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舞い降りた2人



一瞬、漆黒の空に巨大な光りが照らされた。


その怒りとも感じられる一筋の輝くに、森の中にいた全ての命が天を見上げた。


それは光が届かないはずの森の木々まではっきりと映し出すほどの激しい光りだった。

自然の摂理と精霊の理を一切寄せ付けないその神々しい光は、数多の木々を抜けて一直線に魔術師隊長ライサのすぐ横の大地へと貫かれた。


ドゴーーン!!


やがて、万物の心臓を撃ち抜く巨大な怒号が激しい大地の揺れとともに響きわたる。そのあまりの激しい大気の歪みと、光の速さ…そして一切の容赦がない一撃に、ライサはレイアとラメレスの頭上を大きく飛び越え、仲間と魔術師と魔人が陣取るあたりまで飛ばされた。


その突然の出来事に、ライサが操る中位の魔人フウキでさえ動くことは叶わなかった。


レイアとラメレスもその出来事に驚愕し、辺りを見渡す。だが、何も見えない。だが、20mは飛ばされたライサは、大地に体を打ち付ける前に辛うじて身を翻しちょうどフウキの真横に足で着地した。


「くっ!?これは、何事だ!!?」


ライサの大きな声が森にこだまする。だが、この雷という「光」の理だけは、どんな偉大な魔術師でも具現化できない。それができるのは、この世界でたった一人だ。(あいつが、来たのか…それとも偶然か?)ライサはキョロキョロと周りを確認する。だが、やはり森には何も見えない。だが、やがて再び巨大な光が森を照らした。


ドドドーーーン!!


激しい雷鳴とともにその神の一撃は、レイアたちとライサたち魔術師集団の中央地点を貫く。再び大地は大きく揺すられ、魔術師の中には足を滑らせ転がるものもいた。


「…あいつだ!!」


ライサはその顔を上に上げ、漆黒の夜空を見上げる。先ほどと違い、微かに木々の間から月明かりが漏れている。それは、神の一撃が貫いた道だと思われた。もはやその一撃を喰らえわせてくる敵は、あの女しかいない。


ライサは慌てふためき、天を何度も見上げ上空を探る。とんでもない非常事態だ。


「皆の者!備えろ!これは訓練じゃない!今までの成果を見せつけろ!!」


ライサは他の魔術師たちにそう命令する。そしてその言葉は、他の魔術師にも「悪魔」がこの場所に来たこと意識させるに十分だった。



クィーーーーーン!!!



空の上では、なにかが…風を切っている音が響き渡る。ただの風の音ではない。その振動すら感じる巨大な何かが、天から自分たちを睨んでいる。そしてその謎の生き物は、木々の隙間から一瞬だけ姿を見せ、青き光を反射しながら信じられない速さで上空を通り抜ける。


「ド、ドラゴン!!?」


その伝説の神獣を信じられないという表情で、魔術師と魔人たちは呆然と見上げた。


「わ、我らは風の精霊使いぞ!!怯むでない!!我らは空を飛ぶ相手には負けぬ!」


魔術師を率いるライサが味方の士気を上げるためそう声をあげると、すべての魔術師が杖を上空に構えた。やがて、幾つもの光が森の中に怪しく照らされる。赤、緑、顔…。そして、彼らが率いている魔人も精霊の力を蓄える。ライサの周りには、5人の杖の光と10数体の魔人が産み出した精霊の力の光が灯った。



「い、いったい何が起こっているの?」


ラメレスが叫ぶ。ライサが自分達から距離を置いたため、ラメレスは姉のレイアにゆっくりと近づき、共に夜空を見上げた。強打した右腕を庇いながら、苦しそうに首を上に向ける。


「…きっと、悪魔だ。」


と、レイアは複雑そうな顔でラメレスに答えた。空は漆黒だが、間違えなく何かがいる…その気配はもはやありありと姉妹にも感じられる。高い木々が激しく揺れている。それは、恐怖とともに微かな希望を齎した。とりあえず、自分達とアンドレの命は延命した。


グァッーーーー!!


と、神々しい雄叫びとも咆哮とも聞こえる音がこの森に響き渡る。

2人の姉妹は、その心まで響くような低音に体をすくめ、一様に顔を天に向けたままだ。


やがて、月が光がゆっくりと森に届き始める。雲のがゆっくりと晴れてきたのだ。そしてそのまま一瞬の時が流れる。


レイアとラメレスは、その光の道筋に見た。


天高くから、それらは舞い降りてきた。どこから現れたのか、彼女たちには想像もできない。月の逆光を浴びながら、そのまま月の光がつくった道を飛ぶように一直線に。ライサたちが陣取る魔術師集団と魔人たちが聖霊の力を溜め込んで待ち構える場所へと、落ちていく。


それは、2つの人の姿であった。


「えっ…?」


レイアが思わず息を飲む。



「来たぞ!!馬鹿め、空中では自由に動けまい!!放て!!」


その舞い降りる二人を視線に捉えたライサがそう叫ぶ。魔術師と魔人たちが溜め込んだ聖霊の力が一気に解放され、天から舞い降りてくる2人に向かって放たれた。解放した力がその2人に集中砲火するように、彼らが放った光は一箇所に集まっていく。


そして聖霊の力を具現化した光が、その降りてきた2人を照らしゆっくりとその正体を映し出した。


「悪魔と…悪魔の騎士!」


レイアは思わず叫んだ。その光に照らされた2人は、見間違う事のないロハン城で出会ったあの2人。


巨大な黒剣をまるで盾代わりに、白い法衣を靡かせ、黒く激しく燃えさかるオーラをまとう悪魔の騎士。


そしてその騎士に守られるように、その斜め後ろに控える輝く白いローブを纏った黄金色の髪の悪魔。


悪魔の騎士…アルバが、大地の魔術師たちから放たれた魔法めがけ大きく黒剣を振るうと、魔術師と魔人が放った聖霊の力は、その剣に弾かれ、残りは彼が放つ黒いオーラに簡単に飲み込まれていく。全てを飲み込んだその黒いオーラは、更にその力を強めていくように感じれ、黒い炎はより一層燃えさかるように彼を包み始めてしまった。そしてその他の力は、悪魔…サーシャが放つ白いオーラに全て弾き飛ばされ、大気中で消し去った。


「サーシャ、すげー!」


「アルバこそ!」


2人は空を舞い降りながら、呑気にそう言い合い笑っているようにも見えた。


「でも流石にこの高さから落ちたら、怪我しそうですね。」


「はは、カッコつけすぎたかな?」


「ふふ。今日は悪魔ですもの。登場は派手な方がいいです。」


「ツノでもつけてくれば良かった!」


「まぁ…。アルバにそんな趣味があったなんて…驚きです。」


サーシャがそう微笑むと、アルバは空中で彼女の手をとって、そのまま落下の勢いを利用し、ライサの魔人フウキに一直線に向かっていく。もはや魔人との戦いにはすっかり慣れたアルバにしてみれば中位の魔人など物の数ではない。

魔人フウキは、天から舞い降りた2人のターゲットが、自分である事が分かると慌てた様子で巨大な槍の突きを天目掛けて突き出した。だが、アルバとサーシャは人知の及ばぬ速さで軽々とその突きを躱すと、逆にその魔人の肩を黒剣で激しく切りつけた。


キィーーーー!!


フウキの甲高い雄叫びが辺りに響き渡る。アルバの大剣はその5mはあろうかという魔人の肩から、黒い不気味な魔人の鎧を物ともせず一気に足までを切り裂いた。そして、倒れこむフウキをバネに軽やかにその魔人を蹴り上げながら、サーシャを抱き大地に降り立つ。


タンっ!と軽やかな音と共に魔人フウキは、アルバが大地に立ったと同時にそのまま崩れ落ちてしまった。


「ば、馬鹿な!!?」自身が操る中位の魔人が一撃のもとに崩れ去った様子を見て、ライサは信じられないとばかりに、恐れの目で2人を見定めた。他の魔術師からも驚きと悲鳴に似た声が漏れる。魔人フウキは中位の風の精霊人で、普通の人間ならば近づくことさえ出来ないはずだったからだ。その魔人をやすやすと倒したこの2人の正体は間違いなく奴らだと確信した。


「…。」


ライサは言葉を発することも出来ないほど驚いていた。ついに自分たちの目の前に、噂に聞く悪魔サーシャを抱きとめた悪魔の騎士アルバが突如現れ、堂々とした態度で立っていたからだ。



「アルバ、今日も私はキャーキャーです!」


サーシャはそう悪戯っぽい笑顔を浮かべそう話しかけると、アルバは呆れながら抱きかかえていたサーシャを優しく大地に下ろした。「フフ、ありがとう。アルバ。」サーシャはいつもの様にそう微笑みながら彼に話しかけるとゆっくりと大地に立った。そして、2人してライサ率いる魔術師集団と魔人を見すえる。



「な、なんでおまえらがここにいる!!?」


ライサは苦渋に満ちた顔でそう吐き捨てた。他の魔術師も腰は引けていたが、必死に2人を睨み、次の一撃の聖霊の力を杖に込める。彼らの周りにいる巨大な魔人も臨戦態勢だ。だが、魔人たちは一様に防御の姿勢を保つ。それは、突然天から舞い降りてきた2人の力を魔人たちが明かに恐れている証でもあった。


「こんばんは!あら、ずいぶんね。あなたたちが私に会いたがっていたみたいなので、折角来てあげましたのに。」


「全くだ。せっかく、忙しい最中来たんだ…、もう少し歓迎してほしいもんだ。」


アルバとサーシャは呑気にそう声を上げた。そのあまりに馬鹿にした態度にライサは怒りが湧いたが、それ以上にこの突然の来訪者に頭が混乱してしまっていた。


「ど、どうしてだ!?な、なぜこの場所がわかったのじゃ!?」


「さて、何故でしょうね。でも、今更その理由がわかったとしても、意味はないと思いますよ。」


サーシャは、そう話すとアルバににっこりと微笑んで、腰に掛けた美しく光るレイピアを抜いた。そしてアルバの横顔を優しい顔を見つめながら呟くように話し出す。


「騎士様。本来なら、あなたにお任せしますが…あの女、気に入らないの。一発、引っ叩いてから、アンドレ君たちの治療に行ってもいいですか?」


「あはは。女神の思うままに。」


アルバがそう答えると、サーシャはまるで風にのったように一瞬で飛び上がりそのままライサの前まで、目にも止まらぬ速さで移動した。


「くっ!?」


いきなり目の前に現れたサーシャに、ライサは反射的に魔人の骨杖でサーシャを襲う。だがその杖の攻撃は、やすやすと女神のレイピアの一撃により弾き飛ばされた。

そして彼女は、レイピアを持っていない左手でおもいっきりライサの頬に平手打ちを見舞う。「ぐぁっ!」ライサの悲鳴が森に木霊して、彼女はそのまま数メートル飛ばされ、大地に転がされた。それを、サーシャが怒りの目で見下ろす。


「弱き少年を打つなら、私を打ちにこい!この大馬鹿者!!」


サーシャの厳しい声が、蹲るライサに飛ぶ。


「ラ、ライサ様!!」


周りにいた5人の魔術師が、自分たちの目の前で倒れこんだライサに一斉に声を上げ、隊長の元へと歩み寄った。するとサーシャはその声とともにすっと飛び上がり後ろに戻ると、アルバの横へと降り立った。彼女は一度、アルバに軽く頭をさげ彼の腕に飛びつく。


「すっきりしました。後はお任せしますね。私の騎士様!」


「ああ。」


サーシャの微笑みを受けたアルバは、大きく頷いて一歩前に出た。すると、地面に転がされたライサは、慌てて体制を立て直し立ち上がると、2人を睨む。気位の高いライサには、地面に転がされたこの屈辱が許せなかったのだ。


「おまえら…たった2人でこれだけの魔術師と魔人を相手にできると思っているのか!自惚れるな!」


彼女は怒りの表情でそう叫び、負けじと一歩前に出た。魔人フウキを失ったとはいえ、彼女には魔術師の真髄「石」の魔力が残っている。やがて、ライサの杖は深い緑色に怪しく光始めた。だが、それをまるで興味なさそうに見ていたサーシャは、杖の先ではなくその魔術師の女の目を見すえた。


「まぁ…。あなたこそ、私の騎士様を誰だと思っているの?」


サーシャはそう言ってライサを哀れみの表情で見返す。そして、軽くアルバの肩に手を添えると背中を向けて、そのままレイアたちが倒れこむ奥へと悠然と歩いて行った。


「ま、待て!!この悪魔!!」


ライサは慌ててそう叫ぶが、その前にスッとアルバが立ちはだかるように彼女の視線に先に飛び込んできた。


「悪魔もいろいろと忙しいんだ。俺・た・ちで我慢してくれ。」


「…俺…たち…だと?」


「なんだよ…。魔術師なのに気づかないのか?お前たちは、すでに死地に足をつっこんでるんだぜ?」


ライサと魔術師たちは、アルバの言葉を聞くと大慌てで周りを確認しだす。だが、なんの気配も感じない。すると、彼らの真後ろから小さい女の声が聞こえた。


「あ、あの…。後ろにいたりします…。」


「なっ!?」


その声がした方を振り向くとそこには、地味で今一パッとしない三つ編みを垂らした女が一人、ポツンと立っていた。しかも、その女は顔を伏せていて自信なさげにモジモジしている。如何にも楽勝な相手に見えたが、彼女たちの相手は、悪魔と悪魔の騎士だ。ライサは大声で叫ぶ。


「後ろは気にするな!この男を闇に葬って、悪魔に向かうぞ!」


するとその声を聞いた魔術師は、一斉に杖の先端に溜め込んだ石の精霊の力を一斉にアルバに向けると祈りを始める。そしてそれを合図に、10体の魔人もアルバに突進してきた。

(ここで一気に魔人を一掃しなければ…高みにはいけないな。)アルバはそう自分に言い聞かせて、魔人たちに向かって走りだす。それは彼の体から滲むでる黒いオーラの事だ。言い伝えによると、彼の祖先と思われる剣聖ジルはこのオーラだけで魔人を倒したと聞く。むしろ、下位の魔人などは恐怖を感じ近づいてもこなかったとも。

剣聖のジルは500年前を生きた英雄だったが、アルバと境遇が似ている。当時の女神と言われたファティ大司祭を聖女に掲げ、魔人と戦っていたところなど、今の自分とサーシャにそっくりだ。ただ、アルバもサーシャもその力は遠く彼らには及ばない。



(まだ、こいつらが俺に戦いを挑んでくるようでは…ダメってことか。)


魔人の軽い歩みは足音すら感じないほどで、浮いて進んでいるのかと錯覚させるほど重さを感じない。アルバは、その場で立ち止まるといきなり大きな黒剣を振るった。腹の奥底から湧き出るエネルギーをそのまま剣に伝わさせ、剣からその力を解放する。

大気を切り裂く音と黒剣から放たれたすざましいオーラが、激しい大気の歪みと豪音を鳴り響かせる。やがてその漆黒の炎のようなオーラは、向かってきた魔人を一瞬で切り裂いていく。そしてアルバが剣を振り下ろすと、その場にいたすべての魔人は大地に崩れ落ちた。


「あ、ああ…。な、なにが…。」


その信じられない惨劇に、さしものライサもそう呻くのが精一杯だった。この男は、剣を直接魔人に触れていない。だが、その斬撃だけで…魔人を倒したのだ。それは信じられない光景だった。魔人たちが精霊の力を使わずに悪魔の騎士へと向かっていたのも予想外だ。それは、魔人が実際にこの男と向き合いその時間がないことを悟ったからだ。


魔人が崩れ落ちた視線の先には、ゆっくりとこちらに向かってくる悪魔の騎士。


ライサは杖を構えながらも、ゆっくりと後ずさる。(と、とにかく此処から逃げなくては…殺される!)ライサはチラッと後ろも振り返る。そこには、先ほど突如現れた地味な三つ編みの女がぼーっと立っている。あいつなら…瞬殺だ。ライサはニヤっと頬を緩めると


「お前たち!悪魔の騎士を止めよ!!前に出よ!!」


と配下の魔術師に言い放った。だが、流石の魔術師も躊躇し、一様に信じられないような恐れの顔でライサを見る。魔人10体を一瞬で切り裂いた相手にどうしろと?と言わんばかりの目だ。(チッ!)ライサは臆病者の魔術師たちを睨み返す。そして、


「我の命令が聞けぬか!?」


と叫ぶ。魔術師の厳しい階級制に恐れをなした魔術師たちは、仕方なく重い足取りでアルバにゆっくりと近ずく。足を震わせながら…。

(よし!!)ライサは、魔術師たちが自分の盾となったことを確認すると満足そうに笑い、素早く後ろに走っていく。なにせ時間がない。悪魔の騎士に、魔術師たちが吹き飛ばされるのは時間の問題だ。それまでに漆黒の森に姿を消さなくては…。


ライサが走っていくと、後ろで待ち構えていた地味な女は明らかに狼狽した表情でこちらを見ている。その女は剣すら持っていないし、戦いの構えすら取れていない。(楽勝だ!)ライサはそう呟くと、杖を振り上げて向かう。するとその女は、その場に立ち竦みながら言葉を自分に向けた。


「あ、あの。こちらには、来ない方が…」


「やかましい!!死ね!!」


ライサがその弱気な女に余裕の表情で笑みを浮かべる。だが、いよいよその女を杖で吹き飛ばそうと振りかぶったとき、女の顔が一変した。


「…忠告しましたよ。魔術師さん?」


声まで不気味な声に変わる。


屈めた顔がゆっくりとあがり


上目遣いでこちらを見る。


女の目が急に怪しく光りだす。


体から藍色の光が一瞬にして、体から解放される。


ズゴゴッー!!


やがてまるで嵐に見舞われた大河を流れる濁流のような轟音が鳴り響く。それは、もはや尋常な事態ではない。杖を振り上げたライサは、その青いオーラにものの見事に弾き飛ばされ、頼みの杖まで水の力により粉々に吹き飛ばされてしまった。(!!?)その突然の出来事にライサは事態を把握できない。ただ、まるで嵐の渦巻きの水の中に落とし込まれたように、息ができない。なにも…見えない。目の前は、まるで渦の中に飲み込まれたようだった。


「うぐぐぐ…。」ライサはその濁流の中で首をおさえて必死に息をしようと試みるがそれは無駄なことだ。(く、苦しい…。)そう漏らす彼女には死が…そこまで迫っていた。


「簡単には殺すなんて…そんなつまんない事しないわよ〜」


と、不気味な声が水を伝って木霊してくる。そして、いきなり手前から女の手が現れ、ライサの胸グラを掴むと、そのままその水の中から引きづり出された。「げほっ!げほっ!!」水を飲んでしまったライサは大きく咳き込みが、彼女は水から大気に出されたかと思うとそのまま地面に投げ出された。


杖も砕かれ、魔人も葬られたライサは戦う術を全て失った。自分の身を守ることも出来なくなった魔術師の隊長は、大地に膝をつき、咳き込み、嗚咽をもらす。


「ひゃひゃひゃーーー!!死ぬ?死にたい?どうやって…死にたい!?」


不気味な声が自分のすぐ側で木霊した。(こ、今度は、なんだ?)ライサがゆっくり顔をあげるとそこには、別人と化した先ほどの地味女が不気味な笑みを上げていた。

三つ編みは解け、髪が大きく何かの力で靡いている。その目は完全に殺戮者の瞳と化し、オーラとも妖気ともつかない青い煙が立ち上っているかのようだった。だが、そんなユラに


「ユラさん、一度…落ち着こうか。」


と、呆れたような声で悪魔の騎士が口を挟む。恐る恐るライサがその声をした方を見ると、自分の配下である5人の魔術師は、大地に全て転がされていてその中央には黒剣と聖剣を掲げた悪魔の騎士がただ一人悠然と立っていた。


「あ、すいません。私ったら…またやっちゃいました?」


「いえいえ。よくやってくれました。」


ユラの言葉にアルバは、そう満足そうに答える。彼女の力を確認した彼は満足そうだ。間違いなく、その力はサカテとベルトランと同じレベルだったからだ。そしてゆっくりライサに近づき、襟元を後ろから軽々と持ち上げる。「や、やめよ!やめてくれ!」ライサは、アルバに片手で持ち上げられて恐怖でバタバタと足を震わせたが、アルバは全く意にかえさず


「さてと、魔術師さん。あんたには言いたい事と聞きたい事が山ほどあるんだ。」


と、一言告げるとそのまま彼女を持ち上げながらゆっくりとサーシャの元へと向かっていった

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