった。

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