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第12話 「眠り姫と精霊と(1)」

セキュリティはしっかりと。

男を追い払ったものの、ルリア嬢が目を覚ます様子はない。

多分男は逃げるために思い切り彼女を投げたらしく結構な衝撃だったというのに。


『おーい、お姫様~。ちょっとお話伺ってもよろしいですか?』


抱いたまま彼女に問いかけるも返事はない。

現状はよく分からないが、このまま外に放っておくというのはありえない。

一応助けてしまったわけだしひとまずルリアを安全なところに連れて行こう。

それくらいの責任はあるし。


『となると衛兵さんとこの詰め所が1番無難かな?』


ルリアが起きることを少し期待して呼びかけるも返ってくるのは寝息だけ。

早く家帰りたいなぁ…。





それから15分後。

とりあえずあのままでは幼女(ルリア)を抱き締めた男とでも思われそうなので眠った彼女をおんぶした。

その状態で大通りを歩く。

結局、道行く人々の視線を感じつつ歩く。

信じてくれ!俺はロリコンじゃ(略)。

そうこうしている内にリンがこの前の道案内の時に教えてくれたところはもう近くだ。

確か角をもう一度曲がれば…。


『あれは…!』


丁度詰め所の上空あたりに《水》のマナが渦巻いていた。

見たことのある魔法だ。

校長が特訓時に見せてくれた《水》のトラップ魔法。

案の定、詰め所の中の衛兵も、表を歩いている人々も気がついている様子はない。

校長曰く、このトラップの魔法は術者が発動タイミングを指定する必要がある。

威力はかなりあるが、あまり遠くから操作することは出来ない。

つまり加害者は近くにいるというわけ。

先ほど、ルリアを連れ去った男は《水》の魔法をつかおうとしていた。

誘拐されていた子どもを届けるならば、衛兵詰め所に行くのが至極当然。

…嫌なつながりを感じる。

ここにきて、衛兵以外に頼る必要が出てきた。

真っ先にリンの姿が浮かんだ。

使われた魔法からするに危険な香りがするから巻き込みたくない。

しかし、この世界で頼れる人といえば彼女しかいない。


『携帯とかあったらなー』


伝令に使える魔法はあるらしいのだが校長曰く俺は使えない。

と、もうひとつ安全な場所を思いついた。

学校だ!

先日俺が壊した結界も次の日には復活していた。

校長はいつも特訓の後、すぐにいなくなってしまうから何処にいるかわからないけど。

とりあえず、目的地も決まった。

ここにいてはじきにトラップをかけた魔術師に見つかってしまう恐れもある。

善は急げ、嫌な予感も感じていたし俺はすぐにここを離れ、学校に向かった。





夜間用の入り口を通り、女子学生寮に向かう。

ちなみに俺が抱えているお姫様はまだ起きない。

別に重いわけじゃないからいーんだけど。


『夜分遅くにすいません、寮母さんはいらっしゃいますか?』


寮母室の明かりはついていた。

……返事はない。

もう一度呼びかけようとしたところで見回り中と書かれた木版が目に付いた。


「見回り中:御用のある方はご自由にお入り下さい。寮母」


――



――――



―――――


『いや、ダメでしょ!?』


くっ、おもわずつっこんでしまった。

だってここ女子寮だよ?うら若き少女たちが生活してるんじゃないの?

寮母さんそれでいいのかよ!

瞬間、何故か親指を突きたてた校長の姿が浮かんだ。

もうやだこの学校。

……リンの部屋に行こう。





「どうぞ、鍵は開いている」


リンの名札が書いてある扉はすんなりと開いた。


『こんばんは、リン』


「カナタ?どうした?このような夜更けに…その子は?」


『かくかくしかじか』


「?」


こういう表現はダメなのね。


『とりあえず説明したいから入っていい?』


「私は最初から構わないと言っているだろう。さあ、入ってくれ」


一応、ね。

勝手に入るのはなんだか腰がひける。

…ただのチキンですごめんなさい。


『失礼します。リンの部屋に来るのも久しぶりだよ』


「半月ぶりくらいか?その子はベットに寝かせればいい」


『ありがと』


ルリアをベットに移し、リンの向かいに座る。


「改めてこんな時間にどうした?」


リンの眼光が鋭く光る。





「襲われた…?しかも《闇》と《水》を使う相手に?」


『《闇》の魔法に関してはその人が発動しようとするタイミングは見れなかったけどね』


男の説明に驚きはしたものの、リンは冷静に話を聞いてくれた。

ルリアがこの国のお姫様だということは伏せておいた。

口止めされてるし、今大切なのはルリアをどうすれば良いかだ。


「魔法を使える者をさらうなど……。

この子が子どもだといえどもかなりの強者だろう。

それにしても何故私の所に来たんだ?」


『頼れる人がリン以外に思い浮かばなくてね』


「…そうか」


『迷惑だったかな?』


「いいや、頼ってもらえて嬉しい」


そういってもらえて何よりだ。


「とりあえず学校ならばそのような心配はないだろう。今まで以上に強力な結界もある」





ルリアは一晩リンの部屋に寝かせておくことに決まった。


「時間も遅い。

まだカナタに聞きたいこともあるから明日しっかりと話そう」


『聞きたいこと?』


「まだこの子について隠していることがあるだろう?」


リンは少々憮然としている。


『はーい。また明日』


にこやかに笑う俺の顔が引きつっているような気がしてならなかった。

俺は嘘をつくと顔に出るみたいなんで。





翌朝、いつもより早起きして学校に向かう。

いつも俺が起きなかったら怒るメリアだが今日は早く起きたというのに怒られた。


「居候のくせに私より早く起きるとかなんなのよっ」


本人もわけのわからないことを言った自覚はあるようで、頭上には?マークが浮かんでいた。

本当にわけがわからないよ。





流石にこの時間では女子寮は入りずらかったので寮付近のベンチでリンを待つ。

そういえばルリアはリンと面識はなかったんだっけ?

ルリアは目が覚めたらいきなり知らない女性の部屋というわけなのでかなり驚くだろうなー。

妙に聡いところがあるからすぐに納得しちゃいそうだけど。

と、女子寮からリンが飛び出してきた。

俺を見つけると一直線に走ってきた。

なんだかあわててる?


『おはよ、どしたの?』


「あの子が目を覚まさないんだ…!」


ご覧いただき、ありがとうございます。


少し更新ペースがおそくなっていますorz

頼ってもらってリンは表面こそ平静を装っていますが、歓喜してます。


一応数話にわたっての話になるかと思います。

今回はさわりということでご容赦ください。


それでは、またのお越しを。

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